「ライル、いるかしら?」 「どうしたんだ、アニュー?」 ライルの部屋にやってきたアニューは、部屋の中に通された。 ライルは笑顔でアニューを抱きしめる。 ライルとアニューは恋人同士だ。それはもうあつあつ。大人の恋人だ。 「見てちょうだいこれ。ティエリアに教わったの」 「なんだ、これ?」 「折り鶴よ」 「紙でできた鶴か」 アニューの手の中にある、ピンク色の折り鶴を、ライルはじっと見つめる。 「平和の願いをこめて、日本の人はこの鶴をおるのですって。世界で唯一核で被爆した国として、核廃絶を目指して、折り鶴を折って慰霊碑に捧げるのですって」 「へぇ」 「他にも、病気になった人の回復を祈るという意味もあるそうよ」 「紙でできた鶴か。本物じゃだめなのか?」 「本物じゃ意味がないわ。自分の手で、折り紙で折ることに意味があるの」 「折り紙か。そういえば日本の折り紙文化は深いからな」 「これ、受け取ってくれる?あなたといつまでもいられるようにと心をこめて折ったの」 「勿論受け取るよ」 折り紙を、ライルは大切に手の平にのせる。 「俺も、アニューに折って渡すかな」 「あら、折りかた知ってるの?」 「知らない」 「やっぱり」 「ティエリアにでも聞くかな」 「私が教えるわ」 「そうか?」 「ええ。けっこう楽しいのよ。いろんな折り紙の折り方が載った本をもらったの」 二人は、折り紙をテーブルの上に広げて、本を見ながら折り紙を折っていく。 「できた」 「あら。鶴じゃないのね」 「百合。アニューに」 「ありがとう」 二人は微笑みあう。 「本物の百合もいいけどな。こういうのもありだろう」 「ありがとう。大切にするわ」 アニューは受け取った百合を大切そうにしまう。 ライルは、次の日折り鶴を全員分折って渡した。 「はぁ?なにこれ」 リジェネが折り鶴をつまみあげる。 「いつまでも、一緒にいられるおまじない」 ライルが答える。 「僕は別に君と一緒にいたいわけじゃないんだけど」 「奇遇だ。俺もアニューと一緒にいられればそれでいい。でも、みんなといつまでも仲良くいれたら、もっと素敵だと思わないか?」 「あー・・・まぁね」 リジェネは、折り鶴を天井のライトに透かしながら、綺麗な笑顔を零した。 「なんかこういうのもいいね」 新しくガンダムマイスターとなったリジェネは、あまりティエリアとロックオン以外と交流を深めようとしない。最低限の交流はあるが、仲がよいというわけでも悪いというわけでもない。 「お前さんさ」 「何?」 「笑顔綺麗だな」 「は?」 「勿体無い。もっと笑えばいいのに」 「無理いわないの、ライル」 遅れてやってきたアニューが、苦笑する。 リジェネはティエリアと同じ容姿をしているが、ティエリアほど柔らかくない。笑顔というか、黒い笑いはよく見かけるが、心から楽しそうな、嬉しそうな笑顔を見る機会は少ない。 ティエリアの前では何度も楽しそうな嬉しそうな笑顔を見せるが。他のメンバーにはあまり見せない。 ライルとアニューを残して、リジェネは歩きだす。 「笑顔綺麗・・・ね」 ばったりと出あったミレイナが、その独り言を拾って、太陽のように笑った。父親のイアンに似て、よく笑う。 「レジェッタさんの笑顔、綺麗です。もったいないですう。もっと笑えばいいのに」 「あのね。君みたいなお気楽な性格してないから無理」 「私、レジェッタさんのこと好きですう。みんなレジェッタさんのこと好きですよう?」 「そう。・・・・・・・・・・・・ありがと」 ミレイナの頭をポンポンと触って、リジェネは廊下を蹴ってふわりと体を浮かす。 ミレイナは、撫でられた頭に手をやっている。 「アーデさんをものにしようと思ってもできなかったですう。レジェッタさんはフリー。乙女なミレイナ、がんばるです!」 何気に宣戦布告する。 それをしるわけもないリジェネは、それからミレイナに振り回されることが多くなったそうな。 |