残酷に、殺してあげる









「てい」
ティエリアの掛け声と共に、ゲームの中のキャラクターが動く。
「くそおおおお」
ロックオンが、コントローラーを必死で連打して、必殺技を繰り出した。
「甘い」
それを、ティエリアがよける。
四方向に、キャラクターは動ける。バトルステージである草原で、ティエリアのキャラクターが、ロックオンが操るキャラクターの必殺技を、華麗なジャンプでかわしたかと思うと、足払いをかけた。
それに、ロックオンのキャラクターがつまずく。
「味わえ」
今度は、ティエリアの番だった。
ティエリアのキャラクターが、複雑な詠唱をかわして、右手から剣を取り出すと、それでロックオンに切りつける。
ロックオンのキャラクターは、持っていた銃でそれを食い止める。
「笑止!」
ティエリアのキャラクターが、鋭い足蹴りを放った。
また、必殺技のコンボを繰り出す。
コントローラーに正確な打ち込みをして、ティエリアのキャラクターが動く。
ひらりとかわいいゴシックドレスを翻して、ティエリアのキャラクターが蹴りの連打の後、左手からも取り出した剣で、両手に剣を交差してロックオンのキャラクターに遅いかかる。
「くそっ」
ロックオンのキャラが、銃を放つ。
それを余裕でかわし、ゲームの中のキャラクターがボイスをあげた。
(セラフィック・デスツヴァイン!!)
ばさりと、キャラクターの背から6枚の翼が生えた。
白い翼で、宙を自在にかける。
逃げるロックオンは、ジャンプして、空をかけるキャラクターに蹴りを放つが、それをティエリアのキャラクターが持っていた両刀で切りつけた。
ロックオンのキャラのライフゲージが減る。
もう、真っ赤に点滅していた。
一方のティエリアもかなりライフゲージが消耗されている。
ティエリアのキャラは、かわいさとゴシックロリーターファッションが特徴的で、力は弱い。そのくせ、複雑な必殺技を正確に打ち込めば、度派手な必殺技をたくさん繰り出した。
その中には、自分のライフゲージを消耗する技も含まれている。
無論、ロックオンのキャラクターによってライフゲージは減らされている。
一方、ロックオンのキャラは、素早さと的確な射撃がメインの、銃を所持した男キャラだ。
繰り出される銃の雨は、必殺技になると防ぎきれない。
(カオスティック・レクイエム!!)
ティエリアのキャラが、かわいいボイスで叫んだ。
四方向から、ロックオンのキャラに、もっていた両刀で切りつける。刃の乱舞に、ロックオンが最後だとばかりに必殺技を繰り出した。
(ホークネス・アイ!!)
的確な射撃が何度も連射されて、ティエリアのキャラを撃ち落とした。
草原は双方が流した血で汚れている。

(私は、負けない!)
ボロボロになったゴシックロリータの服を自分の血で染め上げながら、ティエリアのキャラが立つ。
ティエリアのキャラのライフゲージも、真っ赤に点滅していた。
(かかってきな、お嬢ちゃん!)
挑戦的な台詞を、ロックオンのキャラが吐いた。
(死ね!)
ティエリアは、ボロボロになった翼で、キャラを宙に飛ばした。
それを、ロックオンのキャラが、足首を掴んで一緒に宙に浮かぶ。
(何をする、破廉恥な!)
(うひょー、絶景絶景。ピンクの花柄かぁ)

ティエリアの石榴の瞳が、きっとロックオンを睨んだ!
「破廉恥な!」
自分の操るキャラが女の子キャラであるとはいえ、こんな方法で下着を見るなんて破廉恥だ。
「破廉恥上等!」
ロックオンが、持っていたコントローラーを動かす。
(きゃあああ!!)
ロックオンのキャラが、ティエリアのキャラのスカートをサバイバルナイフで裂いたのだ。
このゲームは、相手の服を脱がせたり、着せたりもできる。血を流すシーンなどもとてもリアルで、また裸の胸や下着姿も見れたりと、15禁扱いになっていた。
登場する女の子キャラは、胸がとんでもないボインからツルペタと幅広い。キャラも、人妻、OL、ナース、女子学生、女忍、姫、ボーイッシュガール、百合少女、天使、ETC・・・・とまた幅広い。コスチュームも自由に選択できた。
ティエリアが選んだキャラは天使で、コスチュームは元々着ているゴシックロリータファッションのままいじっていない。ちなみに、胸はほとんどない。
(きゃあああ、エッチ!)
画面の中で、天使の姿をした少女が顔を真っ赤にする。
舞い散るレースとフリルの残骸。
本当に、ピンクの花柄の下着をつけていた。

(死ね!ロスト・テンペスト!!)
ティエリアが必殺技のコンボを入れた。
同じように、最後の決着をつけるべく、ロックオンが必殺技を繰り出す。
(わが生涯に、一遍の悔いなし!)
サバイバルナイフで、少女の衣服を裂く。
ロックオンの出した技は、必殺技は必殺技でも、相手の衣服を無理やり裂くという、少し変態ちっくな技だった。
無論、ライフゲージに影響はない。
(きゃああああああああ!!)
悲鳴をあげながら、それでもティエリアのキャラは必殺技を繰り出した。
画面の真上、天空から、テンペスト(嵐)のように刃と化した鋭い黒い羽がカカカッと地上に突き刺さる。
ロックオンのキャラは、黒い羽を全身に浴びて、倒れた。

YOU WIN!!

ナレーションのボイスと一緒に、そんな画面が出てきた。

「くそおお、負けたっ!」
ロックオンが、コントローラを放り出した。
「勝った!」
ティエリアが、ガッツポーズをとる。

画面は、まだ終わっていない。
倒れたロックオンのキャラの傍に、ティエリアのキャラがきた。
(この変態男!今度戦うときは、もっと残酷に殺してあげる)
下着姿を隠すように、背中に生えた6枚の翼で身を包み、少女が倒れたロックオンのキャラを足蹴りした。
そして、顔のアップ。
かわいい少女が、蒼い瞳で返り血を浴びた刃を舐め取った。
(おいしい。もっと、血が舐めたい。私の次の相手は誰?)

ラララ〜〜〜。
テロップが流れる。
そして、戦闘結果が出され、必殺技の決まり具合の確立、体術の確立、敵の技を防ぐ確立などいろんな数値が出され、最後にキャラクターに点数が入る。
負けたロックオンのキャラも同じように数値が出され、点数が入る。
ラララ〜〜〜。
軽快な音と共に、脱がしモード全キャラ86%達成!という文字が出てきた。

「・・・・・・・・」
じーっと、ティエリアがロックオンを見る。
このゲームは、ロックオンが持ってきたものだ。ロックオンが、技の練習もかねて、ゲームに慣れるために一人でプレイしたのは当たり前である。
じーっと、ティエリアがロックオンを見て、次に画面をみた。
画面には、アップで、全キャラ脱がしモード86%、コンプリートまで14%という文字が点滅していた。
ロックオンは、目を泳がしていた。
ロックオンと格闘する前に、刹那とこのゲームで勝負したが、負けた。
だが、刹那は普通に戦った。
刹那も一人でゲームに慣れるために、ロックオンからゲームをかりてプレイしたが、勝敗の後に全キャラ脱がしモード0%!という文字が点滅していた。
ティエリアは、ゲームが気に入り、アレルヤとも対戦した。
アレルヤもゲームに慣れるため、ロックオンからかりて一人でプレイした。
勝敗の後に、刹那と同じように、全キャラ脱がしモード0%!という文字が点滅していた。

画面を見る。
ナレーションが、ボイスを出した。
(全キャラ脱がしまであと14%!ノルマを達成すれば、隠し必殺技、隠しキャラ、ボーナスエッチシーン「百合たちの天国」が見れるぞ!)
「・・・・・・・・」
ティエリアが、コントローラーを放した。
今のところ、4勝2敗であった。
脱がしモード達成率の文字が出てきたのははじめてだった。
「百合たちの天国ですか。へぇ」
ロックオンの目が、遠くを見つめていた。
「百合たちの天国ですか。へー」
聞くからに、淫らな響きだった。
15禁であるだけに、ボーナスシーンもそれなりに濃厚なものだろう。

画面がかわって、勝ったティエリアのキャラクターが、着替えているシーンがでてきた。
(もう、あの服気に入ってたのに、最低!)
レースの施された少女趣味な下着姿で、少女が新しい衣服をクローゼットから取り出し、着る。
またもや、ゴシックロリーターな服であった。萌葱色の新しい服に身をつつみ、黒のヘッドフリルを鏡をみながらとりつける。リボンを結び、使用人を呼んで、服の全体を調整してから、少女はひらりとスカートを翻した。
(また、血が飲みたいな。早く、次の戦いこないかな。この服は、神様に買ってもらったもの。裂かれたらやだな。脱がされないように、お祈りをしよう)

ラララ〜〜。
テロップが流れる。
ちなみに、今ティエリアが着ている服も、ゴシックロリーター趣味の入った萌葱色の服だった。
黒のヘッドフリルは、ロックオンがつけてくれた。
ヘッドフリルは別にいらないと思ったのだが、ゴシックロリーターファッションにはかかせないアイテムらしい。
「変態」
ティエリアが、自分の服を見て、そう言った。
ゴシックロリータを選ぶ時点で、ロックオンはある意味変態であった。
ティエリアは、服についてはロックオンが選ぶままにしていたので、別に何も言わなかった。クルーの女性陣からロリコン趣味の変態と囁かれていることは、ロックオンもティエリアも知らない。
ティエリアの無性の体は女性にしては未熟すぎて、また幼すぎて、ゴシックロリータファッションはよく似合った。
その服を着て町に出ても、かわいいかわいいといわれるだけで、似合っていないという者は誰もいなかった。
むしろ、よくぞここまで似合うものだと褒められるくらいだ。
お人形さんのようにかわいいね。
それが、よく聞く言葉だった。

「ティエリア、勝ったのか」
刹那が、キッチンから顔をのぞかせる。
ここは、日本の経済特区にある東京の刹那の家だ。アレルヤは2階で寝ている。
「・・・・・・・・一応、勝った」
「ああ、そのキャラの隠し衣装は萌葱色のゴシックロリータだ。ティエリアの着ている服に似ているな」
「あなたという人は」
ティエリアのため息は、ロックオンの手によって遮られた。
「だって、絶対に似合うと思ったから。すげぇかわいい」
頭を撫でられる。
ふわふわと、リボンが揺れた。
「街角でみたとき、ティエリアにすげー似合うと思ったから、買った」
「百合たちの天国は?」
「う。せ、刹那、料理手伝うぜ」
立ち上がったロックオンを、ティエリアは見送った。
ゲームのキャラクターのように、ピンクの花柄の下着なんてつけていない。スカートの下は、半ズボンだ。

ティエリアは、さっき動かしていたゴスロリ少女天使で、ゲームを開始した。
画面の中で、可憐な笑みを浮かべて、少女が笑う。
(かかってきなさい。残酷に、殺してあげる)
「残酷に、殺してあげる」
ティエリアは、石榴の瞳を瞬かせた後、必殺技のコンボを繰り返した。

その台詞をキッチンで聞いてしまったロックオンが、密かに萌えていたのは秘密である。