「アレルヤ、少しいいか」 筋肉トレーニングをしていたアレルヤは、ティエリアに呼び止められた。 ティエリアは筋肉トレーニングをしない。 しても筋力は一定のままで、筋肉がつかないからだ。そういう体の作りになっている。どんなにがんばっても、アレルヤのような理想の体を構築することは不可能だ。 ティエリアは、いつものようにジャボテンダーさんを抱きしめていた。 髪はポニーテールにしてバレッタで留めてある。ロックオンがしてくれたんだろう。 指にはペアリングが光っている。 「どうしたんだい、ティエリア?」 タオルで流れた汗をふきとったアレルヤ。 ティエリアは少し俯いて、いいにくそうにしている。 それから、アレルヤの胸を触る。 「アレルヤは胸があるな」 「まぁ、鍛えてるから」 「胸囲は85はこえてるよね?」 「うん」 「率直にきく。胸を大きくするには、やはり筋肉トレーニングだろうか。僕は見ての通り胸が小さい。ロックオンは巨乳がすきらしいし。アレルヤは巨乳だ。どうすれば」 ペタペタと触ってくるティエリア。 頬を赤くして、ついにはジャボテンダーさんを抱きしめて小さくなってしまった。 「やはり、プロテインを飲んで鍛えればいいのだろうか」 ティエリアは真剣だ。 アレルヤは、そんなティエリアが可愛すぎて、頭をなでた。 「あははは。プロテイン飲んで鍛えても、巨乳にはならないよ」 「じゃあ、どうすれば・・・」 アレルヤは脱いでいた上着を着ると、ティエリアを連れて自室に戻った。 「ちょっと待っててね。シャワー浴びてくるから」 「うん」 ティエリアは汗臭いのが嫌いだ。アレルヤもトレーニングを終えた後は汗を流す。それがさっぱりしてまた気もちがいいのだ。 アレルヤがシャワーを浴びて新しい服をきて、頭をバスタオルでぬぐっていると、ティエリアはアレルヤのベッドに腰掛けて足をぶらぶらさせていた。 ジャボテンダーさんをぎゅっと抱きしめているのその姿は、壊滅的にかわいい。 (まいったなぁ。かわいいなぁ) 「あのね、そうだね。でもティエリアは今のままが一番いいと思うよ」 「皆そういうんだ。フェルトに聞いても。ミス・スメラギは聞くのが気が引ける。だからアレルヤに聞いてみた」 「ロックオンは、今のままの君が好きなんだから。そんなに悩むことはないよ」 「でも僕はまな板だ」 「女の子・・・そうだね、ティエリアは半分女の子だね。無性だし。でも、胸が大きいとか小さいとかで、ロックオンの気持ちが変わることはないよ?」 「でも」 「知ってる?ロックオン、貧乳がすきだって隠れて噂になっているよ」 「貧乳?」 「胸があんまりない子のほうが好きなんだって。巨乳は好きじゃないみたい」 その言葉に、ティエリアは顔をあげた。 「そうか。じゃあ、まな板のままでいる。巨乳なアレルヤ、ありがとう」 ティエリアは、アレルヤの頬にキスをすると、そのままロックオンの元に戻っていった。 「本当にかわいいなぁ。ロックオンの恋人じゃなかったら・・・・・・うーん、思うだけ無駄だね」 アレルヤは、去っていったティエリアの笑顔を思い出す。 あの笑顔とティエリアを独占できるロックオンは本当に羨ましい。 かわいいティエリア。 刹那もアレルヤも、何気にティエリアが気になる。 ロックオンがいなければ、恋人にしたいくらいだ。 「どうした、ティエリア。どこに行ってたんだ?」 ロックオンの部屋に戻ったティエリアは、素直にしゃべる。 「巨乳なアレルヤに胸が大きくなる方法を聞いていた」 「ぶはっ」 アレルヤは確かに胸があるが、それは胸筋といっておっぱいじゃない。 おっぱい=胸なティエリアの考え方。 女性の胸も、男性の胸も一緒らしい。 「フェルトはアレルヤに聞けばいいといっていたのでアレルヤに聞いた」 「それで、アレルヤはなんていったんだ?」 「ロックオンは、今のままの僕が好きだから大丈夫だって」 「アレルヤ、分かってるなぁ。その通り、俺は今のままのティエリアが大好きだよ」 抱きしめられる。 「あのね、あのね」 顔をあげてジャボテンダーを抱きしめながらティエリアが続ける。 「どうした?」 「刹那に聞いたら牛乳飲めばいいという答えが返ってきた。これって正しいの?」 「いや、牛乳飲んでも大きくならないから、多分」 「あのね、あのね。まな板だけど・・・・でもアレルヤはロックオンは貧乳好きだからって」 何を教えとるんだ、アレルヤは。 「巨乳になりたい気もするけど、ロックオンが今のままがすきなら、このままでいる」 「俺は今のままのティエリアが大好きだよ」 ぎゅーって抱きしめられて、何度も頭を撫でられた。 「ロックオンもまな板だもんね」 いや、普通の男性はそうです。 ティエリアは無性であるが、女性化しているせいで幼い少女のような体のラインをもっている。思春期前の少女。胸だってあるけどとっても小さい。それをティエリアは気にしているのだ。 「よっこいせっと」 ティエリアを片腕で抱き上げて、ロックオンは潤んだ石榴色の瞳を覗きこむ。 「俺は、今のままのお前が好きだから。なんにも不安になることはないよ」 「うん!」 ティエリアは、花さえも萎れてしまうような可愛らしい笑顔を浮かべると、そのままロックオンに抱き上げられて、 ジャボテンダーを抱きしめたまま、どうしようかと思っていると。 「ジャボテンダーさんを光合成させたい」 「はいよ。このまま向かってもいいか?」 「はい」 片腕で抱き上げられたまま、ティエリアはロックオンに連れられてデッキに向かう。 幼い表情は変わらない。 すれ違うクルーの男どもは、みんな羨ましそうに二人を見ている。 ティエリアは美しいが、でもかわいいのだ。美しいけれど、幼い部分が多く残っているせいでとてもかわいい。それが男性を惹きつける。美しいだけでも魅力的なのに、女性でさえたちうちできない美貌の他に愛らしさまで供えていたら、それは男性を惹きつけるだろう。女性にだって人気だ。かわいいかわいいと、着せ替え人形のようにされるときだってある。 出あった最初の時は、美しい美貌を持ったアンドロイド。今ではくるくる表情がかわる。 「ロックオン、大好き!」 ぎゅーって、首に手を回してしがみついてくる。ジャボテンダーを抱きしめたまま、ティエリアは笑う。大きな石榴色の瞳は、いつも潤んだままだ。庇護欲をかきたてられる。劣情を抱くものもいるだろう。ロックオンは、何気な将来ライバルになりそうな刹那と、気づけばティエリアと一緒にいるアレルヤから、とにかくティエリアを独り占めするのも一苦労だ。 でも、この存在を守れるならそれでいいと思う。 「俺も大好きだよ」 おでこにキスして、ティエリアをおろすと肩車をしてあげた。トレミーの天井は高いので、大丈夫。 デッキに出ると、ティエリアはロックオンに肩車されたまま海を見下ろして、空を見上げる。 「あのね、あのね」 「どうした」 「今度ポッキー買ってきて。ポッキーゲームしたい」 恋人がたまにするあれか。 ロックオンはにまにましながら、ティエリアをおろして、唇に唇を重ねるのだった。 「買ってくるな」 「約束!」 指きりをして、約束をする。 本当に、行動はどこか幼い。この天使は、無垢なまま生れてきたのだろう。 ティエリアはジャボテンダーを抱きしめると、ぶんと振り回す。 べしべしと攻撃を受けながら、ロックオンはこの愛らしい天使が恋人であってくれることに感謝とそしていつまでも傍にいると誓うのであった。 ****************************** ティエのかわいさを追求してみた・・・。長編がなかなか完結しないので息抜き。 |