血と聖水Y「メザーリア」







「まま、パン焼けたよ」
皇帝は、ティエリアのことをママと呼ぶようになった。

「焼けたーのにゃ」
「俺も焼けた・・・・サラマンダーが機嫌そこねて焼けた・・・・」
黒こげになって登場したロックオンに、ティエリアも皇帝もフェンリルも笑った。

「かわいい?私のさらまんだ」
「かわいくねー!!」
ロックオンが叫ぶと、皇帝の手にのったサラマンダーは炎をぼっと吐いて、ロックオンの髪をアフロにした。
「パパ、私結婚が」
「なんだって!パパは許しません!まだ結婚には早い!」
「ママ、私結婚が」
「ママは許しません!まだ娘を結婚には出しません!」
二人して、こんな調子だ。
「フェンリルも、まだ早いと思うにゃ」

「ありがと。でも、帰ったら結婚しなきゃいけない。政略結婚。大臣の息子と。私、ここにきて良かったな。楽しい思い出いっぱいできた。うん。幸せだな」

皇帝は、はじめて一人の少女として泣いた。

「皇帝・・・・」
「皇帝、その結婚、ネイの名によって破棄させる」
「本当!?」
「ああ。結婚したくないんだろ?」
「うん。私、好きな人いる。家臣の家来。その人と結婚したい」
「すればいいさ。好きなヤツと結婚するのが普通ってもんだぜ?パパは許します。その家来のこと結婚しなさい」
「ママは?」
「ママも許します」
「ありがとう、パパ、ママ」

32代目皇帝、メザーリア・アロス・エル・ブラッディが、平民と結婚したのは、その半月後のことになる。

ブラッド帝国から遊学に出て、1ヶ月もしないうちに皇帝は帝国に帰ってしまった。
皇帝は、あくまでブラッド帝国の皇帝であり、国を統治する責任があるのだ。

「にゃーにゃにゃにゃにゃ」
フェンリルは、今日も二本足でたって、冷蔵庫をあける。
「おはようにゃ、氷の精霊君にゃ」
冷蔵庫の氷の精霊に挨拶をしてから、冷蔵庫をあさる。
「にゃにゃにゃ!!ここにおいてあったプリンがないにゃあああ!!」
「あ?それお前のだったの?俺くっちまったわ!」
フェンリルはしゅたっとテーブルの上にのると、がぶりとロックオンの頭にかみついた。
「いてえええええええええ!!!」
血がピューって吹き出る。
「にゃにゃ!名前もかいてあったのににゃ!」
「え、まじで?」
ゴミ箱をあさると、達筆でフェンリルってかいてあった。
「あー。うー」
「今日こそ成敗するにゃ!!」
「フェンリル、僕の分あげるから」
「ありがとうにゃ。主はいつでも優しいにゃ〜」
フェンリルは、プリンをなんと右前足でスプーンをにぎって器用に食べる。食べ終わった後は、右前足で頭をかいたあと、ティエリアに全身のブラッシングをしてもらう。

「にゃーにゃにゃにゃ」
今日も、ティエリアとフェンリルとそしてロックオンは平和。

                 血と聖水Y The End


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けっこう長くなったなぁ。
ティエリアの覚醒とか、まぁうまくいったかんじ。
4、5よりはいいできかもしれない。
はじめはフェンリルの大冒険の外伝予定がYになった。
外伝は明日にまわしますかな。