ティエリアはトレミーを降りた。 ジャボテンダーさんは治療カプセルの中なので、ミニジャボテンダーを持っていった。 右手にいつものようにミニジャボテンダーを抱え、CBの中でも中枢機能ともいえる最大の秘密基地に到着する。ティエリアとロックオンは、手を繋いだままだ。 「お、ティエリアじゃないか。ジャボテンダー論文読んだぞ。面白かった。傑作だ」 CBの構成員が、ティエリアを見ては声をかけていく。 ティエリアが書いたジャボテンダー論文は、傑作のできだった。それはそれは評判がよく、流石ジャボテンダー教の開祖と崇められたというか可愛がられた。読めば、酸欠になること間違いなしな論文は広くCB構成員たちに読まれ、ジャボテンダーは更に広がり、中にはティエリアのようにジャボテンダー中毒症になる重症患者まで出る始末だった。 いつもはアホアホかわいいティエリアが書く論文はいつも難しいものなのだが、今回ばかりは本当に笑い話のような出来であった。 「この研究所も久しぶりだ。僕はここで目覚めてから数年を過ごした」 「そうか」 ロックオンは、ティエリアの過去の一部を知っている。 ティエリアが、CB代表の後継者に選ばれそうになっていたこと、代表の娘のように可愛がられていたこともロックオンは知っていた。 ロックオンが過去を語らないように、ティエリアにも語らない過去があるが。 投薬実験の過去については、流石のロックオンも言葉を失ったが。 「ここだ」 CBのマークがついた、一際大きなドア。 両際には観葉植物が置かれ、ここが地上なのだと改めて実感させられる。ドアはロックオンがかけられており、ティエリアはすぐ近くにあったシステム装置に話しかける。 「声紋照合、ティエリア・アーデ」 「声紋照合一致しました。どうぞ、お入りください」 そのドアは、一部の者しか入れないように声紋照合システムが組み入れられていた。 中に入ると、大きな黒いソファーが見えた。マザーコンピューターが奥に置かれ、いくつもの観葉植物が置かれた中に、その人物は立っていた。 「ファザー」 ティエリアは、ロックオンから離れて老人の域にさしかかっている老紳士にゆっくりと歩み寄る。 「元気そうで何よりだ、ティエリア」 「ファザーこそ、元気そうで何よりです。一ヶ月ほどまえ、風邪をおひきになられたとかで、とても心配しておりました。ファザー、ガンダムマイスター、ヴァーチェパイロット、ティエリア・アーデ、本日をもって一時帰還いたしました」 「まぁまぁ、固くならずにソファーに座りなさい」 「紅茶をお入れしますね、ファザー。いつもの場所にまだありますか」 「あるとも。何年たってもティエリアは変わらないね。私の愛しい子よ」 「ファザーにそう言ってもらえて光栄です」 ロックオンは、ぎくしゃくしてソファーに座って固くなっている。 「君が、ガンダムマイスター、デュナメスのパイロット、ロックオン・ストラトス君だね。はじめまして。CBを設立した者たちの理念を元に、代表をつとめている者です」 「ガンダムマイスター、ロックオン・ストラトスです」 さしのばされた手を握る。 代表の名前は極秘扱いである。CBそのものが秘密なのだから、そのTOPは最高機密に値する。 誰もが老紳士を「代表」と呼んでいた。 部屋を出たティエリアが、ほどなくして3つのカップに紅茶を入れて戻ってきた。 「ファザーが大好きなアッサムの高級紅茶。お陰で、私もこの紅茶が大好きになりました」 「君たちの関係は聞いている。ロックオン君、ティエリアと真剣に付き合っているかね?」 「も、勿論です!」 「そうか。ティエリア、今幸せかい?」 「はい、ファザー」 ティエリアは笑顔を零す。 NEXT |