家庭教師の授業を受ける小さなルルーシュ。 次は、芸術の時間。 はっきりいって、小さなルルーシュに芸術の心はない。もともと、ルルーシュであった時点から、芸術というものは得意ではなかった。そのかわり家庭科はトップクラスの成績を誇るほどに成績が良かったけれど。 「さぁ、ルルーシュ様、ここにクレヨンがありますので、なんでも好きな絵を描いてくださいませ。そうですね、お花なんてどうでしょうか」 ちょび髭を生やした家庭教師は、元貴族で、侯爵の地位にあった。貴族制度は廃止にされたが、今まで何百年も培われてきた貴族というものがすぐになくなるというわけではない。 コネはあるし、それに平民に戻ったとしても、普通の平民と違って財力がある。 少年皇帝ルルーシュは、貴族制度を廃止した際に、貴族たちが蓄えていた財力を(たとえば領地など)返還したが、それでも貴族たちはいろいろな方法でお金を蓄えていた。 確かに貴族制度がなくなり、貴族と平民の差はなくなった。 だが、本当になくなるにはもっと長い年月が必要だろう。 ルルーシュはため息を零す。 クレヨンを手に、キャンバスに絵をかき出す。 体育ほどではないが、芸術などに慣れ親しむよりも家庭科、ようは家事が大好きだったルルーシュ。 5歳とは思えない素晴らしい能力で、小さなルルーシュは絵を描く。 「家庭教師、水彩絵の具が欲しい。クレヨンでは色が限られている」 「まぁまぁルルーシュ様。只今お持ちいたします」 ちょび髭の家庭教師は、水彩絵の具とパレットと筆を持ってきた。 とれも嬉しそうだ。それはそうだろう。芸術の能力が人並みであっても、5歳ということを考えると神童といっても差し支えないのだから。 いろんな絵の具のふたをあけ、キャンバスにまずは水をにじませて、その上からぼかすように色を塗って重ねていく。 「うううう・・・・・」 小さなルルーシュは、色をぬっていくごとにやる気がうせていった。 こんなはずでは。 ルルーシュが描いたのは、母親であるC.C.と皇帝であるナナリー。 を、キャンバスに描いたはずだった。 「まぁまぁルルーシュ様、なんてお上手な。C.C.様と皇帝陛下ですね」 家庭教師は分かってくれた。 ちゃんと、特徴をとらえているので分かるだろう。車椅子の細部まで着色して、ナナリーの髪も目の色にも忠実に再現していたし、C.C.もだ。 でも、18歳が描いた、と考えるとちょっと微妙な代物だった。 でも、今のルルーシュの体は5歳。とても素晴らしい作品に、家庭教師は涙を流した。 「なんて素晴らしい作品ざましょ!さっそく、皇帝陛下に見てもらいましょうね。C.C.様にも」 こうして、ルルーシュの意とは別に、作品はナナリーの元に贈られた。 「あら、かわいい」 ナナリーは手を合わせて喜んだ。 「ルルーシュ様は、芸術の才能もおありのようです」 家庭教師が恭しく、皇帝に作品の説明をする。 「これは・・・・ひまわりかしら?」 花畑にC.C.とナナリーがいる遠近法まで取り入れた絵。 「そ、そうだ、ひまわりだ」 小さなルルーシュは、ひまわりだと決め付けた。本当はたんぽぽを描いたのだが。 「C.C.さんが持っているぬいぐるみは、熊ですね?」 いや、子豚さんなんだが・・・・。 「そ、そう、テディーベアだよ、ナナリー」 小さなルルーシュが、皇帝のことを呼び捨てにすることを咎める者は誰もいない。皇帝自らがそのように取り計らっているからだ。 「小さなお兄様、素晴らしいわ。後で、C.C.さんにも見せなくては」 C.C.は、その絵を見た瞬間吹き出したという。 |