祈りの数だけ「世界に溶けて」







祈りの数だけ、救いはある。
祈りの数だけ、願いは見届けられる。
祈りの数だけ、きっとあなたは幸せになる。

祈りの数だけなら、誰にも負けない。

きっと、きっと。

祈るだけなら誰にもできる。
祈るだけなら誰にだってできる。
ただ祈るだけ、その行為は子供にだってアンドロイドにだってただのAIにだってできる。
けれど、真なる祈りはただ一つ。
一人一人の人間の中で一つだけ。

祈りは願いの力の結晶。
願いはやがて祈りに変わる。
祈りの数だけ人々は願いを持つ。

祈りが、地上の天使をかえる。人から、天使へと。
高エネルギー生命体へと体が構築されていく。その基礎となるのは天使の証である翼。

「何これ?」
「認められたんだ。俺が守護天使となって接触することで、ティエリアは天使となることを、1位の天使となることを至高天に認められたんだ」

ティエリアは翼を広げて、首をふった。

「そんなもの、いらない!」
「どうして?」
ニールには理解できない。天使ある限り、1位であることは最高の栄誉だ。
「僕は眠りたいんだ。この世界から消えてなくなりたいんだ」
ああ。
地上の天使自らがそう望んでいるから、天の歴史書に地上の天使の魂が召されるとはかいていないのに、召される時が決められていたのか。

時はただゆっくりと過ぎ去っていく。

「ティエリアが望むなら。俺と一緒に」
ニールは手を差し出す。
ティエリアは震えながら、金色の羽を散らしながらニールに抱きついた。

「ティエリアの祈り、ずっと俺に届いていたよ」
「そう。良かった」
「もう泣くなよ」
「泣くよ。いっぱい。あなたが、どんな姿をしていても僕の隣にいるんだもの」

金色の光が満ちる。
至高天への扉が開いたのだ。

「ティエリアがそう望むなら、エーテルの海で溶けよう。世界の源になって」
「うん・・・・・」

ティエリアは金色の翼で飛び立つ。
ニールは白の翼で飛び立つ。

遙かなる至高天、天使たちの故郷へと。


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