「刹那、ジャボテンダーさんの分と僕の分を」 「ああ」 食堂に入った二人。 カウンター席に座る。 ティエリアはいつものように、カウンター席にジャボテンダーをもたせかける。 ほどなくなして刹那が戻ってきた。 手にはホワイトメロンソーダの入ったコップが二つ。 それを受け取って、ティエリアはジャボテンダーの前にコップを置く。 「ジャボテンダーさん、思う存分飲んで下さい。古い葉緑体はあとで取り替えましょう」 水を飲んでいた刹那は、その言葉にブッと吹き出した。 「?何がおかしい」 「・・・・・・・・・・なんでもない」 ティエリアはいつもこうだ。ジャボテンダーを人扱いする。ジャボテンダーが破れると、治療カプセルに入れるほどに重症だ。 ジャボテンダー中毒症。皆はそうよんでいる。 「古い葉緑体はとりかえれるのか」 「そうだ。刹那、今日は君が新しい葉緑体になれ」 ブッ。 また吹き出した。 「それで、どうすればいいんだ俺は。太陽を浴びていればいいのか」 「太陽を浴びながら、できあがった葉緑体をジャボテンダーさんに分ければいい」 「了解」 二人は、それからAランチを注文して食べていく。 ティエリアは食が細い。残した文は刹那が食べた。 「さて、いざ光合成に赴かん」 ティエリアはジャボテンダーを片手に歩きだす。 ルンルンと音が聞こえてきそうだ。 刹那は真面目な顔で、ティエリアと手を繋いで歩きだすのだ。 今日の刹那は新しい葉緑体。太陽を浴びてジャボテンダーにエネルギーを分け与えるという崇高な(ティエリアの中では崇高)な使命をもらったからには頑張らなくてはいけない。 ブッ。 食堂の皆は、そんな二人を遠めに眺めでやっぱり吹き出している。 ティエリアの言動は不思議すぎてたまにアンビリーバボー。 ジャボテンダーシンドロームは5年たった今でも変わらずトレミーに蔓延している。ティエリアに関わると、人間が崩壊するという、ジャボテンダー絡みの中毒症状であった。 今の主な被害者は刹那。 昔はロックオンやドクター・モレノだった。 「刹那、新しいジャボテンダーさんをたたえる歌を聴いてくれ」 今日も、トレミーのデッキから、美しい歌声でティエリアの変な歌が聞こえてくる。 それも、5年前と変わらぬ風景。 今日もティエリアは元気いっぱい。 |