廻れ廻れU(3期)







シルバーのブレスレットか飾られた空の酒瓶。
それはまるでリジェネ。
中身は強いアルコールで、でも外は綺麗にラベルで飾り立てられている。一口、口にすれば癖になる。堕ちるか堕ちないかは、リジェネの意思次第。

リジェネが堕ちることはない。多分。
なぜなら、彼には彼の中に信念を持っているから。
リジェネは、イオリアの後継者・・・・イオリアが天使として作り上げたティエリアのツイン。イオリアの後継者として、リボンズを創造した。そう、リボンズには自分がリボンズに創造されという偽の記憶を与えて。
たくさんのイノベイターを作り出した彼は、神に一番近くありながら、神になれなかった。
天使にもなれなかった。

「は・・・・・ばかみたい」
リジェネは眼鏡をかけなおし、ふらふらする足を叱咤して、自分に与えられた部屋に向かう。
中に入って、眼鏡をとってベッドの棚におくと、バスルームに入り、着ていた衣服を全て脱ぐと、熱いシャワーを浴びた。

「愛は支配に似ているだって?ああそうだよ、愛は支配されるかされないか。愛することは支配すること!」
乱暴に髪を拭いながら、シャワーを全身に浴びる。
「分かり合えたら、幸せになれるなんてそんなこと。夢だよ。分かり合えても、結局は何も生み出さない。そうだ、僕は何も生み出さない。ティエリアのように、愛されない。愛される資格もないさ!」
ザァザァ。
流れていく湯が、目に染みるのは何故だろうか。

涙が、一緒になって流れていく。

ああ、いらつく。

壊したい。
壊したい。
壊したい。

ガッと、壁を殴る。
煌くカミソリの刃をみつけて、リジェネはそれを握り締める。
真紅の血液が流れていく。
痛みは感じない。

ああ。イオリア。僕はお前の後継者として不完全だった。何故僕を産んだ。何故、僕に後継者の地位を与えた。
何故、神の位置を与えた。神になどなりたくなかったのに!!

「う・・・・うああああああ」

リジェネは蹲って泣き叫んだ。
リジェネのうなじに浮かんだNOはNO0。ゼロ。どの個体もNO0。ゼロ。1すらない。
ゼロの、生物。ゼロ。何も生み出さない、ゼロの個体。

肩甲骨には、ティエリアのように翼を象った紋章がある。
それは、ティエリアのように天使の翼ではなく、悪魔の翼を象ったもの。

イオリアの中では、ティエリアが天使でそのツインのリジェネは悪魔だったのだ。
だからこそ、無垢なティエリアは次代に残し、リジェネを後継者として選んだ。

「憎い、この世界が憎い、憎い、憎い・・・・・リボンズ、寂しいよ」

狂ったように呟いて、シャワーの湯をとめる。

「ピンポーン」
チャイムがなった。
リジェネは、ちっと舌を鳴らして、ガウンを着て、雫を滴らせて、確認もせずにドアをあける。
「レジェッタさーん。夕ご飯まだでしたよね、良ければ一緒に・・・・」
ドアを開けた先には、ミレイナがいた。
「あ、ごめんなさいですう!お風呂はいってたんですね!!」
頬を紅くするミレイナはもじもじしている。

「愛は、支配すること。知ってる?」
「え、え??」
部屋の中にミレイナを無理やり引きずり込むと、そのままベッドに押し倒した。
「レジェッタ、さん?」
スカートがめくれて、下着が見えていた。
リジェネはガウンを足元に落とす。
「きゃあああああ・・・ああああ?ない?ない!?」
男性なら誰もがもつべきものが、リジェネの体にはなかった。
「何も生み出さない。この体は、何も生み出さない。愛も、全部!!」
「リジェネさん。泣いてるですか?」
自分の上で涙をこぼす少年に、ミレイナは何故か同じように涙を流した。
「何も生み出さないなんてそんなことないですよう。レジェッタさんは、みんなに愛されてますよう。手、怪我してるんですね」
血の滲んでいる右手の平を、ミレイナはもっていたハンカチを巻いた。

「君は、僕が怖くないのか」
「どうしてですか?」
「襲われかけているんだぞ」
「え、そうなですかぁ?」
「は・・・・ばかみたい」
リジェネはガウンを羽織ろうとする。
「あ。背中・・・・綺麗ですね。翼の紋章がある」
GN粒子の色に耀く紋章を見て、ミレイナが声を出す。
「悪魔の翼さ」
「悪魔?そんなことないですよう。これ、天使の翼みたい」
見ようによっては、天使の翼に見えないこともない。

ミレイナはにこりと笑った。
その無邪気な笑みに、リジェネはまた涙を流していた。

「どうしたのですか!?どこか痛いですか?」

「愛して。僕を愛して。何も生み出さないゼロなんて嫌だ・・・愛されたい」
ミレイナは、そっとリジェネを抱きしめて、一緒に泣き出した。
「愛してますよう。ミレイナ、レジェッタさんのことが大好きです。誰よりも大好きですぅ」
ティエリアには失恋したけど、リジェネにアタックをかけ続けていたミレイナは泣きまくる。

「愛は・・・・・・どうなるかなんて、誰にも分からないね」
ミレイナを抱きしめて、触れるだけのキスをしてから、リジェネは彼女を外に追い出した。
「レジェッタさん!?」
「一人にして!」
レジェッタさん!!私、あなが好きです!!」
「一人に・・・・してくれ」

二人は、扉ごしに涙をこぼす。

ああ、リボンズ。
僕は、新しく人を愛していいのだろうか。
イオリア。このゼロの体でも、ぼくは愛を生み出せるだろか。

ああ。

壊したい。
愛されたい。
壊したい。
愛されたい。

愛したい。

誰か、教えて。

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リジェ・・・ミレ!
カオス!!!