新年(魔女と魔王シリーズ)








「はい、お年玉ですよ、小さなお兄様」
「ありがとう、ナナリー」
5歳のルルーシュは、皇帝ナナリーからお年玉をもらうと、大切にしまう。
お金に困ってはいないが、ナナリーは長く日本で暮らしていたせいがあり、お年玉を年下の者に配るくせがあった。
小さなユーフェミアも無論もらった。
「私からもお年玉だ、ルルーシュ」
ルルーシュの母親であるC.C.が、お年玉をルルーシュに渡す。
「ありがとう、C.C.」
子供らしい笑顔で微笑む。
「僕からもお年玉だよ、ルルーシュ」
「ありがとう、スザク」
21歳になったナナリー、そして23歳になったスザク。
ルルーシュは一度死んだ。
ゼロレクイエムのときに、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとしての人生は、ゼロによって殺され、終わりを告げた。
それがなんの悪戯が、C.C.の肉体に宿ったルルーシュの子供に、ルルーシュの人格が芽生えてしまったのである。
まさに、魔王。
死してなお、復活するとは。
ナナリーとスザク、C.C.以外にその事実を知る者はいない。
ルルーシュは、今は亡きルルーシュ皇帝の子供ということになっている。母親はC.C.で、皇族として暮らしている。
失うはずだった、未来。
神の悪戯で、小さな体で蘇ったルルーシュ。
その奇跡を、ナナリーの存在とC.C.を愛せるということで、心から謳歌する。
「ナナリー、C.C.、愛しているよ。誰よりも愛しているよ。スザクも愛している」
ルルーシュは、花のような笑顔を零す。
「私も小さなお兄様を愛しています」
「無論、私も愛しているぞ。なにせ、私はお前の恋人で母親なのだからな」
「僕も愛しているよ、ルルーシュ。大切な友人だ」
スザクは、もうユーフェミアのことでルルーシュを責めることはない。
ルルーシュは、受けるべき罰をその命で贖ったのだ。
もう、これ以上罰を受ける必要はないだろう。
ルルーシュが笑う。
ナナリーが笑う。
C.C.が笑う。
スザクが笑う。

なんて、幸せ。

ルルーシュは、ナナリーに抱きつく。ナナリーは小さなルルーシュの体を車椅子の上に乗せる。
ルルーシュはナナリーにキスをする。
もう、妹だという禁忌などそこには存在しない。
愛しているのだ。
「熱いことだな」
ルルーシュは、手を伸ばしてC.C.の緑の髪を掴む。
「どうした?」
C.C.が優しい顔で、ルルーシュの頭を撫でる。
背伸びして、C.C.にもキスをする。
スザクにも。
「まぁ、小さなお兄様ったら」
クスクスと、ナナリーが笑う。
「もう、誰も離さない。ナナリーもC.C.もスザクも。俺のものだ」
「随分と、傲慢だな」
「一度全て失ったんだ。傲慢になってもいいだろう」
「私も、小さなお兄様を離しません」
ナナリーが愛しそうに、ルルーシュの頭を撫でる。

なんて、幸せ。
家族。
愛。
なんて、幸せ。
失ったはずのものを、もう一度手に入れた。
ギアスの力は失ったけれど。
もう、ギアスの力など必要ない。
ほしいのは、ナナリーとC.C.とスザクだけ。
他には何もいらない。

ルルーシュのアメジストの瞳が、宝石のように輝くのだった。