のそのそ。 もぞもぞ。 朝、ベッドの中で蠢いているルルーシュを、C.C.が呆れたように見ていた。 「いい加減起きろ」 「眠い・・・・」 惰眠をさらに貪ろうとする小さなルルーシュを、C.C.はつまみあげる。 がしっと、布団にしがみつくルルーシュ。 「意地汚いな、お前は」 「寝る!もっと寝る!!」 昨日、夜中までシュナイゼルと賭けチェスをやっていた。 5回勝負して、勝敗の多かった者の勝ち。 ルルーシュは見事に負けた。 3勝2敗だった。 「あと・・・・あと少しだったのに!!あと1勝あれば、シュナイゼルに勝てたのに!!」 悔しさで、今も後悔している。 何故、賭けチェスにしたのだろうかと。 シュナイゼルの悔しそうな顔が一度でもいいから見たかった。今は親戚の皇族にあたるシュナイゼル。昔は実の兄だった。幼い頃もよくこうやって賭けチェスをやって何度も負かされた。 「とうのシュナイゼルだが、もう外にいるぞ」 「ぬおおおおおお!!!俺は猛烈に病気なんだあああああ!!」 ルルーシュは叫ぶ。こんな元気のいい病人がいてたまるか。 「C.C.殿、かわいいルルーシュは起きているかな?」 皇族の衣装をまとい、幾つになってもかわらぬ優雅な美貌を保つシュナイゼルが、部屋に入ってくる。普段は本宮殿で、ゼロに従って皇帝の補佐をしているシュナイゼル。ナナリーの傍にいることもしばしばだ。 ルルーシュが、ゼロに従えというギアスをシュナイゼルにかけた。それは今でも解かれることなく、続いている。ゼロとなったスザクに従い、皇族の代表として、皇帝と共に世界の和平に日々かけまわっている。 昔の野心を持っていた頃のシュナイゼルとは大きくかわって、ただ穏かなシュナイゼル。 小さなルルーシュとの賭けチェスも、笑顔で引き受けてくれた。 シュナイゼルの腕に抱かれ、本宮殿に連れていかれたルルーシュは、にやりと笑った。今度こそ、恥をかかせてやろう。長年の恨み、晴らすべし。 賭けチェスの内容は、負けた方が女装。 ありがちなパターンだ。王道か。シュナイゼルなら、女装も普通に着こなすかもしれないが、困った顔が見たかった。昔、よくこのパターンで女装させられていたルルーシュは、本人も恥を味わえとばかりに、冴え渡った頭でチェスを進めたが、つまずいてシュナイゼルの勝ち。 いつも、この兄に勝てない。 勝てそうで勝てない。 「シュナイゼル、俺は病気なんだ!!」 ルルーシュが、ベッドにしがみついて首を振る。 C.C.がニヤリと笑った。 「シュナイゼル・・・・好きにするといい」 べりっとベッドから引き剥がし、小さなルルーシュをシュナイゼルに渡す。シュナイゼルは笑顔でルルーシュを抱き上げると、本宮殿に戻っていった。 「NO!!!!C.C.の裏切りものおおおお!!」 そんな叫びを残して。 「ほら、ルルーシュ、かわいくなったね。笑顔を浮かべてごらんもっとかわいいから」 女官たちに、フリフリのゴスロリドレスを着させられたルルーシュは、シュナイゼルの満足そうな笑顔の前でムッスーとふてくされていた。 「君の大好きな、皇帝のナナリーも呼んだからね」 オーマイガっ。 人生が終わる瞬間。 「あら、小さなお兄様、なんて愛らしい」 アンティークドールのように美しいルルーシュを、ナナリーは抱き上げる。 「似合っているだろう、ナナリー?このドレスは私が選んだんだよ」 「シュナイゼルお兄様、センスがありますね。小さなお兄様はこういったドレスが一番似合います」 二人は笑顔で会話を進める。 「記念に、写真でもとろうか」 シュナイゼルの言葉に、ゼロの姿をしたスザクが三人を写真におさめてくれた。 「くくく・・・・かわいいぞ、ルルーシュ」 人生が終わる瞬間、その2。 本宮殿に足を伸ばしたC.C.の前で、ルルーシュは女装姿を見られてしまった。アリエス宮に帰る時は着替えて帰るということになっていたのに、C.C.はわざわざルルーシュの女装が見たくて足を運んだのだ。 「・・・・・・・・お母様は粗雑で、こんな服は馬子に衣装ですからね」 ルルーシュは作り笑いを浮かべて、C.C.に普段では出さない皇族として教育された皇子の口調で話す。 「なにおおお!?私だって、ゴスロリドレスは似合うんだぞ!!」 「だったらお前がこれ着ろ!!C.C.!」 二人は、お互いのほっぺをひっぱりあう。 「このルルーシュめ!毎日ドレス着させるぞ」 「この魔女め!お前なんて雑巾がお似合いだ!!」 「二人とも、いつでも仲がよいですね」 「そうだね」 ゼロであるスザクも、頷く。 結局、その日はゴシックドレスでC.C.にお持ち帰りさせられた。 次の日、着替えに違うゴシックドレスを用意されていて、ルルーシュが逃げ出したのはいうまでもない。 |