星が、落ちる。 堕ちる。 魂のように、堕ちていく。 流れる星は幾つも幾つも。流星群。名前はあったが、思い出すのもめんどくさい。ちゃんと記憶を司る海馬にはその流星群の名前はあった。 たくさんのことを覚えている。 そう、たくさんのことを。 一緒に、流星を見た。その流星群だ。 「なぁ、今度流星群が見れるんだ。アイルランドの俺の家に泊まってけ」 「本当ですか?」 ティエリアは、流星群なんて宇宙で何度でも見ているので、見ること自体にあまり意味はないのだが、ロックオンと一緒に見れるというその特別なことにとても嬉しがった。 「ジャボテンダーさんも連れていっていいですか?」 「ああ、もちろんだ」 ロックオンはティエリアを抱き上げて、まるで子供を高い高いとするように持ち上げた後、何度かくるくる廻って、ベッドに二人でダイブインした。 「あなたと見れるなんて、ドキドキする」 「おかしなやつだな。流星なんて、トレミーの窓から何度だって見ただろうに?」 「あなたと見るということが特別なんだ」 そのまま許可をもらって、二人でトレミーを降りて、アイルランドのロックオンの生家に止まった。 夜になって、流星群が見える時間を待つ。 「寒くないか?」 「大丈夫」 二人で、広い庭で一つの毛布をかぶって、一つのマフラーを首に巻いて。 「もうすぐだ」 キラキラと、神々の行進のように流星群はおちていく。 いや、天使たちの羽の欠片なのかもしれない。 「ずっとロックオンといたい」 ティエリアは、流れ星を見るで願いごとを口にすると、それが叶うということを知っていた。信じてはいなかったけど、そう言葉にした。 「俺も、ティエリアとずっと一緒にいたい」 それから1年。ロックオンは、宇宙の星となって消えてしまった。 「今でも、あなたに何度でも・・・・会いたい。ロックオンを返して」 落ちていく流星群。 住む人が誰もいなくなったロックオンの生家の庭で、一人流星群を見上げる。 「返して」 何度でも繰り返す囁き。 願うことなんてないのに。 でも願う。 ささやかなる願い。 「ティエリア、帰ろう。ソラヘ」 疲れてしまったティエリアに毛布を被せる刹那。 「うん。帰ろうか」 あなたは、このソラの何処にいますか? 迎えにいきたいのに。こんなにも。 ティエリアは、刹那のダブルオーライザーに乗って、トレミーに帰還する。 「大丈夫か?」 「大丈夫だ。君がいてくれる」 ティエリアは、ゆっくりと微笑む。 心はずたずたに傷ついているけれど、せめて今は、刹那という温もりに縋っても、ロックオンは怒らないような気がした。 「また、流星見にいくか?」 「いや、いいよ。トレミーの窓から見る。あの場所から見るのは辛すぎた」 もう涙を流しすぎて、なかなか涙は流れない。 ああ、堕ちる。 魂のように。その先にあるものは。 |