「ロック・・・・愛してる」 「ああ、俺も愛してるよ」 「ごめんなさい」 「ティエリア?」 ある日の寒い冬の日の出来事だった。 ティエリアは泣いて謝った。 「どうしたんだ、ティエリア?」 「ごめんなさい、ロック・・・・オン。僕のせいで、あなたをこんな辛い目に合わせて。ああ、でも愛しています。あなたとこうして時を共有し、あなたが傍にいてくれることがとてもしあわせです。硝子細工の小鳥のようにはなれませんが、ティエリア・アーデは幸せでした。あなたと出会えてとてもとても幸せでした。あなたを愛しています。どうかどうか、僕のことを忘れないで」 「ティエリア?元に戻ったのか?」 「今までありがとう」 「おい、ティエリア!」 頬を叩くと、鈍く反応があった。 「んー?ティエ、何かいった?」 「ティエ・・・リア?」 最後の最後に奇跡がおきたのだろうか。 ティエリアが元に戻ったと、脳の後遺症が治ったと思えたのはその日が最初で最後だった。 「ティエ・・・ここにいるよ?ロック、泣かないで」 「ごめんな、俺こそごめんな、ティエリア。お前をちゃんと守れなくて。こんなに愛してるのに、結婚式もちゃんとあげてやることもできなくてごめんな」 「ロック、泣かないで。ティエも哀しくなる。ひっく、ひっく」 泣き出したティエリアをだきしめて、ロックオンはずっと泣き続けた。 ティエリアが他界したのは、それから一週間後の出来事だった。 「ティエ、眠い。おねむするー」 「ああ、おやすみ」 そのまま、ティエリアが目覚めることは二度となかった。 延命治療は受けさせなかった。よくもったほうだろう。ティエリアは四年の長い苦しい闘病生活からやっと解放されたのだ。 死に顔はとても安らかだった。 覚悟していたロックオンは、ティエリアが息をしていないのを知って、ああ、その時きたのかとティエリアにキスをして、ベッドに腰掛けた。 「硝子細工の小鳥になれたらいいのにな、ティエリア」 いつまでたっても、綺麗なままのティエリア。闘病生活でやつれても、美しさは微塵も損なわれていなかった。 ティエリアという愛しい存在と出会って、17年。22の時、はじめてティエリアと出会った。 あの頃は機械のような人間だったティエリア。 ロックオンが愛して感情豊かになり、人間になったティエリア。いつもジャボテンダーを抱きしめて、時にはぶんぶんふりまわして、皆に愛されたおもしろおかしくかわいいティエリア。 何もかもが、大切な思い出。 ロックオンは、気づけば39歳になっていた。 「一人には、しないから」 そう、あの日に決めたのだ。 そは永遠なり。 そは永遠なり。 されど、永遠に幸福はなし。 17歳の容姿のまま、一向に年老いないティエリアにおいていかれるのは、自分のほうだとロックオンは思っていた。ティエリアと、時期がくれば心中するつもりだった。 それが反対になって、期間がはやまっただけのこと。 遺書を残す。 そして、死体が腐ったりしないように、ライルに二日がすぎると連絡を入れるようにタイムセットをする。 「今いくからな」 ティエリアのベッドで、ロックオンは絵本を抱きしめて、睡眠薬を大量に飲むと、そのまま意識を失った。 NEXT |