何度でも翼を広げる







「ロックオン、イナイ、ロックオン、イナイ」
「ハロ、おいで」
ティエリアがハロを呼んでも、人の死というものを理解できない人工AIはロックオンの姿を探す。
「ハロ、ロックオンはもういないんだよ。死んでしまったんだ」
ティエリアは、自分に言い聞かせるように、ハロを両手にもつと、こつんとハロと額をあわせる。

ティエリアの瞳が、金色に変わる。
ハロとシンクロして、AIのプログラムにロックオンの死というものを刻み込む。
でも、無駄だった。
「ロックオン、ドコ?ロックオン、ドコ?ハロサミシイ、ハロサミシイ」
ロックオンの姿を探して飛ぶオレンジ色の、ロックオンの相棒。
「ハロ、ロックオンはもうこの世界にはいないんだ」
ティエリアは、何度も告げる。

「ロックオン、ロックオン」
その姿は、まるでかつてのティエリアのようで。
夢遊病患者のように、ティエリアはロックオンの姿を求めてさ迷い歩いた。
仲間に支えられ、泣くことは今でもあるけれど、もうそのようなことはなくなった。
「ティエリア、ティエリア、ロックオンサガゾ、ロックオンサガソ。カクレンボ、カクレンボ」
AIはロックオンがトレミーのどこかに隠れていると判断したのだ。

「ロックオン。ハロも、あなたの姿を探している。このソラのどこに、あなたはいるのか」
ハロを捕まえて、省エネモードにする。
ティエリアはハロを抱きしめる。
いなくなってしまったロックオンの代わりに。

「大丈夫。刹那は生きてるから。アレルヤも。大丈夫、大丈夫だから」
まるでおまじない。
自分に暗示をかけている。

「ティエリア、見てられないわ」
ずっとその行動を見ていたフェルトが涙を零してティエリアとハロを抱きしめた。
「フェルト。君も信じているだろう?」
「ええ、信じているわ」
「アーデさん、大丈夫ですか?」
新しくトレミーのクルーとなった、ミレイナというイアンの娘も心配そうな顔でこっちを見ている。

「大丈夫だから。僕は、何度でも立ち上がる」

何度挫折しようとも。
暗闇に放り出されようとも。

仲間たちがいる限り、ティエリア・アーデは背中の見えない翼を何度も広げる。
神に反逆せしルシファー、明けの明星が悲しく輝いていた。