「ロックオン、ロックオン・・・・何処?」 ジャボテンダーさんを抱きしめたまま、ティエリアはトレミーの廊下を歩く。 さっきまで、抱きしめていてくれていたのに。 「ロックオン?」 エメラルドの瞳の優しい恋人を探して、ティエリアは歩く。 夜中の3時。 トレミーは寝静まっている。 「ここ?」 そっと、ドアを開けて見てみる。 「いない・・・」 ジャボテンダーさんを抱きしめる腕に、力が入る。 ぎゅっと抱きしめて、廊下に蹲る。 「何処に、行ったんだろう・・・・」 さっきまで、傍にいたのに。 何処にいってしまったんだろう。 あなたは、今何処に。 ティエリアは、ジャボテンダーを引きずって歩きだす。 「ロックオン、ロックオン・・・・」 涙が出てきた。 石榴色の瞳から幾つも透明な涙が銀色の波となって頬を伝う。 こんなに寂しいのに。いつでも傍にいて欲しいのに。どうして、いなくなってしまうの。 こんなにあなたを愛しているのに。あなただけを。傍にいてくれるだけでいいから。 あなたは、今何処に。 「ロックオン・・・・迷子になったのですか?それとも、僕が迷子?」 ジャボテンダーをずるずると廊下を引きずり回して、ロックオンの部屋の前にくる。 暗号を入力して、部屋をあける。 照明のライトが部屋の中を照らす。 誰もいない部屋。ボロボロになったマットレス。 今のトレミーは昔の大破したトレミーをそのまま改築して作ったもの。ロックオンの部屋はまだある。 ネームプレートを見る。 ちゃんと、ロックオン・ストラトスと書いてある。 部屋は間違ってはいない。 「ロックオン、迷子になったのですか」 ジャボテンダーさんを抱きしめ直して、また廊下に出る。 「・・・・・・・・っく。ひっく」 涙が止まらない。 いつもなら、すぐにロックオンがかけつけてくれて、優しく抱きしめてくれるのに、ロックオンはいない。 あなたは、今何処に? ティエリアは、眼鏡を床にたたきつけた。 そのまま、ぺしゃんと床に座り込んでしまった。 あなたは、いない。 「私の傍に、あなたがいない」 あなたは、今何処に? このソラのどこかにいるのだろうか。 「忘れたのかティエリア・アーデ。あの人はもういないじゃないか」 失って、まだ2年。 傍にいたロックオン。あれはただの夢だ。正夢だったらよかったのに。 「あの人を殺したのは僕だ」 涙がとまらない。 そのまましゃくりあげる。 「好きなだけ泣くといい、ティエリア・アーデ。でも、立ち上がれ。私しか、トレミーの皆を守れる者はいないのだから。私が皆を守らなければ。私が、皆を守る」 ティエリアは、泣きながら立ち上がる。 ジャボテンダーを抱きしめ直す。床に叩き付けた眼鏡を拾う。 「ロックオン。何度でも僕は、立ち上がります」 だから、せめて夢の中で出会ってください。 「あなたは僕の傍にはいない。私は皆を守るために立ち上がった。何度挫折しても立ち上がれ、ティエリア・アーデ。きっとあの人もそれを望んでいる」 涙をパジャマの袖で乱暴に拭って、ティエリアは窓の外を見る。 エメラルド色に耀く星を見て、ティエリアは微笑んだ。 「夢の中で、会いましょう」 自分の部屋に戻る。だめだ、こんなことでは。もっと気をしっかりもたなければ。 今、ガンダムマイスターは自分しかいないのだから。皆を守れるのは自分だけなのだから。 「刹那、アレルヤ・・・・・」 懐かしい仲間の名を呟いて、そのままティエリアは眠りについた。 ロックオンは、夢の中でティエリアを抱きしめてくれた。 「ずっと傍にいるからな。見守ってるから」 「はい」 ロックオンに抱きしめられて、ティエリアは寂しそうに微笑む。 夢よ、どうかもう少し続いておくれ。 あなたは、今何処に? ************************* タチバナ様のサイトの妄想拝借。 |