下着騒動







ティエリアはランドリーに自分の洗濯物をとりにやってきた。
適当にたたんで、そのまま自分の部屋に帰る。そして衣装箪笥にしまいこもうとして、下着がないのに気づいた。
「し・・・下着がない」
ティエリアは焦った。
ティエリアの性別は無性。しかも女性化が進んでおり、体のラインは少女のようだ。
以前は男性用のボクサーパンツをずっと愛用していたのだが、ヒップのラインもかわって、ウェストは細かったのにさらにくびれて・・・男性用ボクサーパンツが着用しにくくなっていた。
そこで、仕方なしに女性用のありふれた下着をつけるようになってはや数ヶ月。
はじめはとても抵抗感があったが、慣れてしまえば案外どうってことなかった。

「万死に値する!どこでなくしたのだろう」
ティエリアはランドリーに戻って探すが、見つからない。
「どうしよう」
「どうした、ティエリア?」
「刹那。僕の下着を見なかったか?」
「ティエリアの?いや、見ていないが」
刹那は同じように自分の洗濯物を取り出すとたたむ。
「苺柄のピンクのパンツだ」
ティエリアに恥じらいというものは少ない。
「苺・・・・・」
刹那は少し紅くなって、絶世の美少女にしか見えないティエリアから視線を外す。

ティエリアは美しい。ただ美しいだけではなく、綺麗で可憐。そしてかわいい。最近はかわいくてアホだ。
そうさせたのは全てロックオン。

「俺も探そう」
「ありがとう、刹那」
ティエリアはジャボテンダーを右手に抱えて、二人で捜索を開始した。

まずはアレルヤのところにいく。
「アレルヤ。僕の苺のパンツを見なかったか」
アレルヤは、出会い頭のティエリアの言葉に鼻血を吹き出すと、ティッシュをつめた。
「どうしたの。それをなくしたの?」
「そうだ。ランドリーからなくなった」
「だったら、さぁ。やっぱり」
「やっぱり・・・・」
「やっぱりか・・・・」
三人は、脳裏にロックオンを描く。

「ロックオン、パンツ返せ!」
ティエリアはロックオンの部屋に入ってくるなり、そう叫んだ。
「あ、ばれた?」
ロックオンは苺柄のかわいいパンツを手にしていた。
「それは僕のだ!あなたはそれをはくつもりか!?それとも頭にかぶるつもりか!?」
「いや、そんな変態な真似しないって。俺の洗濯物に紛れていたんだ」
「とにかく返せ!」
「そうだそうだ。ティエリアにパンツ返しなよ」
「ティエリアのパンツだぞ」
アレルヤと刹那が加勢に加わる。
「パンツパンツって、お前ら恥ずかしい言葉口にしてるって気づけよ」
ティエリアのペースに乗せられて、彼らも恥というものを忘れていた。
「あー。ゴホン。あー。僕なにもいってないから。戻るね」
去っていくアレルヤ。
「あー。とにかく、ティエリアにパンツ返せよ、ロックオン。いくら変態でも恋人のパンツを勝手に盗むなんて泥棒だ」
ロックオンは、刹那の言葉に刹那の頭を撫でる。
「かわいい顔してパンツ連呼してんぞ」
「パ・・・ン・・・パンクズ!」
「今更言い換えても遅いから。いやぁ、刹那の口からパンツねぇ。携帯で録音しちまった」
「消せ!!今すぐ消せ!!」
ピョンピョンはねて、ロックオンの携帯を奪おうとする刹那。
でも身長差で届かない。

携帯の着メロが再生される。
それは刹那の声だった。
「ティエリアにパンツ返せよ!」
刹那は真っ赤になった。

「ロックオン、刹那をいじめるな」
ティエリアが、ロックオンの手から自分のパンツも携帯も奪い取ると、刹那の声を消した。
「ティエリア・・・ありがとう」
「刹那、君のお陰で僕のパンツは無事だった。協力してくれたお礼にこのパンツをあげよう」
ティエリアは今日もどこかずれている。アホだ。
ティエリアの手から、苺柄のパンツを素直に受け取る刹那。
刹那だって男の子。
ティエリアに恋愛感情を抱いている。アレルヤも。無論、ロックオンの恋人なんだってわかっているけど、美少女とかわりないティエリアに恋心を抱いてしまうのは普通の反応だ。
「もらっておく」
刹那の反応は素直。ティエリアに感化させられ、アホになってずれている刹那。
もらえるものは、とりあえずもらっておけ。ちょっと変かもしれないが、そういう教育をされた。

「ずるいぞ刹那!」
「ロックオンめ、ざまぁみろ」
刹那はロックオンをからかって、苺のパンツを手に去っていった。
苺のパンツなんてもらってどうするんだろうか、刹那は。

「まったく、お前さんは」
「何か?ダメだったか」
「普通だめだろ。彼氏でもない人間に、いや彼氏でも普通パンツなんてあげないぞ」
「そ、そうなのか?」
ティエリアは混乱しだした。
「まぁ、刹那のおもしろい声録音できたし」

「ティエリアにパンツ返せよ!」

消したはずの声が、再生される。

「しばらくこのネタでからかって遊ぶかな〜」
「思い出した。あのパンツ、あなたに買ってもらったものだ。あなたのお気に入りだった。ごめんなさい」
しゅんとうなだれたティエリアの頭を撫でる。
「また買いにいけばいいさ」
「はい」
女の子として目覚めていくティエリアと一緒に、下着を買うのはまぁ恥ずかしいが、自分が買ったものを着てくれるティエリアはかわいい。
ユニセックスな服だけでなく、女の子の衣装だって着てくれるようになった。
ティエリアはジャボテンサーさんをぎゅっと抱きしめると、ちゅ、とロックオンの額にキスをする。
「どうした?」
「なんでもありません」
ジャボテンダーさんを抱きしめて、照れてティエリアはロックオンのベッドに勝手によじのぼって毛布を羽織って出てこなくなった。
パンツパンツ叫んでた自分に、今更ながらに恥ずかしくなったティエリアであった。


町で二人で出かけたとき、着メロは刹那の声のままになっていて。
「ティエリアにパンツ返せよ!」
二人して、注目を浴びて赤面したのはいうまでもない。


ちなみに、刹那は自分のジャボテンダーの頭にティエリアの苺のパンツをかぶせていた。ここにも、アホが一人。


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まいすたーずアホギャグ。