「マリー・パーファシーも読むか。俺の部屋に届いている。一緒にくるといい」 刹那が立ち上がった。 それに続いて、ライルが立ち上がる。 ティエリアは、原稿の描き直しがあるが、まだ休憩したいようなので座ったままだ。 「ついていきますね」 マリーが立ち上がった。 そして、アレルヤも立ち上がった。 マリーと離れたくないというのが正解だった。 「僕も行くよ」 「アレルヤ・ハプティズムも読むのな。珍しいな。同人誌を嫌っているではなかったか」 刹那が首を傾げる。まぁいいかと、刹那、ライル、マリー、アレルヤはそれぞれ食堂から出て、刹那の部屋に集まった。 「また、たくさん買い込んだもんだな」 ライルが、新しい同人誌の山を見下ろす。 「今回は、ガンダムOOばかり買った。ライティエと、ロクアレと、アレマリに、ライアレだ」 「まぁ。私も同人誌に出てくるんですね」 興味津々とばかりに、マリーが笑う。 「俺は攻ばっかだな」 もはや、ライルも専門用語を身につけていた。 四人揃って、座る。 アレルヤは、刹那からアレマリの本を渡され、同人誌を読む気がなかったのに読み出した。 そして、その内容の切なさに「マリーが、マリーがあああ」と泣きながら読んでいた。 ライルは、ライティエというボーイズラブの本を手にとった。相手がティエリアであれば、悪い気はしない。 最近は本格的にティエリアを口説きだしているライルである。 そのまま本を読み出す。両思いという設定だった。 「この本みたいになれたらなぁ」 ライルの感想は簡単だった。 刹那も、ライルがティエリアを口説いていることを知っていた。いや、CBメンバーの全員が知っていた。 「ティエリア・アーデは簡単には落ちない」 「だろうなぁ」 ライルは、ライティエの本を読んでいった。その本は、最初ボーイズラブの話がのっていたが、後半からはティエリアが女の子であることがばれてしまったという内容で、ようは女性化本であった。 エッチシーンもあり、ティエリアがほぼ少女であることを知っているライルにはこの本どおりになれたらと、真剣に読んでいた。 マリーに、刹那はロクアレの本を渡した。 「まぁ」 興味津々な様子で、読んでいく。 その本は、ストーリーは良いが、過激なエッチシーンがあることで有名なサークルのものだった。 「私のアレルヤが・・・・ああ・・・・うふふふふ」 マリーは、最初驚いた様子であったが、すぐに慣れてしまった。 そして、ニマニマとした表情で読み終えてしまった。 「こんな世界もあるんですね。新しい発見です」 ページ数が薄かったので、マリーはすぐに読んでしまった。 アレマリの長編を読んでいた刹那は、ページにしおりを挟んで、マリーの目の輝きがミス・スメラギの輝きに酷似していることに気づいた。 ああ、彼女は免疫があるな。 「ボーイズラブに興味があるのか?」 「せ、刹那!」 直接的に切り出した刹那に、アレマリの本で泣いていたアレルヤが顔をあげた。 「はい、とっても興味をもちました!もっとたくさん読みたいです!」 これで、また仲間が一人増えた。 刹那はそう思った。同人誌を読む仲間が。 「この本の山で足りなければ、その後ろの本棚の本を読むといい。それでも足りなければ、隣の部屋に今まで買ってきた同人誌を並べた本棚がいくつかある」 「わぁ、凄いですね!」 「好きな本をもっていけばいい」 「いいんですか?」 「ああ。ちゃんと返してくれるのであれば、自室にもってかえって読むといい。隣の部屋は本棚ばかりで、読むスペースがないしな。かといって、俺の部屋で読んでいれば、全部読みきれないだろう。日が暮れる」 「では、お言葉に甘えて、いくつか借りていきますね!」 「マリー・・・・」 「どうしたの、アレルヤ?」 「なんでもないよ」 はらはらと泣きながら、これでマリーも立派腐女子だと、アレルヤは床に「の」の字を書いた。 「じゃあ、俺もいつもみたいに何冊かかりてくぜ」 ライルが、新刊の中からライティエばかりを抜き取った。 「分かった。アレルヤ・ハプディズムはどうする?」 「僕はいいよ・・・・・」 遠い目で、明後日の方向を見ていた。 はらはらと泣きながら。 刹那を恨むことはしない。アレルヤは、どこまでも優しかった。 マリーから、楽しみを奪うことも無論しない。 マリーは、ガンダムOOのジャンルが気に入ったようで、刹那の本棚からロクティエを抜き出して、持ちきれないくらいの本をどうやって移動させようかと困っているようだった。 「僕が半分持つよ、マリー」 「ありがとう、アレルヤ」 何気に、ロクティエの本の中にロクアレ、ライアレの本も混じっている。 新しい世界に目覚めてしまったマリーには、愛しい彼が乱れる姿も見たかったのだ。 ロクティエを選んだのは、刹那が王道ジャンルだからとススメたのと、もういなくなってしまったロックオンという恋人を今だに愛し続けるティエリアのひたむきな愛が気になったからだ。 ライルは見た目がとてもいい。そんな双子の兄であったロックオンと、同じく絶世の美少女に見えるティエリアとは、それはそれは見目のいいカップルであっただろう。 アレルヤは、マリーと同人誌の山を抱えながら刹那の部屋を後にした。 そして、マリーはアレルヤのことも忘れ、自室にロックをかけて読みふけった。 読んだ本を刹那の部屋に返して、隣の部屋にはいって、同人誌を選ぶ。そしてまた自分の部屋に戻っては、読みふける。 「やーん、おもしろーい。きゃあ、過激!」 マリーは自室で一人なのをいいことに、存分に同人誌を楽しんだ。 ギャグ漫画で笑ったかと思うと、ボーイズラブの切ないストーリーに涙し、次にはらはらした展開にドキドキする。そして、ボーイズラブの奥深さを堪能するのであった。 マリーは、新しい世界に目覚めてしまった。 刹那がもっている同人誌の量を全部読むには、数日がかかるだろう。 マリーは、よい暇つぶしになるとご満悦だった。 これで、彼女も立派な腐女子である。 アレルヤは、一人ベッドにつっぷして、ぼーっとしていた。 それから数日間、マリーに相手をされなかったのは言うまでもない。 そして、アレルヤの最大の恋敵は、同人誌となった。 |