手を伸ばせば届くから







手を伸ばすと、ティエリアの指に茶色の少し長めのくせのある髪が絡まった。
見た目よりも猫っ毛なロックオンの髪を指で撫でる。ロックオンは眠っている。静かな寝息が聞こえてくる。
「あなたが、いるから」
ティエリアは、まだ眠りの途中にあるようで、完全に覚醒していない。
手を伸ばせば、すぐにそこにいる位置。
ロックオンの片方の手はティエリアを抱き寄せるように腰にまわされたままだ。

「・・・・・・・・あなたが」

手を伸ばせば届く位置。
ティエリアは、だから手を伸ばす。
ロックオンの髪をなで、頭を抱え込む。

シーツの乱れる音がする。
毛布がベッドから落ちる。構わず、ティエリアは石榴色の目を彼に向ける。

「あなたがいるから、僕がいる」

天井を見上げ、それからティエリアは落ちてしまった毛布を、少し動いてベッドの上にひきあげる。
自分の分の毛布まで、ロックオンにかけて、包み込む。
いつものように同じベッドで眠る。その行為に意味はあるのかと問われると、ただ傍にいつでもいたいからという答えしかない。
ジャボテンダーさんが、ベッドから落ちる。
ティエリアは、乱れた髪をはらってベッドから半身を起こす。

「ティエリア・・・?」

ゆっくりと、エメラルド色の瞳が開かれる。
優しく頬を撫でて、ティエリアは微笑む。

「もう少し、寝ていてください」

相手は、その言葉に頷くよりも前に自分にかけられていた毛布でティエリアを包み込み、抱きしめる。
「もう少し眠れ。起床時間まではまだあるから」
その言葉に時計を見ると、まだ4時だった。起床時間は7時。あと3時間はある。

抱き寄せられるままに、ティエリアはベッドに横になる。
そして、すぐに眠りにおちてしまったロックオンを見つめると、彼は声を押し殺して笑った。彼は眠っていなかった。
「何?」
「かっこいいだろ、俺」
「そうですね」
否定はしない。確かにロックオンはかっこいい。男性としての魅力が高い。

ロックオンは、落ちてしまったジャボテンダーを片腕でひきあげると、それをティエリアにもたせる。
ティエリアは、それを抱きしめる。
「子供みたい。かわいい」
「あなたからみれば、僕は子供でしょう」
ティエリアは頬を膨らませた。
優しいキスが、唇にふれる。

「ロックオ・・・」
言葉は、続かない。
唇に塞がれ、そのまま二人は体温をお互いに共有しあう。

手を伸ばせばいつでも届くから。
だから、いつも彼と一緒のベッドで眠る。それが、ティエリアがロックオンと眠る行為の答えかもしれない。
ティエリアは、石榴の瞳を閉じる。
優しいロックオンの手が、ティエリアの髪をなでている。

「俺がいるのも、お前がいるから」

その言葉に、彼は聞いていたのだと、恥ずかしくなってジャボテンダーさんをロックオンに押し付ける。

二人は、またすぐに眠りにおちた。