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イフリエルの王の間に、ジルフェルとティエリアとフェンリルが現れた。
空間転移してきたらしい。
「イフリエル。ネイ。さぁ、いこうか。ティエリアには俺から事情を話しておいた。さぁ、北の化身を退治に」
「お前、本当に分かってるのか?化身を殺したら、お前も死ぬんだぞ!?」
「構わないさ。俺は死にたいんだ」
水色の長い髪がふわりと浮いた。
どこか優しいながらも寂しい微笑みを浮かべる。
「ライルは、ネイ、お前が思っているようなヴァンパイアではないよ。俺は彼が皆から恐れられ、孤独なのを知って自ら血族となることを選び、半身を血の帝国に置いて彼の傍にいた。彼にも、やっと安らぎを与えてくれるアニューという女性が出現した。もう、俺の役目はおしまいだ。俺は、ライルが孤独でなくなればそれでいい」
「アニュー!ブラッド帝国にいったというのは本当だったのか」
ティエリアが驚く。
アニューは同じイノベイターであるが、治癒の力をもつハンターには向かないタイプのイノベイターであった。
「さぁ、もう嫌だと駄々をこねられるのも困る。飛ぶぞ」
ジルフェルは、風の力をまとって、皆を北の自分の化身がいる塔に移動させた。
「お前は、なんで昔からこんな!」
ロックオンが、ジルフェル頬をはたいた。
ジルフェルは優しく笑っていた。
「ネイよ。優しいな。ライルを憎むな。ライルはお前を捨てたのではない、周りの家臣がライルを幽閉したのだ」
「なんだと?」
「ライルも優しい。俺は彼が好きだった。俺は、俺は・・・・・ジルフェでは精霊王になれぬ女」
精霊種族風のジルフェでは、代々精霊王は男と決まっている。
「お前・・・・」
「女でありながら、男として生きる道を選んだのは俺だ。精霊王になりたかった。精霊王になって、素晴らしい者と契約をしたかった。ネイとそしてライルに出会った。精霊王になってよかったと思う」
「俺の塔を荒らすのは誰だ?」
黒い影が現れる。
それはジルフェルの化身。
ヴァンパイアとしてのジルフェルとでもいおうか。
そこには精霊の面影はない。血の真紅の翼と伸びた牙。ヴァンパイアそのものだった。瞳は、けれどオッドアイのままで、水色の波打つ髪もそのままだった。
「化身は俺でも傷つけられない。さぁ、頼むネイ」
ロックオンは、ぐっとジルフェルの顔を近くにもってくると、デコピンをした。
「俺は、お前を死なせない。ライルが血族したのなら、俺に解除もできるはず!血族は癒しの魔法以外に、ヴァンパイアから戻れる方法がある」
雨のように降ってくる血の刃を避けながら、ロックオンが血の刃を化身に向かって放つ。
それをもろにくらっても、化身はゆらりと影がゆらいだだけだった。
「ティエリア、戦え!」
躊躇しているティエリアに、ロックオンが声をかける。
「構わない、殺せ!化身を殺した後は俺に任せろ!死なせない!」
ロックオンの強い言葉を信じて、ティエリアは銀の銃をホルダーからぬいた。
「血と聖水の名において、アーメン!」
銀の銃を発砲すると、その傷を受けた化身は揺らいでいた影が大分クリアになった。
実体化したところを、すかさず銀の短剣を何本も叩き込む。
真紅の翼が伸びて、化身は羽ばたく。
「邪魔をするな!俺は、俺は」
「ロックオン!」
「はいよ!」
ビームサーベルを取り出したティエリアの刃に、血の渦となって巻き付くロックオン。
イフリエルはジルフェルを見ていた。
「なぁ、私はお前を愛しているのは本当だ」
「イフリエル、後宮のハーレムも第5夫人までも全て偽りであるのは知っている。夫人たちは部下で、後宮には誰一人いない。だがな、イフリエル、愛されても俺は答えない。俺はライルを愛している」
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