「ということでだ、ネイ。再契約も交わしたし、俺とイフリエルの婚姻ぶっ壊すの手伝ってくれ」 「だそうだぞ、ティエリア」 「はぁそうなんですか・・・・」 「ああ、タメ口でいいぞ。俺、そういうの気にしないから」 ニカっと笑う精霊王は、姿かたちではなく心が男だった。 美しさを好む精霊ジルフェにあって、美少女のような外見を崩さすにそのままでいることも、ある意味美しさを保っているともいえる。 「変態に死あるのみ」 ティエリアは、銀の銃を取り出して武装しはじめた。 ティエリアは、何度中性でありながら男性として襲われたことだろうか。 美しいが、女ではないと断固自体すると実はホモだったり。そんなヴァンパイアがけっこういた。人間もいた。精霊もいた。 けっこうなトラウマだ。 「ふふふ。死あるのみ」 「あの、ティエリア、目がいっちゃってるよ？」 「話せるな、お前のパートナー」 ジルフェルは明るく笑う。 フェンリルは、ティエリアの足元にいる。 「じゃ、そういうことで今回は俺の婚姻ぶち壊してくれ。精霊界への扉を開く」 「げ、まじで精霊界いくのかよ」 「大丈夫だ、精霊が案内すれば迷ってのたれ死ぬことはないさ」 「にゃー。精霊界いくの久しぶりだにゃー」 「イフリエルをぶち殺す！」 「おう、イフリエルをぶち殺す！」 ジルフェルとティエリアは熱く拳を握り合う。こういうところでティエリアも漢だからなぁとロックオンは苦笑いしていた。 そうして、精霊界への扉は開かれた。 精霊界。はじめてくる場所だったが、現実世界となんら変わった様子はない。 ただ精霊の気配が濃いだけ。 精霊世界では精霊たちは精霊種族として、人の姿を形どって実体化する。他にも姿はあるが、人の姿をとるほうがエネルギーの効率がいいのだ。 普通に並んだ町を、ロックオンたちは見下ろしていた。 ジルフェルの風で空を飛ぶ。 ふと、ロックオンはジルフェルからヴァンパイア特有の濃い甘い血の香りがした気がした。 だが、さぐってみてもジルフェルは完全な精霊で、気の迷いらしかった。 やがて都が見え、王宮が見えてきた。 あれが、風の精霊王の住いだと、ジルフェルは囁いた。 クリスタルでできたとても美しい城だった。 王宮で地面に降りると、ジルフェルの家臣たちが慌ててかけよってきた。皆水色の長い髪をしているが、オッドアイは精霊王のジルフェルだけのようだった。 「ジルフェル様！いきなり人間界にいかれては困ります！」 「この者達は！？」 「俺の友人だ。丁重に扱え」 「は、かしこまりました」 恭しくお辞儀する家臣たちを見ていると、このジルフェルも本当に精霊王なのだなと実感できた。 ジルフェルは王としての執務をほったらかしていたのを片付け、王としての衣装に着替える。それもどこか中性的な衣服だった。 ティエリアとロックオンとフェンリルは、客室に案内されて寛いでいた。 「精霊界っていっても、人間界とあんまりかわんないだろ？」 「そうですね。住んでいるのが精霊たちってだけで」 「にゃーにゃにゃ。この果物おいしいにゃ」 「はっ、ジルフェルのやつめ、何を連れてきたのかと思えばネイか」 「てめぇ・・・・」 ネイであるロックオンと、ジルフェルの兄は顔見知りであるらしかった。 「は、フェンリルの子供まで一緒か。精霊界で人の姿をとれないほどに幼い。ネイが拉致したのか？」 「ちげーよ！こいつはこいつの意思で精霊界を出て、ティエリアと契約したんだ」 「ふん。そいつがネイの血族が。弟といい、なよなよしたやつばかりだな」 ティエリアが中性であることを、即座に理解したジルフェルの兄。 「まぁ、せいぜい寛いでいけ。ネイ」 「消えちまえ！」 ロックオンは血の刃をジルフェルの兄に放つ。彼はそれを避けてすぐに去っていった。 「ロックオン？彼と何かあったのですか？」 「ああ。ネイだった時代にちょっとな。なんつーか俺が契約した召還獣を何匹かく殺しやがった。自分より力の弱い召還獣だけを選んで。俺が契約で召還したにみせかけて召還して、殺した。今でも許せねぇ。いつかぶっ殺してやる」 NEXT |