夢のシンデレラ







「アニュー?」
愛する人の笑顔が、見えた。
綺麗な綺麗な笑顔。
最後の。

星や宝石なんかと比べ物にならないくらいに綺麗だった。あの時のアニューは。今でも、目に焼きついている。一生忘れない。忘れるものか。

ライルは、寝ている間にアニューと楽しく地上でデートしている夢を見ていた。
そして、螺旋階段をアニューと登って、0時の鐘が鳴るとアニューは硝子の靴を片方置いて去ってしまうのだ。そう、まるでそれは物語のシンデレラ。
この世界のどこを探しても、その硝子の靴に似合う女性はいない。
アニューはもう、この世界にいないのだから。

泣いていた自分の涙の後を辿る。
「泣かないって、誓ったのにな」
手元には、アニューのポレロ。
それを抱きしめる。

めめしい男だと詰られても構わない。彼女が生きた証を、せめてライルだけは残したいのだ。
手の届くところに。
アニュー・リターナという女性を愛したことを忘れたくない。

「御伽噺のシンデレラは王子様に見つかって結婚するけど、俺のシンデレラは永遠に見つからない。なぁアニュー。俺は、ちゃんと生きてるよ」

アニュー。たとえイノベイターであっても、分かり合えていた。
愛し合えていた。
その愛は真実。
アニューの命は散ってしまったけれど、彼女のことは忘れない。CBの皆が前へ前へと進んでいく中、忘れ去られていく中、忘れない。
ライルの時間は止まったまま。

また、今度アニューの墓を訪れよう。
愛してるよ、アニュー。