血と聖水X「密偵」







「ティエリア〜。たまには一緒に寝ようぜ?」
皆も帰って一段落したというのに、ロックオンにいつもの日常が訪れない。
ネイとなったロックオンを見たフェンリルが、いつも毛を逆立ててティエリアを守っているのだ。
近づくと、顔をひっかかれたり、氷のブレスを吐かれたり、頭をかじられたり。
「主は僕が守るにゃ!」
「ここしばらくフェンリルを構っていなかったので。ということで、僕はフェンリルと寝ます」
「そんなー。寂しい〜〜」
「ロックオンなんて、ダッチワイフでも抱いて寝てろ、にゃ!!」
フェンリルはあっかんべーと舌を出す。
白銀の毛並みをティエリアは撫でて、喉をこそばすと、フェンリルはにゃにゃっと高く鳴いた。

ベッドの中で、ティエリアは猫じゃらしでフェンリルと遊んでいる。
「にゃー。にゃにゃにゃにゃ!!!」
「ふあ〜。眠くなってきた。ねようか、フェンリル」
「はいにゃ、主。主は暖かくてきもちいいにゃ」
ティエリアとフェンリルは仲良く同じベッドで眠る。

ロックオンは、とほほと天井を仰ぎながらも、ティエリアに毛布を被せ直して自分のベッドに寝転がった。
「ブラドか。入れ」
「承知」
窓から入ってきた白梟のブラドはロックオン、ネイの忠実な側近である。
「どうだった。今の帝国は」
「某が見ても落ち着いておりまする。ただ」
「ただ?」
「今回のネイ様のクローンについてですが、首謀者はイブリヒム以外にいるかと」
「やはりか。ライルは知っているのか?」
「いえ。ライル様は静かに宮殿で過ごしておいでです。アニュー様と」
「ふむ・・・・ブラド、教皇庁を探れるか?」
「は。教皇庁でございますか。今の教皇は・・・・ネイ様の姪にあたれる方でしたね」
ロックオンは、瞳を真紅に光らせた。
「どうもな。俺の血を持っていたというのが気になる。俺の血がないとクローンなんて作れないからな。教皇庁には、俺の血液のサンプルが置いてある。取り扱えるのは教皇のアルテイジアただ一人」
「まさか、教皇が今回の一件に絡んでいると?」
「否定できなくもないな。アルテイジアは、俺の血族になりたがっていた。ネイを作り出して血族になれば、血の神の力も手にはいる。教皇の地位とそれが一緒になると厄介だ」
「ティエリア様は・・・・・血族であられるのに、血の神の力に目覚められませぬな」
「おれが定期的に血を吸って、そうなる因子を取り除いているからな」
ロックオンの吸血にも、飢えを満たす以外の意味があった。
「アルテイジア様は、ライル様を幽閉した方です」
「・・・・・・・・・教皇庁を探れ。必要であれば、アルテイジアを殺す。血の帝国で俺に逆らう者は容赦しない。あくまで、血の帝国は、7千年前、俺が覚醒した時にできた副産物に過ぎない・・・・ネイは、死してはまた生を受け、代々受け継がれてきた。今のネイは俺だ」
ロックオンは、絶対なる王者の声で命令を下す。

「御意」
ブラドは、そういってまた窓からブラッド帝国に飛び立っていった。

「なぁ、ティエリア。ブラッド帝国を支配しているのがライルではなく、教皇でも表の皇帝でもなく・・・・俺なんていったら、笑うか?」
隣のベッドで眠るティエリアに語りかける。
ティエリアはすやすやと眠っている。

「これでも、実は神様なんだよな、俺」
ロックオンは、天井を見上げて、そして瞳を閉じた。
ブラッド帝国の創立者、初代ネイから今まで5代のネイがいた。その記憶は受け継がれている。
今のロックオンは5代目ネイ。
血の運命からは、逃れられない。
本来なら、ブラッド帝国から出てはいけないのだ。
いずれ、ティエリアを血族として愛した代償を支払う時がくるかもしれない。
ティエリアを守るためなら、ロックオンは平気で同胞の国を滅ぼすだろう。
そうならぬためにも、ネイとして、国が自分に反乱を起こさないようにしなければならない。
もともと放置主義できたのだ。ネイを滅ぼそうとする者などまずいない。
ネイは血の神。
民はそれを恐れ、そしてネイは君臨し続けてきた。

教皇、アルテイジアが暗殺されたのは、それから2ヵ月後の出来事だった。
ロックオンが一時行方不明になった時期と重なる。
教皇庁は、新しくネイの血族であるというティエリアを教皇にと打診した。
ブラッド皇暦7126年。
教皇庁は、ネイとティエリアに、帰国を要請する。

                    血と聖水X The End

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あー。
あーー。。。
いろいろとつっこみたいところもある。
次かその次あたりは血の帝国が舞台かもなぁ。
なんかノベライズみたいな展開だなぁ。おかしいなぁ。