カタンコトンカタンコトン。 荷物の旅行かばんを上に乗せて、ただひたすら窓から移り変わっていく景色をみやる。 かつてはEUとして存在したヨーロッパ。 そこにを走る鉄道に、意味もなくルルーシュとC.C.は乗り込んだ。 地平線の向こう側まで広がる大地、中世の町並みを色濃くのこした名もない町、それから森、アルプスの山々が見える湖のほとり。 いろんな風に景色が移り変わっていく。 「終点までだろう、ルルーシュ」 「ああそうだな。終点まで、いこうか」 この鉄道の終点はなんという駅だったろうか。 数十年前、移動の時に利用した記憶があるけれど、駅の名前まで記憶していない。 記憶していても、ルルーシュのIQが高い頭でさえ風化してしまうほどの長い時間。 その長い時間を、二人は手を繋いで歩いていく。 生命という論理をはるかに超えた存在となった二人。 C.C.は、ただ黙して窓から見える景色を見る。ルルーシュは、僅かに開け放たれた窓から入る風に靡き、翻る C.C.の鮮やかな翠の髪を見つめて、一筋だけ手にとる。 「なんだ」 「お前の髪は綺麗だな」 「お前のほうが綺麗だ」 C.C.は声もなく笑った。 閑散とした二人の世界。 それが、二人が生きる世界。暖かいわけでもなく、だからといって寒すぎるわけでもなく、寄り添うもとこもなくただお互いの手を繋いで前を歩いていく。 「今度、アルプス山でも登るか?」 「体力を使うのは嫌いだ」 「そうだったな。お前はいつも体育の成績が2だったか」 C.C.は面白そうに蒼い空を見上げて、ルルーシュをばかにする。 ルルーシュは、ふと右手に宿ったコードを見て、そして紫色の目を閉じた。 「俺たちに輪廻転生は必要ないな」 「むしろ輪廻転生したいくらいだ」 仏教徒の思想を、二人は永遠に理解できないだろう。 だって、二人は何があってもこの世界から消えない。死なないのだから。 それがコードを刻まれた者の永遠の呪い。 不老不死なんて。夢のように物語では素敵に語られるけど。 でも、実際なってみると、なんて鬱陶しいものなんだと思うくらいに邪魔だ。 今すぐ、この息の根を誰かに止めてもらいたい、そう望むむくらいに。 「ただ。私は満足している。お前を手に入れた。お前を失い、そのまま孤独で歩くはずだった世界に、紫水晶のお前が加わった。それだけで、こんなにも世界は変わる」 列車の窓を閉じる。 そして、ルルーシュは立ち上がると、C.C.の瞳を閉じさせて額に、コードが刻まれた場所にキスをする。 「どこまでも一緒に。魔女殿」 「どこまでも一緒に。魔王殿」 カタンコトン、カタンコトン。 二人を乗せた列車は、時間をかけて終点まで走っていく。 明日もまた、乗ろうか。 こうして移り変わっていく景色をみるのは、嫌いでは、ない。 そんな気がルルーシュにはした。 C.C.は、うとうとと眠り始めていた。 ジャケットを抜いで、肩にかけてやる。 カタンコトン、カタンコトン。 いつの間にか、ルルーシュも窓枠に手をついて、眠り始めるのであった。 |