シルバーのブレスレットか飾られた空の酒瓶。 それはまるでリジェネ。 中身は強いアルコールで、でも外は綺麗にラベルで飾り立てられている。一口、口にすれば癖になる。堕ちるか堕ちないかは、リジェネの意思次第。 リジェネが堕ちることはない。多分。 なぜなら、彼には彼の中に信念を持っているから。 リジェネは、イオリアの後継者・・・・イオリアが天使として作り上げたティエリアのツイン。イオリアの後継者として、リボンズを創造した。そう、リボンズには自分がリボンズに創造されという偽の記憶を与えて。 たくさんのイノベイターを作り出した彼は、神に一番近くありながら、神になれなかった。 天使にもなれなかった。 「は・・・・・ばかみたい」 リジェネは眼鏡をかけなおし、ふらふらする足を叱咤して、自分に与えられた部屋に向かう。 中に入って、眼鏡をとってベッドの棚におくと、バスルームに入り、着ていた衣服を全て脱ぐと、熱いシャワーを浴びた。 「愛は支配に似ているだって?ああそうだよ、愛は支配されるかされないか。愛することは支配すること!」 乱暴に髪を拭いながら、シャワーを全身に浴びる。 「分かり合えたら、幸せになれるなんてそんなこと。夢だよ。分かり合えても、結局は何も生み出さない。そうだ、僕は何も生み出さない。ティエリアのように、愛されない。愛される資格もないさ!」 ザァザァ。 流れていく湯が、目に染みるのは何故だろうか。 涙が、一緒になって流れていく。 ああ、いらつく。 壊したい。 壊したい。 壊したい。 ガッと、壁を殴る。 煌くカミソリの刃をみつけて、リジェネはそれを握り締める。 真紅の血液が流れていく。 痛みは感じない。 ああ。イオリア。僕はお前の後継者として不完全だった。何故僕を産んだ。何故、僕に後継者の地位を与えた。 何故、神の位置を与えた。神になどなりたくなかったのに!! 「う・・・・うああああああ」 リジェネは蹲って泣き叫んだ。 リジェネのうなじに浮かんだNOはNO0。ゼロ。どの個体もNO0。ゼロ。1すらない。 ゼロの、生物。ゼロ。何も生み出さない、ゼロの個体。 肩甲骨には、ティエリアのように翼を象った紋章がある。 それは、ティエリアのように天使の翼ではなく、悪魔の翼を象ったもの。 イオリアの中では、ティエリアが天使でそのツインのリジェネは悪魔だったのだ。 だからこそ、無垢なティエリアは次代に残し、リジェネを後継者として選んだ。 「憎い、この世界が憎い、憎い、憎い・・・・・リボンズ、寂しいよ」 狂ったように呟いて、シャワーの湯をとめる。 「ピンポーン」 チャイムがなった。 リジェネは、ちっと舌を鳴らして、ガウンを着て、雫を滴らせて、確認もせずにドアをあける。 「レジェッタさーん。夕ご飯まだでしたよね、良ければ一緒に・・・・」 ドアを開けた先には、ミレイナがいた。 「あ、ごめんなさいですう!お風呂はいってたんですね!!」 頬を紅くするミレイナはもじもじしている。 「愛は、支配すること。知ってる?」 「え、え??」 部屋の中にミレイナを無理やり引きずり込むと、そのままベッドに押し倒した。 「レジェッタ、さん?」 スカートがめくれて、下着が見えていた。 リジェネはガウンを足元に落とす。 「きゃあああああ・・・ああああ?ない?ない!?」 男性なら誰もがもつべきものが、リジェネの体にはなかった。 「何も生み出さない。この体は、何も生み出さない。愛も、全部!!」 「リジェネさん。泣いてるですか?」 自分の上で涙をこぼす少年に、ミレイナは何故か同じように涙を流した。 「何も生み出さないなんてそんなことないですよう。レジェッタさんは、みんなに愛されてますよう。手、怪我してるんですね」 血の滲んでいる右手の平を、ミレイナはもっていたハンカチを巻いた。 「君は、僕が怖くないのか」 「どうしてですか?」 「襲われかけているんだぞ」 「え、そうなですかぁ?」 「は・・・・ばかみたい」 リジェネはガウンを羽織ろうとする。 「あ。背中・・・・綺麗ですね。翼の紋章がある」 GN粒子の色に耀く紋章を見て、ミレイナが声を出す。 「悪魔の翼さ」 「悪魔?そんなことないですよう。これ、天使の翼みたい」 見ようによっては、天使の翼に見えないこともない。 ミレイナはにこりと笑った。 その無邪気な笑みに、リジェネはまた涙を流していた。 「どうしたのですか!?どこか痛いですか?」 「愛して。僕を愛して。何も生み出さないゼロなんて嫌だ・・・愛されたい」 ミレイナは、そっとリジェネを抱きしめて、一緒に泣き出した。 「愛してますよう。ミレイナ、レジェッタさんのことが大好きです。誰よりも大好きですぅ」 ティエリアには失恋したけど、リジェネにアタックをかけ続けていたミレイナは泣きまくる。 「愛は・・・・・・どうなるかなんて、誰にも分からないね」 ミレイナを抱きしめて、触れるだけのキスをしてから、リジェネは彼女を外に追い出した。 「レジェッタさん!?」 「一人にして!」 レジェッタさん!!私、あなが好きです!!」 「一人に・・・・してくれ」 二人は、扉ごしに涙をこぼす。 ああ、リボンズ。 僕は、新しく人を愛していいのだろうか。 イオリア。このゼロの体でも、ぼくは愛を生み出せるだろか。 ああ。 壊したい。 愛されたい。 壊したい。 愛されたい。 愛したい。 誰か、教えて。 ***************************** リジェ・・・ミレ! カオス!!! |