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天使は、どんなに望んでも人にはなれない。
それは人間がどんなに望んでも天使になれないように。だが、人間は魂によっては天使として転生することができるのだ。
だが、天使は死という存在がない。あるのは消滅。
人の魂は通常、輪廻の輪に戻り、様々な形で命をうける。
人であった者がまた人になるかどうかは決まっていない。
天使が人間になりたいと望み、その願いが叶ったものをフォーリングという。
天使の羽を散らし、世界に堕ちてそしてデーモンとなるのだ。
決して、人間にはなれない。
それがこのエーテルの渦巻く世界の掟。
ティエリアは、生き残った刹那とリジェネと別れて宇宙で生活していた。
その傍には、ニールと瓜二つのアンドロイドが常に傍に寄り添っていた。
「ティエリア?」
「なんでもない、ニール」
ティエリアは窓から見える銀河を遠くに、祈る。
世界にではなく、ただ彼のために。
それは透明な歌となり、宇宙シップを満たしていく。
再生された世界。もうあの戦いから何百年もたった。
イノベイドの子供たちは世界に紛れ、今も人と共存している。寿命は人間と同じ。
イノベイドの純粋体であるティエリアは、17のときに時間を止めてしまった。それはリジェネも、そして新しいイノベイターに目覚めた刹那も同じ。
彼らは新しい宇宙開発の先駆者となった。
テェイリアは、ニール、いやニールの姿をしたアンドロイドの傍で彼に微笑む。
もう、孤独でいることも耐えられないくらいに壊れてしまった自分。
こんな自分を見れば、ニールは嘆くだろうか。
ニールの姿をしたアンドロイドを自分から作ってしまった僕を罰するだろうか。
でも、もう彼なしでは生きられない。
生きていたくない。
死ぬことのないこの体。世界を見つめるのももう限界だった。
コールドスリープについても、なぜか10年単位で目覚める。
いっそ、命を絶つか・・・。
そこで、この命はニールに守られたものなのだと気づいて涙を流すのだ。
何度祈っただろう。
何度願っただろう。
ああ、人間になりたい。
僕は人間になりたい。
イノベイドであることに始めは感謝した。だが、その生が何百年も続くと呪いに変わる。
一人の人間として、皆と一緒に人生を終えたかった。
そして、できることなら彼の墓の中で眠りたかった。
「ティエリア、泣いてる・・・・」
ニールの手が、ティエリアの涙を払う。
踵まで伸びた髪が、宙を泳ぐ。
「なんでもないよ、ニール」
アンドロイドは暖かく、優しい。ニールの正確を忠実に再現している。
指には、ニールが持っていたものと同じペアリングをはめていた。
「ん・・・・?」
宇宙船の窓を、コンコンと外側から叩く音にティエリアは気づいて、そちらを見た。
傍にいるはずのニールが、窓を叩いているのだ。
ティエリアは、その窓の外にいるニールの背中に翼をみて、ああついに祈りが、願いが届いたのかとおもった。
迎えにきてくれたのだ、彼は。
やっと、解放される・・・・。
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