青春白書2







アレルヤとティエリアは一緒に生活をしだした。
楽しかった。
愛されていると分かった。アレルヤのことを、ティエリアは呼び捨てにしていた。それだけ仲が良かった。
兄というよりは父親。そう見えた。
やがて受験も終わり、進学する高校が決まった。更生したティエリアに、もっと上の高校を進める先生は多かったが、あえて刹那とリジェネと同じ高校に進学する。
そして、高校になって刹那が一人暮らしするといいはじめた。
ティエリアは、刹那に一緒に暮らしてもいいかと聞いた。刹那は良いと答えた。
借りたマンションに、まさかティエリアだけでなく、その遠い親戚のアレルヤまで一緒についてくるとは、流石の刹那も思っていなかっただろう。
「ティエリアの保護者だから、僕は」
ティエリアも、アレルヤと離れることは考えていなかった。
アレルヤは自分が住んでいた家を引き払っていたので、もはや刹那も止めることはしなかった。
生活費もマンションを借りるお金も全てアレルヤが出してくれるといったのだ。こんな好条件に乗らない手はないだろう。親の仕送りがなく生活ができる。バイトだけでは、生活は成り立たない。
こうして、刹那のマンションにはティエリアとアレルヤが同居することになった。

「刹那、寝ちゃった?」
アレルヤが部屋に入ってきて、寝てしまった刹那を抱きかかえてベッドにおくと、毛布と布団を被せた。
「僕も、もう寝るよ。ティエリアは?」
「うん、もう少ししたら寝る」
「そう。僕は明日休みだから、朝食は作っておくけど、多分寝てる」
「分かった。おやすみ」
「おやすみ、ティエリア。愛してるよ」
おやすみのキスを受けて、ティエリアも同じようにキスで返す。

理想の家族を手に入れた。
辛いものなど、どこにもないはずだった。
そう、どこにも。
自分が、アレルヤに恋していると気づくまでは。

アレルヤには、マリーという名のかわいらしい彼女がいた。家に何度も遊びにきていたマリー。ティエリアはマリーと決して仲良くなろうとはしなかった。
どんなに想っても、この恋は報われない。
報われることは一生ないだろう。アレルヤを家族の愛ではなく、異性として愛していると告白することもないだろう。
アレルヤが幸せであればそれでいい。ティエリアはそう思う。

ティエリアは、電気を消した。
「おやすみ、刹那」
そして、自分の寝室に向かう。ベッドの中に入っても、先ほどのアレルヤの穏かな顔がちらついて中々眠りにつけなかった。
「バカだな、僕は。恋をしても無駄なのに」
今になって、やっと分かる。
異性から、付き合って欲しいといわれたときの、相手の気持ちが。
好きでもないのに、付き合って欲しいと言われることもあっただろう。それはティエリアがアイドルなんて歯牙にもかけないほどの美少女だからだ。見栄のため、というものあったかもしれない。でも、憧れはあっただろう。本気で自分に恋していた相手もきっとあったはず。
きっと、こんな苦しい気持ちをしていたのだろう。
不良グループの仲間以外は、笑って「あなたばか?私と付き合おうなんて、何様のつもり?」ってそう冷たく何度もあしらった。その時のショックを受けた相手の顔を見ても、その時は何も思わなかった。
今になって、酷いことをしたなと思うが、もはや過去のできごとだ。
「好き・・・」
言えない相手に向かって、言葉を投げる。

やがて、ティエリアは眠りについた。



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