絵本(魔女と魔王シリーズ)








「C.C.、こんなものいらないぞ」
小さなルルーシュが、贈り物として贈られてきた絵本を手に頬を膨らませていた。
「それはユーフェミアからのものだぞ」
「ならいる」
即座に態度を変えるあたり、どうしたものか。
小さなルルーシュは昔から、猫かぶりだ。そう、ルルーシュという皇子として生れつき、父に捨てられた時から本心を大人に見せないようになっていた。それは年をおうごとに増して、最終的にはゼロという仮面となった。ゼロとしていきながら、ルルーシュというごく平凡なアッシュフォード学園の生徒としてふるまう。
あれほどの猫かぶりぶりは、ルルーシュの人生でも最大のものだろう。

「ルルーシュお兄様」
「ユーフェミア!」
噂をすれば、なんとやら。
コーネリアがユーフェミアを抱いて、アリエス宮にやってきたのだ。
「すまないなC.C.、ルルーシュ」
「いや、歓迎するよ」
C.C.もうけっこうな猫かぶりだと小さなルルーシュは思う。小さなルルーシュの母親として、きちんと皇族の礼儀作法も身につけて周りと接している。放浪が好きなC.C.にはありえないことだが、息子でありそして愛しいルルーシュの精神を宿す小さなルルーシュと一緒に生活するためには仕方ないことなのかもしれない。
「ルルーシュお兄様、その絵本気に入ってくださいました?とてもよいものなんですよ」
コーネリアとギルバードの間に生まれたユーフェミアと名づけられた皇女は、本当に死んでしまった亡きコーネリアの妹でルルーシュの妹でもあるユーフェミアその人にそっくりだった。
幼い頃の容姿をそのまま鏡に映したような姿をしている。
彼女の存在が、コーネリアを救ったのは言うまでもないだろう。妹を溺愛していたコーネリアは、女の子が生まれたら絶対にユーフェミアと名づけようと心から決めていた。天は、子供にユーフェミアそのものであるような容姿に性格を恵んでくださった。
「ユフィ、私はこれでいくか、あまりルルーシュとC.C.を困らせるのではないぞ」
「はい、お母様」
小さなユーフェミアは微笑んだ。

その綺麗な微笑みに、小さなルルーシュが涙を零した。
「どうしたの、ルルーシュ!」
母親がいなくなったことで、お兄様という敬称は消えてしまった。
「・・・・・・ユーフェミア!」
小さなルルーシュは、ユーフェミアを抱きしめる。
「ルルーシュ?」
そう、ルルーシュはかつて、妹であった皇女ユーフェミアを手にかけた瞬間のことを思い出していた。
「もう、絶対にあんなことにはならないから。俺が、お前を守るから」
「ルルーシュ・・・・」
C.C.は言葉もなく、二人を見守る。
「うえーん」
小さなルルーシュの涙を見て、小さなユーフェミアまで泣き出してしまった。

「あらあら、どうしたのですか二人とも」
隣の部屋で執務をしていた皇帝であるナナリーがやってきて、二人に優しい眼差しを向ける。綺麗な薄い紫の瞳。
小さなルルーシュも小さなユーフェミアも、大好きな皇帝に抱きつく。
「ナナリー、お前も俺が守るから。もう絶対に、失いはしない」
「お兄様・・・・」
ナナリーは小さなルルーシュを抱きしめた。同じように、小さなユーフェミアも抱きしめる。
「安心してください、小さなお兄様、それに小さなユーフェミア。私が皇帝である限り、私が二人をお守りします」
「私もだ」
C.C.が、オレンジにかじりつきながら、ナナリーの隣に立つ。

もう二度と、愛しい存在を失いたくない。
そう、ゼロレクイエムのようなことはもう二度と起こらない。
「絵本がありますね。読んであげましょう」
ナナリーが絵本を読み出す。
その絵本は、平和な世界に住むお姫様と小さくなってしまった皇子様の物語であった。

まるで、今のナナリーと小さなルルーシュを描いたような物語。