太陽と月







交わることのない太陽と月にも、日食や月食があるように。
心は重なりあうことができる。

ほら、お前はこんなにも暖かい。
こんなにも強い。
こんなにも愛しい。

消えていく霊圧。
きっと、一護の視界から私は砂のように崩れ落ちていくのだろう。
欠片さえ残さずに。

もう、声は届かない。
でも、触れることはできる。
私から見ることはできる。

私は帰らなければならない。
そしてお前はこのまま残される。

交わることのない太陽と月のように。
重なって、そして離れていく。
でも心はいつも一緒にあるだろう。

なぁ、一護。
なぜだろう。涙が止まらない。
お前の声が、こんなにも耳に心地よい。

「ありがとう」

彼の言葉に、私は微笑んだ。
そう、これは「さよなら」なんかじゃない。
新しく歩いていくんだ。私もお前も。

「ありがとう、一護。またな」

そっと、背伸びしても届くことがなかなかできぬので、ジャンプして頬に触れた。

「あん?」

感触でわかったのか、一護がしゃがみこんでくれた。
私はその唇に唇でそっと触れる。

「お前・・・・恥ずかしいことすんなよ。みんなは見えてるんだろう?」
「そうだとも、私も恥ずかしいわばか者」
私の声がどんなに届いていなくても。
私の姿が影さえ見えることはできなくても。
こうして重なりあう太陽と月のように、触れることはできるのだから。

「ありがとう」

たくさんの想いをこめて。ありがとう。お前にとどけ。このありがとうの気持ち。

お前はきっと太陽。
こんなにも眩しいのだから。なら、きっと私は太陽がなければ輝くこともできぬ月。
太陽と月は交じり合うことはない。

だが、重なり合うことはできる。

お前と私、この心のように。

「ありがとう」

私は涙をぬぐい取ると、あけられたソウル・ソサエティの入り口に向かって歩きだす。
また、いつか。
それまで、元気でいろよ。

「私のことを忘れたりしたら、たわけ、絶対に許さぬからな!」

一護は、全然違う方向を向いていた。
織姫があっちだよと、私のいる方角を教えている。
そして、言葉も伝えてくれた。

「ああ、忘れたりするもんか!魂にまで刻み込んでやるよ!」
オレンジ色に燃える太陽のように、眩しくて。
私は、皆に手を振って、最後に一護に微笑んで、扉の中へと入っていく。

太陽と月は歩きだした。
また、いつか。

たくさんのありがとうを、お前に。