君とまた会う








「ルルー!」
「なんだ、シャーリーか」
ルルーシュは、寝ぼけ眼で目をこすりながら、腰に手を当てて怒るシャーリーを一瞥すると、また寝ようとする。ゼロとしての二重生活のせいで、すっかり睡眠不足だ。
「もう、ルルってば!そんなに寝てばっかりだと、いつか大切なもの失っちゃうよ」
「失うものか。俺が大切だと思うのはナナリーだけだ」
「もー、またそんなこといって」

そんなシャーリーとの別れがくるなんて、思ってもいなかった。
失って、はじめて気づく。大切だったのだと。友人ではなく、一人の少年としてルルーシュはシャーリーのことを好きだったのだ。
「シャーリー・・・ははは・・・もう、戻らないのにな」
シャーリーの笑顔は、きっと永遠に戻ってこないだろう。
ルルーシュは、泣かなかった。でも、心の中でいっぱい泣いていた。
「シャーリーシャーリーシャーリー!!」
叫ぶルルーシュを、C.C.はそっとして、何も言葉をかけなかった。今は、一人にしておくのが最善だろう。

そして、ブラックリベリオン。ルルーシュの記憶は皇帝によって改竄され、そして学園の者も生徒会のメンバーを除いて皆変わっていた。そして生徒会のメンバーもまた、記憶を改竄されていた。
やがて、C.C.との出会いにより、魔王は復活する。再び、この世界に魔人が息を吹き返した。
ゼロとしての2重生活がまたやってくる。でも、今度は監視されている。記憶を取り戻していると気づかれないように細心の注意を払いながら毎日を過ごした。

「ルル、隣いい?」
シャーリーは頬を赤らめて、食堂でルルーシュの隣に座ると自分で作ったというお弁当の包みをあける。
ルルーシュは、箸でシャーリーのお弁当の玉子焼きを食べると一言。
「だしがきいていない。こげが多すぎる。焼きすぎだ!」
「もールルー!勝手に食べないでよ!」
怒るシャーリーにどつかれながらも、ルルーシュは幸せそうだった。
失った、彼女の微笑みがまた戻ってきた。もう永遠に手に入らないと思っていたシャーリーの笑顔が、また自分に向けられるようになった。
「ほら、俺も今日は弁当だ。すきなの食べるといい」
「え、いいの、ルル!?」
シャーリーはとても嬉しそうだった。なんたって、家庭科が大得意のルルーシュ。ルルーシュは容姿端麗頭脳明晰、おまけに家事も得意で・・・体育だけは、不得意だけど。そんなルルを、シャーリーは誰よりも好きだった。恋人ゲームで、ルルーシュの彼女になったように、思えた日々。
ほんの僅かの数日の出来事。
本当に幸せだった。デートだってした。ルルーシュは、優しくてかっこよくて、体力はないけど、でも強くて。
でも、すぐにそれも壊れた。
ロロの手で、壊された。
「シャーリー!だめだ、シャーリー死ぬな!!」
ルルーシュが、シャーリーのために流す涙はこれが最後だろう。
もう、その銃で撃たれた傷は助かりそうにないと分かりながらも、携帯電話を取り出して救急車を呼ぼうとする。
「いいの。私のことはいいの・・・ルル・・・大好きだった。ずっとずっと、好きでした。私は」
「シャーリー!!」
ルルーシュは目に涙をためて、シャーリーを抱きしめる。
「死ぬな!シャーリー、俺も、お前のことが大好きだ!だから、死ぬな!!」
「ルルの手・・・あったかい・・・・」
血が、彼女の体から流れでていく。命が削れていく。
「シャーリー、死ぬな!」
ギアスで何度も命令をかけた。
だが、一度ギアスをかけたことのあるシャーリーには通用しない。
「くそ、このギアスの役立たずが!シャーリー!!」
ルルーシュは絶叫した。
「シャーリー!好きだ!ずっと、好きだった。大切だよ、お前も大切だ!だから死ぬな、俺をおいていくなーー!!」
シャーリーは、息を浅く吐いた。
「嬉しい・・・・ルルに、ルルと両思いなんだ・・・嬉しい・・・」
シャーリーは涙を流した。
「ねぇ。ルル、お願いがあるの」
「なんだい、シャーリー」
もうあとわずか数秒で、シャーリーの命は尽きる。
「キス、して。また会える、約束の、キス。さよならじゃないの。また、会える、から」
ルルーシュは、シャーリーの唇にキスをした。し終わった後、もうシャーリーは動かなかった。目を瞑ったまま。
「しゃ・・・・り・・・・・シャーリーー!!」
絶叫する、ルルーシュを置いて、シャーリーはこの世から他界した。
そして、ルルーシュもゼロレクイエムによって他界する。

「やっと会えたね、ルル。今度はずっと一緒だよ」
「ああ。シャーリー。待たせたね」
ルルーシュは天使の翼を生やしたシャーリーを抱きしめて、一緒に世界に溶けていった。魂は常に二つ一緒に。
「大好きだ、愛してるよ、シャーリー」
「私もよ、ルル・・・・」
二人は時をこえて、いつかまたこの世界で再び巡り合うのかもしれない。
それは、いつの世界なのかは、二人だけが知っている。二人で、いつかきっと、この世界で息吹をあげるのだ。