「!!」 京楽は、飛び起きた。 浮竹が死ぬ夢を見た。鮮血を吐いて、肺の病で弱りしんでいく夢だ。 最期を看取り、嗚咽を零した。 「あ・・・・・・・」 気づくと、泣いていた。 「京楽?」 京楽の隣で、眠っていた浮竹が眠たげな声をだして、目をこすっていた。 「なんでも・・・・ないよ」 「泣いてるのか?」 何故、と問われる。 「君を失う夢を見た」 事実、一度失った。なんの奇跡か、また浮竹に出会えたけれど、浮竹が自分の腕の中で息を引き取り死んでいった事実は消せない。 「・・・・怖いんだ」 この前、浮竹が破面に襲われけがをして記憶を食われ、視力を失った時もそうだった。 手の平から、零れ落ちていきそうで。 怖い。 そうまた呟くと、ふわりと甘い花のかおりで満たされた。 「浮竹?」 その暖かな体温と確かに伝わってくる鼓動に、安堵する。 「俺は、もう死なないし、お前を置いていったりしない。次に死ぬときは、お前と一緒だ」 そんな浮竹を抱き締め返す。 浮竹は、いつも京楽がそうしているように、京楽の涙を唇で吸い取った。 「泣くな。俺はここにいる。悪夢なんて、真実ではない。ただの夢だ」 浮竹が傍にいるのが幸せすぎて、頬をつねる。 「これは、現実だね」 腕の中の浮竹は、白い髪をかきあげて、京楽に口づける。 「安心しろ。俺は、お前の傍にいる」 「うん、そうだね」 愛しい恋人を抱き締めた。 「まだ深夜だ。もう少し寝ろ。悪夢を見たら、俺をたたき起こせ。追い払ってやるから」 浮竹の頼もしい言葉に、自然と笑みが零れる。 京楽は、浮竹の腕の中で静かにに目を閉じる。 いつもは京楽の腕の中で浮竹が眠りにつくのだが、今日は反対だった。 「浮竹。愛してるよ」 「俺もだ、京楽」 睡魔は、安堵したせいかすぐに襲ってきた。 傍らの体温はなくならない。 京楽は、眠りにつく。 浮竹は、京楽が眠るまでずっと彼を抱き締めていた。 |