ルルーシュ君、至急職員室まで







その日、ルルーシュは何事もなくアッシュフォード学園で過ごしていた。
ヴィレッタ先生の体育の授業もさぼることなく参加し、昼にはロロと食事をとり。
午後になって、部活の時間になり、ルルーシュは毎日の如く副生徒会長としての任務をまっとうすべく生徒会室に向かっていた。

「きゃああああああああああああ!!」

廊下ですれ違った女生徒が、悲鳴をあげながら反対方向にダッシュでかけていく。
同じように、悲鳴をあげて男子生徒も走っていく。 怪訝に思ったルルーシュは、まさかブリタニアの軍でも現れたのかと、記憶が戻ったことがばれたのかと走り過ぎ去ろうとしていた一人の女子生徒の肩を掴んだ。
「おい、どうしたんだ」
「ル、ルルーシュ君!そ、その……ダメ、私の口からは言えないわ!とんでもないものをみてしまったのよ!」
女生徒はルルーシュのファンだったのか、いきなり肩を掴まれたことに難色を示すわけでもなく、逆に頬を紅く染めてルルーシュを見つめた。
けれど肝心の答えは詳細には返ってこなかった。
「ごめんなさい、こっちに向かってきてるからそれじゃ!ルルーシュ君も早く逃げて!」
女子生徒は、止めるルルーシュの手の隙間をぬって逃れていく。
ルルーシュにも逃げろと、女子生徒は去り際に促す。

まさか。
まさか、な。

その時、校内アナウンスが流れた。

「ルルーシュ。ルルーシュ・ランペルージ君。至急、職員室まで来てください!!」

そのアナウンスが流れたのは1回きり。
どたばたと、焦っているのが分かる背景の音が混じっていた。

まさか。
まさか、な。

ルルーシュの脳内を白ブリーフが過ぎる。
ルルーシュは頭を左右にふって、その最悪な思考を追い払った。
そして、急ぎ足で職員室に向かう。
そこで目にした光景は、ルルーシュが予期していたものより更に悪化していた。

ブリタニア皇帝が、職員室で頭に白ブリーフをかぶり、その上から向日葵の花をのせ、黒マント1枚でブーンとはしゃぎ回っている姿だった。
そう、黒マント1枚。頭には白ブリーフを被っている。その上に花が飾られていようとあまりあふぉさに上下はないので置いておこう。
肝心なことは、股間はもっこりを通りこして緑の葉っぱ1枚がそえられているだけだった。
いつもの黄ばんだ白ブリーフをはいていない。

はいていない!!!

白ブリーフをはいているだけでも変態すぎるのに、緑の葉っぱ1枚!
無論ピーは葉っぱから飛び出していて、隠す役目になっていない。
おまけに乳首にはニプレスだ。そこを隠して何故下を隠さない!?

「おお、わが息子ルルーシュよ。どうだ、新緑の季節、思い切って衣替えをしてみ」
最後までいわせず、ルルーシュはサイレンサー機能つきの銃で皇帝を撃った。
「げふん、いきなり激しい愛だなルルーシュよ」
撃ったはずなのに、傷一つおっていない。
なのに、口の端から血だけ流している。
この生物はもはや父でも皇帝でもなんでもない。
変態だ。
そう、変態は抹殺せねば。
「死ね」
ルルーシュは何度も拳銃の引き金をひいた。


周囲では、数人の先生たちが震えてその光景を見ている。
「ルルーシュ君、あの変態はなぜ死なないんだ」
「さぁ、俺にも分かりません」

ついには弾がつきた。
先生たちは、ルルーシュが拳銃をもって変態を撃っていることになんの咎めもしない。よほど、目の前の変態にショックを受けすぎているようだ。
それはそうだろう、崇めるべきはずの皇帝にとてもよくにている変態。同じ容姿、同じ声。
威厳に満ち溢れた姿はなく、ルルーシュに抱きつこうとしてくる皇帝。
ルルーシュは皇帝を足蹴りにした。
「ああんもっと〜」
皇帝が悶える。
あれだけ撃ちまくったのに一つの怪我もない。これもギアスの力なのか。
いや、変態の未知なるパワーなのだろう。
ルルーシュは、靴が汚れるので皇帝を足でげしげしするのをやめた。
変態は怒るではなく逆に興奮してねだってきている。

ルルーシュは、トドメとばかりに机の上にあった花瓶で思い切り皇帝の頭を殴った。

ゴイ〜ン。

良い音がして、頭は白ブリーフをはいているために普通だったのか、変態は血こそ流さなかったがキュウと伸びた。
うつぶせではなく仰向けなので、あれがもろ見えである。
ルルーシュに慈悲はなかったが、嘔吐感がこみあげてきたために誰の先生のものかわからない机の書類を皇帝の上にばさばさとばらまいた。

そして、携帯電話を出して警察を呼んだ。

皇帝は、やってきた警察に猥褻物陳列の罪や器物破損、不法侵入など様々な罪状でしょっぴかれていった。
「ルルーシュ!なぜだルルーシュ!ただ会いにきただけなのになぜだああああああああ!」

警察に連行されていく実の父親を、ルルーシュは絶対零度の眼差しで見送った。
普通に変装して会いにくるならまだ対応はできる。
白ブリーフを被っている時点で対応などできない。

「ルルーシュ君。あの変態、君のことを息子と呼んでいたけれどまさか本当に…」
「先生たち。今日おこった出来事は全て忘れてください」
ルルーシュの右目がローズクォーツの色を帯びる。ギアスが展開する。
その場に、今までギアスをかけた先生がいなかったことは幸いであった。

職員室で「愛しのわが息子ルルーシュを呼べ」と皇帝はのたまったそうで、先生以外にあの変態と自分との関係を聞いた者がいなかったのは奇跡かもしれない。


ルルーシュは、拳銃を拾いあげてポケットに隠すと、そのまま何事もなかったかのように生徒会室へと向かうのであった。
変態が校内に乱入してきた時は、生徒たちも悲鳴をあげていたが、警察の連行されたと分かってすでに落ち着きを取り戻している。
アッシュフォード学園は、貴族の子供も通うような場所だ。
身代金目的で銃をもって武装グループが乱入してくるより変態1匹のほうがよほどましである。
過去に武装グループが授業中に乱入してきたことも実際にあり、変態が退治されたと校内アナウンスが流れると、生徒たちはすごい変態だったよなとか口々に 語りあいながら、各自帰宅につくのであった。


その晩ルルーシュは、悪夢をみそうでロロの部屋で一緒に寝たという。