青春白書10







公園で待ち合わせをしたティエリアとニール。
ティエリアをしきりに気にする周囲の男たちを他所に、ニールはティエリアに近づく。
「時間きっかりだな。早くきたりはしてないだろ?」
「早くきても、他の男に声をかけられるだけだから。それで、どこに行くの?」
「そうだなぁ。まずは買い物に行こうか」
「?」
「服を買おう」
「そんなお金はない」
「俺が出すから」
「でも、それでは」
「いいから、気にすんなって」
ティエリアの服は男もので、しかも刹那のものを借りたのでサイズが合っていない。自分で洋服を選ぶことのないティエリアは、いつもアレルヤが適当に買ってきてくれる男ものの服をきていたり、刹那の服を勝手に着ていたりで。服を選びにいこうと、アレルヤと出かけても、いらないとティエリアは首を振る。女ものの服の置いてある場所に連れて行かれても、興味は全く湧かなかった。

そのまま、ティーンズの少女向けの服が売ってあるブティックに入る。
「僕は、こんなものに興味は」
「はい、いいからいいから」
ニールは適当に見繕ったものをティエリアに持たせ、そのまま試着室に押しこんだ。
少々強引ではあるが、ティエリアも仕方なしに服を着替える。
萌葱色のミニスカートに、白のニーソ、上はタートルネックの長袖のシャツに、その上から白のサマーセーター。
「こんなの・・・・似合わない」
「いや、すっごい似合ってるから。グッジョブ、俺」
ティエリアはスカートをはくのは学生服で慣れているので、嫌ではないようだ。
ユニセックスな服装にしようかとニールは思ったが、いっそのことだからティーンズの少女らしい格好をさせようと思った。普通の靴から、膝丈まであるブーツに履き替えさせる。
全部、ニールが選んだもの。

「ありがとうございました」
他にもいろんな服を買って、荷物は全部ニールが持った。
ティエリアは、髪を両サイドを三つ編みにしてツインテールにすると、ニールがあげた髪飾りをしていた。全部アレルヤがしてくれた。二人でデートだと事前にニールがアレルヤに教えておいたのだ。アレルヤはおしゃれをしなきゃと、ティエリアの長い髪を結ってくれた。そして、自分が買い与えたと、壊れたとは思っていない硝子細工のかわいい髪飾りをつける。服装は男ものなのは仕方ない。女の子の服というものをティエリアは持っていないから。アレルヤは、ニールなら似合った服を買って着せるだろうと予想していた。それは的中する。
「うん、かわいい」
「こんなもの・・・・」
「かわいいよ、ティエリア」
ニールが自信たっぷりに、ティエリアに声をかける。
ティエリアは頬を赤くして、あらぬ方角を見てしまった。
異性に、こんな風に接してもらうことが極端に少ないのだ。アレルヤはティエリアの保護者としてあくまで接しているので、アレルヤからかわいいと言われることも多いが、こうやって違う異性から堂々とかわいいと言われるのは初めてなのかもしれない。
そのまま服の荷物はかさばるので、駅のコインロッカーに入れる。
そして、ニールはティエリアと手を繋いで歩きだす。
「どこにいくの?」
「何処に行きたい?」
「別に、何処でも・・・・」
電車に乗って、駅を乗り継いで、ニールはティエリアと並んで歩きだす。
テーマパークにやってきた。
「こんなの、興味ない・・・・」
「いいから、いいから」
そのまま、二人分のお金を払って入場すると、ニールはテーマパークの奥へ奥へとティエリアの手を掴んで歩きだす。さも億劫というようなティエリアの顔。
男女のカップルの男は、必ずティエリアを見れば振り返り、彼女に怒られている。そんな周囲はどうでもいいので放置する。ティエリアの美貌は、とにかく人目をひく。それは、出あった時にすでに分かっている。

ある場所で、ニールが止まる。
ティエリアは、どうでもよさげにしていたが、目の前にきた着ぐるみに目を輝かせる。
「ジャボテンダーさんだ!」
ニールの手を離して、ティエリアは駆け出す。
そこはファイナルファンタジーのイベントをしている場所だった。
並んだいろんな商品を楽しげに見つめるティエリア。ジャボテンダーグッズがある前にくると、本当に嬉しそうにしていた。
「なんでも好きなの選ぶといい。買ってあげる」
「で、でも・・・」
「欲しいんだろう?俺とデートしてくれたお礼」
「じゃ、じゃあこれとこれとこれとこれ・・・」
ティエリアは、ジャボテンダーのキーホルダー、マグカップ、手の平サイズのぬいぐるみ、パシャマを選んだ。
「遠慮することないぞ。荷物が多ければ、タクシーで移動するし」
「!」
ニールはとても優しく微笑んでいた。
「じゃあ、これとこれとこれも!」
ティエリアは微笑んでいた。とても自然な笑みを刻んでいる。
事前に、アレルヤからティエリアはジャボテンダーがとても好きだという話を聞いておいてよかったと思った。
ティエリアが欲しがったものをそのまま全部買って、ロックオンはファイナルファンタジーのイベント場所でティエリアが喜んでくれて、心から嬉しかった。

ティエリアは上機嫌だった。荷物はまたコインロッカーに入れて、それまではタクシーで移動し、近くなれば歩いて手を繋いで移動する。
ティエリアが見たいといっていたという映画を見て、水族館にいって、それから少し早いが夕食に少し高級なレストランに入る。ティエリアは戸惑っていたが、慣れているニールにリードされて自然な状態を保っていた。

デートの一日が終わる。
たくさんの荷物は持ちきれなくて、タクシーでティエリアを家まで送り届ける。
「なぁ」
「なに?」
「今日、楽しかった?」
「・・・・・・うん」
「そりゃ良かった」
ニールは自分のことのように喜んだ。
「・・・・・・・・ニール」
はじめて、ティエリアがニールのことを名前で呼んでくれた。それまでは先生という呼び方さえもなかなかしてくれなかったのに。
「また、デートしてくれる?」
「・・・・・・・・うん」
「そうか。好きだよ」

「・・・・・・目、瞑って」
ニールは、言われた通りに目を瞑った。
ティエリアは、頬にキスをすると、そのまま走り去ってしまった。

「あーもう。ほんとかわいいな」
ニールは夕暮れに向かって、呟いていた。


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