世界でたった一つの楽園6







ティエリアは、ロックオンからカメラを受け取って、気が済むまで花をとりまくった。
二人で、手を繋ぎあって、花畑の中を歩く。
「ほら、これ」
「え?」
「麦の穂。受け取ってくれる?俺が一番愛するお前に、プロポーズ」
「はい」
ティエリアは麦の穂を受け取った。
二人は、花の嵐の中で唇を重ねる。
空と風と花のロンド。
神の庭。2週間たらずで消えてしまう、世界でたった一つの小さな楽園。

「ずっとこうしていたい」
ロックオンの腕の中で、ティエリアは呟く。
「うん。俺もおんなじ」
「ねぇ。そうだ、はじめてこの場所にきたなら願いかなうかな?」
「さぁ。分からないけど、言ってみれば?」
「ずっとあなたと一緒にいたい。それが僕の願い」
「じゃあ俺の願い。どんなことがあってもお前の傍にいる。何度でもお前と巡り合う。それが俺の願い」
「なんだか、切ないね」
「そうだな。こんなの、願わなくても叶う。俺たち、ずっと一緒だろ?」
「ずっと、一緒です。離さないで」
ロックオンは優しくティエリアの髪をすいて、髪についた花びらをとって、額にキスをした後、深く口付ける。
「そうだ。ここを、再会の場所にしよう」
「再会の場所?」

「そう。もしも、何かあって離れ離れになったら、神の庭でまた出会う」
「何度でも、何度でも出会う。あなたと出会う」
ティエリアは、花をつんで空に放り投げる。
風と空と花のロンド。
花びらの雨に包まれながら、二人は誓う。
離れても、ここでまた出会うと。
そして、ずっと一緒にいると。

ロックオンは花で幾つも花冠をつくっては、ティエリアの頭に乗せる。
ティエリアも花冠をつくっては、ロックオンの頭に乗せる。
二人は花まみれになっていた。花びらが髪のあちこちに、服のあちこちついている。

「ほれ」
「わあ」
ロックオンは、またティエリアを抱き上げてくるくるとまわった。
そんなことを何度か繰り返した。
「花畑さん、ごめんなさい。荒らしてしまって」
はしゃぎまわった分、花は踏まれる。摘んでしまった花はもう咲かない。
「大丈夫、こんなに花があるんだから。少しくらい」
「うん」

ティエリアは、ロックオンのエメラルド色の瞳と同じ花を摘んで小さなブーケにした。ロックオンはティエリアの瞳の色と同じ紅い花を摘んで小さなブーケにする。
お互いにそれを交換しあって、笑う。

風と空と花のロンド。

神の庭で、二人の恋人は戯れあう。

「今日は、ここで泊まろうか」
「うん」

二人は、花畑の近くに泊めてあった車で夜を過ごし、そして次の日も花畑で遊んだ。

「来て良かっただろ?」
「来て良かった」
ロックオンは、ティエリアを抱き上げるとまたくるくるまわって、そして花畑に押し倒した。
「戻ったら、ペアリング買おうか」
「ペアリング?」
ティエリアの右頬に唇を押し当てる。
「そう。恋人の証」
「買う」
「そうだな、瞳の色を交換しよう。俺ならエメラルド、ティエリアならガーネットだな。その指輪を交換するんだ」
「あなたは翡翠でも似合うと思う」
「ティエリアはガーネットだよなぁ。ルビーの真紅よりも柔らかい」
「僕が好きな宝石、覚えてるんだね」
「そりゃな」
二人はクスクス笑って、また口付けした。


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