寒い日







「あー寒いな」
先を歩くルキアは、空を見上げた。
もう12月。もうすぐクリスマスの時期だ。
街路樹は夜になればイルミネーションが灯り、綺麗に点滅を繰り返してまるで星の瞬きのようだ。

「12月はクリスマス〜。クリスマスといえばプレゼント。一護、お前にはチャッピー等身大人形をくれてやろうぞ」
すでに、ソウル・ソサエティで買い物をした。あとはイブの日が訪れれば、ラッピングしたチャッピー等身大人形を一護に贈って、それをふりまわして一護をノックアウトさせるのだ。
一護も、きっとチャッピーのよさが分かるに違いない。
うむ。
一人自己完結をして、満足そうにルキアはマフラーの裾を風に遊ばせる。

「いらねーよんなもん。なんで等身大なんだよ!くれるならもっとましなものにしろよ」
「ふむ。ではフンドシ」
自販機で買ったホットのコーヒーを飲んでいた一護は、ふきだした。

「ぶばー!」
「ぬおお、汚い、こちらにむけてふきかけるな!」
「ふんどしだぁ!?お前、そんなもの俺につけてほしいのかよ!」
「最近のソウル・ソサエティーでは昔ながらのふんどしが男性の間で流行っているとか、聞いたような?でも死神の男性の下着姿なんて見ることがないからなぁ。分からん。ふむ、ここは兄様に」
ピポパ。

毎度ながら、このブラコンは、白哉専用の携帯を取り出して番号を押そうとする。
のを、背後からとりあげた。

「何をする!返せ!」
やや背をかがんだ一護と、思いっきり背を伸ばして、奪われた携帯を取り替えそうとするルキア。

ふにゃ。

互いの唇に、柔らかな感触があたった。

「じ、事故だぞこれは!!」
「じ、事故だ!!」

互いに真っ赤になって、唇をおさえてから、一護はルキアに携帯を返して顔全体から湯気がたちそうだ。
「か、返したからな!」
「オス!」
ルキアも真っ赤になって、言葉使いまで変になっている。

「ルキア」
「む?」
ルキアのマフラーごと体をひきよせる。
街路樹の陰に連れ込まれた。
顔に落ちた影に、ルキアが目を閉じた。

吸い込まれそうな太陽のオレンジの輪郭だけが、最後にはっきりとうつった。
「んんう」
深いキス。
「んー」
唇をなめられて、ルキアは甘い吐息をもらす。
「あっ」
喉元をきつく吸われて、眩暈がした。
「おしまい」
「う、うむ」
互いに違う方向を向いて、ギクシャクとしてカクカクと歩きだす。

それから、一護の暖かい手をルキアは握り締めて、二人で歩き出す。

「見ろ、雪だ」
ちらちらと降ってきた雪に、ルキアが嬉しそうに天を仰ぐ。
同時に、一護は死神となって駆け出した。
「一護?おい、どこへ・・・・」
「あああああああああああ!あああああああやっぱいたのかああああああ!!!絶対この展開になると思ってたあああああああ!!!」
全力疾走する一護。
その後を、斬魄刀をすでに抜き放ち、軽やかに一護を切り捨てようとする白哉。

「あ、兄様、ごきげんよう!」
「うむ」

学校でするように、スカートの裾をもっておかしなお辞儀をしたルキアに、一度白哉は止まって、それに応えてからまた一護を追いかけだした。

「兄は、ルキアに接吻をしたな。しかも首筋に痕まで残すとは。待たぬか、塵にしてやろう」
「誰が塵になるかああ!誰がまつかああ!!」

すでに、ルキアは白哉を呼び出した後であった。その後のキスだった。
目の前で、妹が男に接吻されている姿に、白哉は斬魄刀をためらいもなく鞘から抜き放った。そしてきりつけようとした瞬間、一護はそれを察知して、死神化して逃げ出した。

「兄様、キスくらいで。私と一護はもっとすすんでおります」
ピキ。
白哉の冷たい氷のような瞳がさらに冷たさをます。
「あああああ、ルキアああああ、俺を殺すきかあああ!!!!」

脱兎のごとく逃げ出す一護に、それを追いかける白哉の姿はすぐに消えてなくなった。

「また、一人残されてしまった。まぁいいか」
マフラーを巻きなおして、ルキアは一護の自宅へと足を向けるのであった。
そして、24日のイブには本当に、一護にチャッピー等身大人形が贈られるのであった。