「ゼロを捕まえて参りました」 スザクに髪を痛いほどひっぱられ、拘束服をきせられたルルーシュは目の前にいる最も憎むべき敵にギリと歯軋りを噛んだ。 神聖ブリタニア皇帝にしてルルーシュの実の父親。 は、頭に白ブリーフをかぶり、マントの下も黄ばんだ白ブリーフ1枚の姿でニヤリと笑んだ。 「これはこれは、不肖のわが息子。白ブリーフを拒み続ける唯一の皇子、ルルーシュではないか」 「久しぶりです父上。相変わらず白ブリーフがお好きですね。その下着のブリーフを洗濯したのはいつですか?相当黄ばんでますよ」 ブリタニア皇帝は、白ブリーフ愛用で有名である。皇族の皇子たちにも強制して白ブリーフをはかせているくらいだ。唯一シュナイゼルだけは、実力があるせいかブリーフ制度を免除してもらっているらしいが。 無論国民にも白ブリーフを推奨している。 「そんなことはどうでもいい。愛しいルルーシュよ!白ブリーフを受け入れろ!そうすれば今までのゼロとしての罪、見逃してやっても良い」 「誰が、白ブリーフなど!!!」 「全く困ったオバカさんだ。色気づいて黒ビキニなぞ着用しよって。マリアンヌ瓜二つの美貌が台無しだ」 母親と白ブリーフのどこが関係あるのだろうか。 皇帝はバサリとマントを翻す。股間はもっこりだ。 「白ブリーフこそ世界の富!白ブリーフこそ繁栄の証!!フハハハハハハハ!!!」 「スザク、放せ!」 「だめだよ、ルルーシュ。大人しく白ブリーフを受け入れるんだ。それが、ゼロとしての罪」 「バカが!どうしてゼロとしての罪が白ブリーフで終わるんだ!!」 最もなルルーシュの発言に、しかしスザクはルルーシュの左目のギアスを片手で覆ったまま、右目の紫水晶の瞳をのぞきこむ。 「これで、終わりだね、ルルーシュ。さようなら」 「くそっ」 スザクは酷薄な笑みを刻んでから、皇帝に向き直った。 「陛下。ゼロを捕まえた功績として、僕をナイトオブラウンズに」 「ほう。自ら白ブリーフの代名詞ナイトオブラウンズを望むか。面白い」 ナイトオブラウンズは、皇帝直属のナイトメアを駆使する、騎士部隊である。 構成員は、男であれば無論白ブリーフを愛用しなければならない。それが絶対運命だ。 「親友を売るのか」 「そうさ、売って僕は出世する」 「いかん!!ルルーシュは売らんぞ!!父たる皇帝のものだ」 ああだこうだ。もうわけがわからない。 「ルルーシュよ。お前には、まだ生かしておく価値があるっていうか主人公だし生きなければならぬ。全てを忘れ、今まで通りの平穏な世界を生きるがいい」 皇帝の瞳がギアスに変わる。 両目。 ギアス!!! ルルーシュは、瞳を閉じようとする。させまいとするスザク。 ギアスが瞳を通じて脳内に浸透する。 そして、ゼロとしてのルルーシュは死んだ。 ぐったりと横たわるルルーシュに、皇帝は歩みよりマントの下から取り出した綺麗なハンカチで額から流れていたルルーシュの血を拭い去る。 「この拘束服に着替えさせたのはお前か」 「はい」 皇帝の問いに、スザクは素直に答えた。 「よもや、無理やりか」 「いえ、銃を構えて大半はルルーシュ自身に着替えさせました」 皇帝にとってルルーシュは大変貴重な存在である。その白い肌を例えゼロであったとしても他の男に拝ませるなど万死に値する。 「顔に傷をつけるなど…いいか、今後は絶対にルルーシュの顔に傷をつけるな」 「イエスユアハイネス」 「あれ…ここは?俺は一体何をしていたんだ」 「きづいたか、少年よ」 公園の、ベンチに横たわっていたルルーシュに、背後から皇帝の声が降ってきた。 「ええと」 うんこみたいな髪型を無理やりウィッグでサラサラのストレートにして、サングラスをかけ、Tシャツにももひき姿の皇帝。 「貧血か何かではないのかね、少年。道端で倒れていたのをここまで運んだのだよ」 「それは失礼をしました。ありがとうございます」 ルルーシュから奪った記憶は、ゼロとしての記憶。皇子としての記憶。ナナリーの記憶。 皇帝は致命的なミスを犯していたことに後になってきづいた。 ルルーシュに、大人しく家出をやめさせて白ブリーフを愛用していたと記憶をうけつければよかったのだ。 そうすれば、愛しいルルーシュは白ブリーフ変態めと、幼少の頃のように父親を足けりにしたりせず、純情な皇子として手元に戻ってくるだろうに。 まぁ、反抗期な息子もかわいいもの。 「気をつけたまえ。また、いずれあうこともあるだろう」 どこからとりだしたのか、黒いマントをはおり、頭に白ブリーフを被った皇帝に、ルルーシュの顔が引きつった。 「…ヘンタイだ……俺、何もされなかったかな」 ルルーシュは、幼い頃から女の子のような愛らしい容姿のせいで、兄や父に可愛がられまくり、また危ない目に何度もあいそうになったこともある。 高校生として育ってからも、時折変態に痴漢にあったりして、かなり困っているのだ。 体育が苦手なので、威力のある足蹴りで撃退してきたが。 去っていく変態の恩人(?)の後姿を、ルルーシュは完全に無視して彼は自分の体に異常がないかを確認していた。 あ。 そういえば、さっきのおっさんTシャツのうえからブラジャーしてた・・・。 ルルーシュはあんな変態の知り合いにだけはなりたくないとはっきり思った。 「早く、帰らないと、ナナリーが心配して???」 大空が青い。 ナナリーって誰だ。 何か大切なものがぬけている気がする。 少女の笑顔がよぎる。 シャーリー? ちがう。 笑顔。 そうだ。 少年の笑顔。 弟だ。 「早く、帰らないと、ロロが心配しているかもしれないな」 服装は、いつの間にかいつも来ている私服にかわっていたことにルルーシュは知らない。 着替えさせたのが皇帝であることも、ポケットに白ブリーフを入れられていることも。 「本当にあれでよかったのですか」 「愚問だぞ。さて、本国に帰るか」 スザクの問いを無視して、皇帝はおならをブッとこいた。力みすぎて中身まででた。 ズサクは異臭に顔をしかめたが、何も言わなかった。 僕は、ルルーシュという友達を失った。 そして、変態だという皇帝のナイトオブラウンズになった。 白ブリーフ、はっきりいってはきたくない。 |