「元気にしてるか?」 「はい」 「そっか」 忘れな草の花畑で、ロックオンは座っていた。 ティエリアは制服姿で隣に寄り添い、その肩に頭をもたせかける。 「辛いことがあれば皆にちゃんというんだぞ」 「ええ」 時間が止まってしまえばいいのに。 いや、いっそこの空間から出られなくなってしまえばいいのに。 「忘れな草の髪飾り、大切にしてくれてありがとな」 「あなたにもらったものですから」 涙は零さない。 もう何度も泣いた。大分落ち着いたと、ティエリアは自分でも思う。影に、刹那が支えてくれているからだろうか。どことなく、ロックオンに雰囲気が似てきている、刹那は。 だから惹かれたわけでもない。ただ純粋に、刹那という存在が自然とティエリアを支えてくれた。 「忘れな草の花言葉のように、お前のこと忘れないから。ずっと愛してるよ」 「僕もです。あなたのことを忘れることなんてできません」 「でも、いつかお前は自分のための幸せの道を探してくれ」 「あなたのいない世界に幸せという文字はない」 「ティエリア・・・・・」 ロックオンに抱きしめられる。 隻眼のエメラルドの瞳。 ロックオンは、そのまま淡い光となって消えてしまった。 「いつか、お前にまた会いにいくよ」 忘れな草が風に揺れる。言葉が風に流れてティエリアの耳に届いた。 「あなたの言葉なら、信じます」 ティエリアは、ゆっくりと目覚める。 時計を見ると、もう昼過ぎだ。大分寝てしまった。 「あなたの言葉なら、信じます」 ティエリアは、夢の中の言葉を繰り返す。 いつか、この世界でロックオンと巡り合う。そんな気がするのだ。転生というものをティエリアは信じるしか術はない。 「いつか、あなたとまた忘れな草の花畑で」 朝の準備をして、制服に着替えて鏡を見る。 「ティエリア・アーデ。あなたが愛してくれた人間」 顔を洗って、ティエリアは昼食をとるために食堂に向かうのであった。 |