夕闇の帳が降りる。世界が優しく闇色に包まれる。 水面に移る三日月は、ゆったりと静かに時を刻み、青白い光をうつしながらも波をたゆたわせる。 金色に光る海。 それは、例えるなら母の羊水のようにとても暖かい。 ザァンザァンと何度も打ち寄せる波が、砂浜を削っていく。桜色の貝殻が、ころころと波にさらわれて泳いでいく。 裸足で、浜辺の波の上に立つ。 パシャンと小さく水の音がした。 ヴェーダの中の記憶の揺り籠。 天使は、素晴らしい透明な歌を歌って、流れてきた桜色の貝殻をつまみあげる。 「・・・・・・・・・・・エンドレス」 彼は微笑んだ。 終わりのない世界。 繰り返される。再生とそして無限の時。 エメラルドの光がふわふわとただよって、人の形をすると、天使を抱きしめた。 「エンドレス?何度でも?」 聞いてくるエメラルドの隻眼の青年に、天使は微笑む。 「何度でも、あなたに愛を」 二人は手を繋いで歩きだす。 エメラルド色に光る浜辺。 二人は歩き続ける。 「忘却の彼方まで、あなたと共に」 天使の瞳が金色に変わる。青年は、天使の目を手で塞いだ。 「エンドレス。世界が終わってもまた再生を。お前と、再生を」 記憶の再生を。 二人は金色に光る海に沈んでいった。 |