血と聖水W「不法侵入者」







「なんか・・・・複雑すぎてよくわかんねぇ」
「それもそうじゃろな、ネイ」
「うわあああ、どっから湧いてきたライフエル!召還してねーぞ!」
「ホホホ」
追い出された場所は、ロックオンのホームだった。
フェンリルは元の子猫に戻り、ティエリアは疲れたのか脱力している。ロックオンも脱力しかけていたのだが、ライフエルがいることに驚いた。
美しい貴婦人の姿をした命の精霊神は、ソファに座る。
「我のミスで、たまに魂の継承を起こしながら、前世が生きていることがある。その場合、前世がすぐに死ぬのだが、今回はジルフェルがライルの血族となったせいで、その死の時期が遙かに延びて、魂の継承者と同時に生きるというミスが起こった。世界の命を担う我とて、万能ではない。まぁ何はともあれ、前世は死に、魂の継承者の中に還っていった。それだけの話よ」
「んー。つかてめぇ、見てたなら力かせよ」
「無理なことを申すな。精霊神はあくまで世界の命に手をかさぬ。ネイ、汝の願いを聞き届けたジブリエルの転生は汝の神としての力と引き換えじゃった。そう、我はほいほいと人の願いを叶える精霊ではない。あくまで神である。それを忘れるな」
「その神様が、人の家に不法侵入して、菓子くうのかよ」
テーブルの上においてあったビスケットをばりばり食べながら、ライフエルはロックオンにチョップを食らわせた。
「神に向かって失礼であろう」
「そのお前の行動が失礼だわい。つかお前の存在が失礼だ」

「まぁな、我のミスでもあるので、ジルフェルの夢にたち、魂の継承者がいることなどを知らせた。信じてはいなかったようだが。まぁ、死を自ら選んだのは流石は精霊王。どこぞのネイのように、ネバネバ腐っておらぬ。ちなみに、我は納豆が嫌いだ」
精霊って、みんな納豆が嫌いなのだろうかとティエリアは思った。
「ライルとはなんか誤解があったみたいだし・・・一度、血の帝国にいって、ライルと会ってみるかな。話したことも今回が最初だ」
「それがいいと思います。二人きりの兄弟なんでしょう?」
「まぁな。あいつが俺のせいで夜の皇帝の位置に今も無理やり立たされてるわけだし」
「でも、アニューは・・・・僕たちと同じイノベイターで聖都にいたはずなのに。血の帝国でライルの血族となったのかな?」
「みたいだな。ライルのことだ、愛した人間を血族にするだろう。そこは、ヴァンパイアは皆同じだ。愛した者は血族にする。同じ時間を生きるために」
ロックオンはティエリアの額にキスをする。

「協会に・・・・アニューのことはどう伝えればいいのだろう。聖なる癒しの力をもつアニューが消えたなんて大問題だ」
アニューは、ヴァンパイアの血族にされた者やヴァンピールを人間に戻すことのできる数少ない癒し手。
「あー、そこら問題ないから。新しい、ヒリング・ケアってこれまた性格の悪いやつが、アニューの跡ついで癒し手になったってぇ」
「そうかー、よかったーってなんでここにいるのリジェネ」
「遊びにきたら、ライフエルがここの家に入れないっていじけてた。だから針金渡したら、見事に扉あけました!」
「ライフエル、てめぇ!まじで不法進入!つか犯罪!リジェネも針金なんて渡すな!つかライフエル、鍵かけた家に入れないってどんな神様だよ!扉、針金であけるってどんな神様!?」
ロックオンを無視して、リジェネはティエリアの隣に座ってライフエルと一緒にビスケットを食べだす。
「こんな神様じゃ」
ライフエルはえっへんと威張る。
「だそうだよー。神っていっても、命の神だし、現れた場所が間違ってたら空間移動ほいほいできないんだね」
「そうなのじゃよ。空間移動するのに要するエネルギーが大きくてなぁ。このビスケットうまいの、ネイ」
「ロックオン、おかわり。あとお茶いれてきてよ。ライフエルの分も」
「おお気がきくなリジェネ。流石我が盟友」
「リジェネ、いの間にライフエルと友達に?」
「あー、なんか一人のけものにされてるっていじけてたのに相談にのったら、盟友にされた。神様の友達いても悪くないでしょ。精霊神だけどさ。存在はどうせ精霊の一番偉いってだけで、普通の精霊とあんまり変わりないよ」
「ネイよ、はやく我とリジェネの菓子と茶を用意せんか」
パンパンとライフエルが手を叩いてせかす。

「てめぇら、出てけー!!」

ライフエルとリジェネはそろってつまみ出され、二人してまた家に今度は窓から不法侵入して、その日からしばらくの間、ロックオンとティエリアのホームには、いつも遊びにくるリジェネの他に精霊神の居候が増えたという。

             血と聖水W The End


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このシリーズオリキャラの色濃いなぁ。
完全ファンタジーなのだけど、なぜ人気があるのか分からない。
かいてて自分でも分からない・・・・。