たった一つの願い3







「そうだな。こんな結果残すなんてただの愚か者だな」
「それでも!!」
「それでも?」
「あなたを愛している。僕も愚かだ。万死に値する」

「世界を、さ。変えてくれ」

ロックオンは、噛み付くようにティエリアに口付ける。

「俺はもう世界を変えれない。だから、代わりに変えてくれ」

「僕はあなたと世界を変えていきたかった!」
「うん、知ってる」
ロックオンは、にっこりと笑った。ティエリアが放り投げたボレロを拾いあげて、ティエリアの肩に羽織らせる。
「自分で決断する、決めるって難しいと思わないか?」
「難しい」
「でも、お前ならもうできるはずだ」
「・・・・・・・・・分からない」
「こうやって、制服を着ることを決めて、刹那とアレルヤを探すことを決めて、仲間を守ることを決めて・・・ちゃんと決断してるじゃないか」
「僕は、ちゃんとできている?仲間を守れているのか?」
「ああ。ちゃんと守れてるよ。立派にリーダーとして歩んでる」

ティエリアは、少しきょとんとした顔になった。

「あなたに言われると複雑だ」
「何それ!励ましてやってるのに!もう、この子は!」
ぐしゃぐしゃに髪をかき混ぜられて、ティエリアは笑った。
笑顔を。
目は真っ赤にはれていたけれど。
ロックオンに向かって、綺麗な笑顔を向けた。

「そう、その表情。その笑顔、忘れるなよ?」
「?」
「泣きたいときは泣けばいいさ。でも、笑顔を浮かべることも忘れるな。楽しいことや嬉しいことがあったら、笑顔を忘れるな、ティエリア」
「はい」
「いい子だ」

抱き寄せられて、ティエリアはまた涙を零した。
「泣き虫だな?」
「あなたが言った。泣きたい時は泣けばいいと。今は泣きたい」
「そうか」

泣きつかれたティエリアは、ベッドに横になった。眼鏡は棚の上に置いた。
「あなたも、一緒に」
腕を引っ張られて、ロックオンは昔のように一緒にベッドに入る。
ティエリアが擦り寄ってくる。ティエリアを抱きしめながら、ロックオンは瞳を閉じた。


嗚呼。
どうか、この傷ついた天使がもう一度羽ばたけば。


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