これぞ超兵








チュイン、チュイン!
ガガガガガ!!

響き渡る銃声。床に散乱する銃弾。

「マリー!!」
アレルヤの伸ばした手は、けれどソーマに届くことなく、銃声によって遮られた。

「大丈夫ですか、しっかりして下さい!」
ソーマの仲間が、彼女を取り囲む。
自分より上の階級にある軍人を助けようと、必死になるソーマの部下たち。
ソーマは蒼白な顔色で、頭を抑えていてうめくばかりだ。

「マリー!!」
アレルヤの悲痛な叫び。
けれど彼は、それ以上近づけない。
銃が、アレルヤの足元を撃つ。
止まらない威嚇射撃に、アレルヤは大切なマリーを取り返すことをあきらめ、踵を返す。
刹那に渡されたデータベースを手に、ガンダムが来ると思われるポイントに向かう。
「待てーー!!」
兵士たちの銃が、アレルヤの足を射抜こうとする。
なるべく生きたまま、捕らえるにこしたことはない。足元を狙う兵士たちの銃は、止まらない。
アレルヤという名の、4年前に宇宙で捕虜となったソレスタルビーイングの青年は、長い間拘束されていたというのに、 常人ならざる速さで駆けていく。

「止まれ!!」
兵士の命令を無視して、アレルヤは走った。
止まらない脱走者の足に、足を狙っていた射撃が走り去っていく背後を狙う。

ズキューン!

その弾痕は、アレルヤの肩を撃ち抜くはずだった。

チュイン!
音を立てて、弾き飛ばされる銃弾。

「そんなバカな、当たらない!?」
足を狙って撃つ兵士たちも、困惑の声を漏らす。
どんなに狙っても、アレルヤに当たらない。

これぞまさに超兵パワー。

「いたぞ、こっちだ!」

通路を曲がったところで、騒ぎにかけつけた兵士と出くわしてしまった。
銃声が響く。

「な、なにぃぃ!!!」
アレルヤは、銃弾を白羽取りした。
そんなことが可能なのかと聞かれれば、普通は不可能だと答えるしかないが、現実にアレルヤは銃弾を手で受け止めたのだ。
「こ、こいつ、人間じゃない!?」
怯む兵士の隙をついて、走りぬける。
「待てええ!」
たじろいだ兵士は、それでも腐っても兵士。脱走者を止めようと銃を乱射する。
「ぎゃ!」
乱射された銃は、仲間に当たった。
「ちょっと待ってよ、俺仲間!」
兵士の一人が、そんなばかなーと叫びながら、地面に倒れ付す。
乱射される銃に、他の兵士も血を流す。
「ひでええええ!」
一人、また一人。

混乱が襲いかかる。
「ええい、撃ちかた止め!」
その場を諌めるために、兵士の中でも階級が一つ上だった兵士が、銃を撃っていた全員に命令を下した。


(マリー、必ず君を取り戻すから)
ガンダムに乗り込んだアレルヤは、コックピットで操縦桿を握り締めた。
4年ぶりになる、操縦。


「何をしている…、逃げられたのか」
頭をおさえたまま、部下の報告を聞くソーマは顔を顰めた。
今のソーマの中に、マリーの記憶はない。

とにかく、とんだ失態だ。

「それがその、やつは銃弾を白羽取りしまして!」
「何をバカなことを言っている!」
ソーマに殴り飛ばされる兵士A。
嘘はついていないのに。
「いくら銃を撃っても、当たらないのであります!」
「この腑抜けが!」
張り倒される兵士B。


去っていくガンダムの機影を睨みあげながら、荒れたソーマは唇をかんだ。