コンコン。 夜になって、ホームの扉を叩く音がした。 「はい、どちらさまですか?」 「宅配便でーす」 「はい。今出ます」 ティエリアは、風呂上りでロックオンとお揃いのジャボテンダー柄のパジャマを着たまま、玄関で対応に出た。 扉をあけると、目の前に上等な馬車が見えた。 「んー?」 「ティエリア・アーデ様。ティエルマリア女王の因子、魂の霊子を継ぐお方よ。女王の命令により、お連れに参りました」 貴族と思わしき若者が、ティエリアの前で膝を折る。 「え?」 ティエリアは、何を言われているのか分からなかった。 「えと、ティエルマリアが・・・女王が何か。僕の母ですが」 本当の母親ではなかったが、ティエリアの創造者はティエルマリア女王。ティエリアにとっては、母である。母として温もりもくれなかったが、墓地で触れた女王の魂は愛に満ちていた。 「お支度下さい。現女王が病に臥せっております。現女王の名により、王として迎えに参りました」 「ちょっとまって!!ティエルマリアは僕の母親だけど、そう、イノベイター皆の母。だけど、僕はティエルマリアの子供であっても、王位継承権とかそんなのもってないよ!急に王としてだなんて、おかしすぎる!!」 騒ぎ出すティエリアに気づいて、ロックオンが、ティエリアの銀の銃を貴族の若者のこめかみに向けて、そしてティエリアを片手で肩に抱き上げる。 「何だお前。俺のティエリアになんか用かよ?」 ロックオンの首に手を回して、ティエリアは石榴色から金色に変わった瞳で貴族の若者を見下ろした。 「いや。僕はいかない。僕はロックオンの恋人。彼と一緒にここに住んでいる」 「ティエリア様・・・・・では、ロックオン様もご同行ください」 「はぁ?」 ロックオンは、ティエリアを抱く腕に力をこめる。 誰であっても、自分からティエリアを引き裂こうとする者は容赦しない。それがロックオン。 ネイ。ブラッド帝国の夜の皇帝。 結局、ややこしくなって、上等な馬車の上でティエリアはロックオンの上で中で眠っていた。 フェンリルも一緒だ。 ティエリアは着替えると、話をつけるために、いつも離さないヴァンパイアハンターの武器などを身につけて馬車に乗り込んだ。 ロックオンも一緒なので、ティエリアは安心していた。 ティエルマリア二世が病に臥せり、次の王にティエリアを指名したというのだ。 イノベイターのティエリアに王位継承権はないはずなのだが、女王ティエルマリアの遺言によって、ティエリアに王位継承権が発していたのがことの始まりであった。 ティエル王国にいき、完全に王位継承権を放棄しない限り、何度も迎えにくる・・・・その言葉に、ティエリアは生まれ故郷であるティエル王国の地を再び踏むことを決意した。 女王ティエルマリアが死んで13年。1年間フリーのヴァンパイアハンターをしていて、ロックオンと出会い、血族に迎えられた。最初の一年は、教育という名のヴァンパイアハンターとして生きるための術を教えられた。 1000人目をティエリアで吸血してしまったロックオン。もっとも、血族にするための吸血であったのだが、それでも吸血にはかわりない。 ティエリアはロックオンと出会い2ヶ月同じロックオンのホームに住んでいるうちに、二人して惹かれ合い・・・そして、以前どこかで出会ったことがあるデジャヴが二人を襲った。 断片的にネイとしての記憶を思い出したロックオン。ロックオンを愛していたことを思い出したティエリア。 その時は、覚醒はしておらず、記憶もすぐに消えてしまった。 それでも二人は愛し合い、永遠の愛の血族という対等な、特別の相手として、愛するパートナーとしてロックオンはティエリアを迎えた。 体の関係をもち、絆をつくり永遠の愛の血族は完全なるものとなった。 今ではもう、ティエリアへの愛は誰にも止めることはできない。 前世はネイの妻ティエリエルで、生まれ変わりである、ティエリアはロックオンの運命の相手なのだ。 「愛してるよ、ティエリア」 「う・・・ううん」 腕の中で甘い吐息をこぼすティエリアを抱きしめ直して、ロックオンは前の馬車に乗った貴族の騎士の一人がヴァンパイアであることに、すでに気づいていた。 周到に人間に化けているが、ネイであるロックオンを騙せるはずがない。 NEXT |