ティエリアは、ロックオンからカメラを受け取って、気が済むまで花をとりまくった。 二人で、手を繋ぎあって、花畑の中を歩く。 「ほら、これ」 「え?」 「麦の穂。受け取ってくれる?俺が一番愛するお前に、プロポーズ」 「はい」 ティエリアは麦の穂を受け取った。 二人は、花の嵐の中で唇を重ねる。 空と風と花のロンド。 神の庭。2週間たらずで消えてしまう、世界でたった一つの小さな楽園。 「ずっとこうしていたい」 ロックオンの腕の中で、ティエリアは呟く。 「うん。俺もおんなじ」 「ねぇ。そうだ、はじめてこの場所にきたなら願いかなうかな?」 「さぁ。分からないけど、言ってみれば?」 「ずっとあなたと一緒にいたい。それが僕の願い」 「じゃあ俺の願い。どんなことがあってもお前の傍にいる。何度でもお前と巡り合う。それが俺の願い」 「なんだか、切ないね」 「そうだな。こんなの、願わなくても叶う。俺たち、ずっと一緒だろ?」 「ずっと、一緒です。離さないで」 ロックオンは優しくティエリアの髪をすいて、髪についた花びらをとって、額にキスをした後、深く口付ける。 「そうだ。ここを、再会の場所にしよう」 「再会の場所?」 「そう。もしも、何かあって離れ離れになったら、神の庭でまた出会う」 「何度でも、何度でも出会う。あなたと出会う」 ティエリアは、花をつんで空に放り投げる。 風と空と花のロンド。 花びらの雨に包まれながら、二人は誓う。 離れても、ここでまた出会うと。 そして、ずっと一緒にいると。 ロックオンは花で幾つも花冠をつくっては、ティエリアの頭に乗せる。 ティエリアも花冠をつくっては、ロックオンの頭に乗せる。 二人は花まみれになっていた。花びらが髪のあちこちに、服のあちこちついている。 「ほれ」 「わあ」 ロックオンは、またティエリアを抱き上げてくるくるとまわった。 そんなことを何度か繰り返した。 「花畑さん、ごめんなさい。荒らしてしまって」 はしゃぎまわった分、花は踏まれる。摘んでしまった花はもう咲かない。 「大丈夫、こんなに花があるんだから。少しくらい」 「うん」 ティエリアは、ロックオンのエメラルド色の瞳と同じ花を摘んで小さなブーケにした。ロックオンはティエリアの瞳の色と同じ紅い花を摘んで小さなブーケにする。 お互いにそれを交換しあって、笑う。 風と空と花のロンド。 神の庭で、二人の恋人は戯れあう。 「今日は、ここで泊まろうか」 「うん」 二人は、花畑の近くに泊めてあった車で夜を過ごし、そして次の日も花畑で遊んだ。 「来て良かっただろ?」 「来て良かった」 ロックオンは、ティエリアを抱き上げるとまたくるくるまわって、そして花畑に押し倒した。 「戻ったら、ペアリング買おうか」 「ペアリング?」 ティエリアの右頬に唇を押し当てる。 「そう。恋人の証」 「買う」 「そうだな、瞳の色を交換しよう。俺ならエメラルド、ティエリアならガーネットだな。その指輪を交換するんだ」 「あなたは翡翠でも似合うと思う」 「ティエリアはガーネットだよなぁ。ルビーの真紅よりも柔らかい」 「僕が好きな宝石、覚えてるんだね」 「そりゃな」 二人はクスクス笑って、また口付けした。 NEXT |