ルルーシュは、ゼロの仮面に自分の血をつけた。 わざと。 剣によって深くさされたルルーシュ。 ずるずると、体はゼロから離れ、そのまま落ちていく。 パレートの車の下、ナナリーのいる場所へ落下していく体に力は入っていない。何回か、吐血を繰り返す。 「俺は・・・・世界を壊し、世界を・・・・造る・・・・」 ゼロにさされ、鮮血を巻き上げながら、ルルーシュはぼんやりと空を見上げた。 そう、昔もこんな空を見ていたな。 子供時代、ナナリーとスザクと三人で。 「お兄様?」 「・・・・・・・ナナリー・・・すま・・・ない・・・」 聞き取れないくらいの小さな声で、ルルーシュは2ヶ月間酷い仕打ちをした実に妹に謝った。 ナナリーは、ルルーシュに触れた瞬間、全ての記憶を読み取り、そしてこの兄の死も、皇帝となったことも、皇帝として最初はよき君臨者であったのを、世界中の憎しみを集めるために非道で残忍な道をとったのも全てルルーシュのゼロレクイエムという計画のうちだということを知る。 「いやああああ、お兄様、お兄様!!!」 ナナリーが、悲鳴をあげて兄の体に縋りつく。 「いやああ、死なないで、死なないでください!私は、お兄様がいればそれだけで良かったのに!!」 ルルーシュは目を閉じて動かない。 「ぬおおおお、死ぬなルルーシュ!わしをおいていくつもりかあああ」 黄ばんだブリーフを被った仮面の男が、ルルーシュのとこまでやってくると、ナナリーの反対側から涙を大量に零してルルーシュを揺さぶる。 「うおおおおおおおおお、白ブリーフがうなる!王子様のキスでお姫様は目覚めるのだああああ!!」 ぶちゅ!! ついに、キスされて、ルルーシュは黙っていられず、目をかっと開けた。死に掛けていたのに。 「・・・・・・・・・、何をするこの変態!!!」 「お、お、お兄様!?」 「あ・・・・いかん。世界を壊し、世界をつくる。バタッ」 「おおおルルーシュ!なんと嘆かわしい。世界のためにあえて犠牲になるというのか。白ブリーフを被るときが今きた!」 黄ばんだ白ブリーフ仮面は、黒いマントにもっこりの黄ばんだ白ブリーフ一枚をはいただけの姿だった。頭に白ブリーフを被ったウンコ巻きの髪型の男。 声の低さからも、あの男しかいない。 そう、98代皇帝シャルル。 美しい名前とは裏腹な汚い容姿の皇帝だった。 ブリタニアの民に白ブリーフをはくことを強制し、ナイトオブラウンズは謁見の場などでは白ブリーフを頭に被るようにした。それでどれだけナイトオブラウンズが泣いたことか。 スザクももちろん白ブリーフをはいて、白ブリーフを頭から被った。なきながら。 「皇帝しゃるるうううの必殺技!ザオリク!!!」 ぱぁぁぁと、光が満ちる。 その場から、ルルーシュとナナリー、白ブリーフの男は消えていた。 後に残されたのはルルーシュの亡骸だけ。 「今こそ、白ブリーフを被るのだ我が息子よ!」 「だ、誰かかぶるかあああ!!!」 「お兄様、傷が、傷口が開いてしまいます!!」 「ごほごほっ」 ルルーシュは吐血した。 残してきたのは替え玉の死体だ。ルルーシュそっくりに整形させたご臨終前の若い青年が都合よく死んでくれたので、それに皇帝の衣装をきさせ同じような傷をつくって血のインクをばらまいて、高速でシャルルは愛しいルルーシュとナナリーを両手に抱きかかえると、ヘリに乗り込んだ。 「さぁ、ルルーシュ。白ブリーフを被るときがきたのだ」 「ぎ、ギアスを・・・」 「無駄だ。一度ギアスをかけた者にはギアスは通じない」 「それより、何故生きている!?死んだんじゃなかったのか!?」 「ふ、白ブリーフは永遠だ」 ヘリに同乗していた医師によって、応急処置を施されながら、ルルーシュは顔を顰めた。 死ぬ、はずだったのに。 なのに、なぜ邪魔をする。 「なぜ、邪魔をする。俺は、もう世界には必要ないんだ」 シャルルは、新しい白ブリーフをルルーシュの頭に被せた。 「俺はもう・・・・世界には、いらない」 「なら、いらなくなった父さんと母さん、マリアンヌと一緒に暮らそう」 「父上・・・・って、白ブリーフかぶせんなあああ!!」 ルルーシュは、かぶせられた白ブリーフをシャルルの顔に投げつけた。 「母上まで!?生きて、いるのか?」 「そうだ。ははは、白ブリーフが救ってくれたのだ」 「どんな白ブリーフだ!?」 「お兄様、よかった!!」 ナナリーは涙を零して、兄が生きている事を喜んだ。 「そう、ナナリーが次の皇帝になりなさい。私とマリアンヌとルルーシュは、そうだな、宮殿の離れでひっそりと住もう。ナナリーも遊びにきなさい」 「はい、お父様!!」 「白ブリーフはあああ、永遠なりいいいいい!!!」 ついに、白ブリーフの手に落ちたルルーシュ。 その日から、白ブリーフとの本当の戦いが始まった。 黄ばんだ白ブリーフを被る男は、黄ばんだ白ブリーフをルルーシュに被せようとして、蹴られてヘリの中でもだえている。 「お兄様、凄いですわ!!」 「げふげふ・・・・」 吐血しながらだけど。 この後、ルルーシュはブリタニアの病院で大手術を受け、入院したのち、シャルルの言葉通り、宮殿の離れに住むことになった。 「おのれれええ、なんだこれは!!」 ルルーシュは激怒する。 離れの屋敷は、白ブリーフにまみれていた。 着替えだと渡されたのは、白ブリーフのみ。しかも皇帝のお古で黄ばんでいる。臭い。 「こんなもの、はけるかあああ!!」 黄ばんだブリーフを投げ出して、ルルーシュはいつもアッシュフォード学園の制服姿だった。 「ルルーシュ、朝食ができたぞ!」 シャルルが朝食をつくるなんて。 皿に並んでいたのは、全部黄ばんだ白ブリーフ。 「もういっぺん殺す!!!!」 ルルーシュが父をおいかけまわす。釘バットを持って。 「ぎゃあああああ」 「あらあら、仲がいいのね」 マリアンヌがうっとりと微笑む。肉体を、取り戻したらしい。最先端科学によるクローン体らしい。 「ええ、お兄様はお父様ととても仲がよいんですの」 皇帝となったナナリーは、暇を見つけては秘密の館にやってくる。 これが、ゼロレクイエム。 いや、黄ばんだ白ブリームレイクエイム。 ああ、白ブリーフ。 白ブリーフよ永遠なれ。 |