プール(魔女と魔王シリーズ)








「はい、ルルーシュ様、そこで腕を大きく伸ばして〜」
体育教師が、小さなルルーシュにラジオ体操をさせる。
その横でC.C.が面白そうにまねをしていた。その隣では、さらにナナリーが車椅子に乗りながらラジオ体操をしている。

「そうです、陛下、その動きを忘れずに!」
「はい」
「C.C.様も、その動きです」
「あ〜〜」
小さなルルーシュは、まるで地獄にいるような間延びした声を出す。
何が哀しくて、早朝からラジオ体操なんてしなければならないのか。
それは、ナナリーが出した「ラジオ体操は健康になります案」のせいだった。愛しい妹のためなら、たとえ眠くても。
あくまで自主性なので、するしないは自由だったが、ナナリーはやる気マンマンだ。
C.C.はいつでも暇人なので、ルルーシュを見ては笑っていた。

「ああああああ」
小さなルルーシュは叫ぶ。
そう、だって彼は体育が2。
もっとも科目の中で悪かった。動きだって鈍い。
もうすぐプール開きだという。温室プールはあるが、小さなルルーシュは泳いだりしない。
特別に作られた皇族用のプールはナナリーが設計したものだ。
足の不自由な彼女は、プールなどで足の筋肉が衰えないようにする必要もある。
「小さなお兄様、もうすぐプールに入れますね。一緒にカニ歩きしましょうね」
カニ歩きとは、プールにそったうきバーにそって、カニのように横に歩くというか浮きながら動くものだ。
ナナリーは泳ぐことはできないので、浮き輪は欠かせない。
もちろん、小さなルルーシュにも。

「私は、もう泳いでこよう」
「まぁ、もうですか?温室プールがあいてますが」
「陛下、水着はもうご用意しております」
体育教師が、水着をもったメイドを呼ぶ。
「あら。じゃあ、せっかくですから泳ごうかしら」

こうして三人は、体育教師監視の下で泳ぐことになった。
「楽しいですね、小さなお兄様」
浮き輪に乗ってプカプカ浮いてるだけのルルーシュの顔は真っ青だ。
同じく自動前進機能つき浮き輪に乗っているナナリーは、心から楽しんでいる。
「知っているかナナリー。ルルーシュは、体育は2、15メートルしか泳げないのだぞ」
「な、C.C.!!」
「あら、私と一緒ですね。私も泳げません」
それは、ナナリーの足が不自由だからだ。
ルルーシュは皇族きってのかなづちだった。

プール開きの日が待ち遠しい。太陽の下でプールに入ると、気持ちいいものだ。
ルルーシュは水鉄砲を取り出して、魔女C.C.にこれでもかというほどに水をうちまくった。
だって、プールが嫌いだから。