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吹きすさぶ風に、ルルーシュは髪をかき上げた。
隣を歩くC.C.は町を興味なさそうに見回している。今日泊まれそうな宿を確保してから、ルルーシュはC.C.を置き去りにして出かけた。
この町にくるのはもう、100年ぶり近くになるだろうか。
変わりすぎた町並み。
昔はもっと人口が少なかった。大分都市化が進んでしまった。
そのまま、町を過ぎ去って森の中を進む。
ここだ。
もう、そこにはルルーシュが作った木の十字架さえ朽ち果てて、何もなかった。
鬱蒼とした緑に生い茂られて、ただ少し土が盛り上がっただけの場所。何もない。草が生えて、隣には木が生えて。
崖に面した、ただそれだけの場所。
「なぁ、お前は寂しいか、ロロ?」
100年ぶりになる墓参りに、ルルーシュは哀しそうな瞳で、朽ちてしまった墓を見下ろした。
かつては綺麗にしてやったのだが、もう何年もC.C.と彷徨うように、コード継承者として世界中を旅した挙句、ふと思いついたようにこの町にやってきた。
「寂しいだろうな。こんな場所じゃあな」
ナナリーは、ブリタニア帝国の皇帝が代々眠る墓地に眠っている。
シャーリーも、きちんとした墓地で眠っている。他の友人も知り合いも、スザクさえもきちんとした墓地で眠りについている中、一番粗末なロロの墓を見下ろす。
「また、くるよ」
そこらへんに生えていた花を適当に摘み取って、盛り上がっただけの大地の上に置くと、風が吹きぬけた。
サラサラと零れていく花弁と、遠い町並みを見下ろして、ルルーシュは後ろにいたC.C.に微笑んだ。
「なぁ。お前は、眠る時どっちがいい?きちんとした墓か、それとも人に忘れ去られるような、朽ちた墓か」
「どちらもいらない」
「何故?」
「墓などいらない。そこにきっと、私は眠らないから」
「そうだな。俺たちに永遠の眠りなどこない」
夕焼けに沈んでいく町を見下ろして、二人は風に髪を靡かせながら口付けた。
「いつか、眠りたいと思うか?」
「お前と一緒なら、眠りたい」
「そうだな。一人は嫌だ」
真っ赤に染まっていく空。風のざわめきだけが、たえず耳を打つ。
この世界で再び目覚め、コード継承者として生きてもう何百年になるだろうか。
「次は、どこへ行く?」
「どこへでも・・・そうだな、桜が見たい」
「もうそんな季節か。日本は」
「日本だったか。そんな名前だったかな、あの国は」
「確かそうじゃなかったか。今はなんだった?」
かつてのエリア11の名前を、二人は口にする。
今は超合衆国の一部となった国の名前を。
二人は夕暮れに背を向けて、手を繋いで去っていく。
また、いつかここにくるよ。
ルルーシュは、少しだけ墓をふりかえり、心の中で黙祷した。
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