氷漬け







「夏とは現世もソウル・ソサエティも変わらずあついものだな」
ルキアは、一護の部屋でクーラーの風に、黒い髪をそよがせながら、だれていた。
寒さには強いのだが、反面熱さに弱い。
斬魄刀が、氷雪系のせいだろうか。
すでに溶けてしまったアイスを、スプーンでかき混ぜる。

「あ〜〜〜〜」
扇風機に声をかけると、あ〜〜と間延びした声が部屋中に響いた。
ミーンミーンと、閉じた窓の外から蝉がうるさくなく声がする。

夏真っ盛り。
ソウル・ソサエティなら、今頃かき氷でも買って、兄様にもってかえったり、恋次と一緒にどこかに出かけて涼みにでもいっているだろう。
その恋次は、現世組として今、現世にきている。

「なぁ、恋次、現世の夏は暑すぎるとはおもわんか」
一緒にだれていた恋次に声をかける。
恋次はだれてはいるものの、現世の雑誌が珍しいのか一生懸命目を通している。
「あーん?こっちはクーラーってのもあるし、ましだろうが」
恋次が、ルキアにしっしと手を振る。
一護など、ベッドの上で腹を出して爆睡している。

「そうだ!」
「あん?」
恋次が、視線をルキアに移す。ルキアはいきなり死神姿になると、斬魄刀に手をかけた。
「おい、てめぇ何するつもりだ」
「氷を出すのだ!私の袖白雪で!」
「あ?」

「初の舞、月白!!!」

どごーん!

解放された斬魄刀によって、一護の部屋中が氷づけになった。
氷になっているのは、恋次と寝ていた一護だ。

「ふう。涼しい」

「お前は〜〜〜〜」
寝ていた一護は、全身を氷づけにされて、それでもなおしゃべっている。
身を切るような痛みの寒さ。
もう涼しいとかそんな限界をこえている。

氷をなんとか死神姿になって粉々に砕くと、同じく氷漬けになっている恋次を放置して、ルキアの頭をぐりぐりしてみた。
「何をする!痛いではないか!」
「そうか。じゃあついでに、夏を楽しんでこい」
「きゃああ?」
ルキアの首根っこをつかむと、一護はそのまま開け放った窓からルキアを放り投げた。ルキアはキランとお星様になった。

「覚えてろおお、いちごおおおおお」
「お前こそ、ちっとは反省してこいやああああ!!」
「わきゃああああああああ」
消えていくルキアの声。

氷漬けになった部屋で、一護は一言。

「どうしようこれ。恋次、おい、恋次!」
氷を砕いて恋次を助け出すが、綺麗に硬直していた。まだ全身に氷がこびりついている。
「あははははルキア、最高の夏だぜ。氷漬け最高」
そういって、恋次は力つきた。

結局、夏の暑さにまけて帰ってきたルキアが部屋の氷をなんとかして、一護とぎゃあぎゃあと言い合いをしながら、また扇風機に髪を泳がせる。

「おい、恋次伸びてるけどいいのかよ」
「ああ、恋次は氷漬けになるのにはなれている。よくソウル・ソサエティで一緒に氷漬けになって、兄様に驚かれたものだ」

どんな修行だよ。いや、遊びか?涼み方か?
まぁいいか。

「あ〜〜〜」
「あ〜〜〜」
伸びたままの恋次を放置して、二人で扇風機に向かって間延びした声をかける。
「涼しいな、一護」
「あー。涼しい」
氷が少しついたまま気絶した恋次をクーラーの風上において、そこからくる冷気にひんやりと二人は夏の熱さを忘れるのであった。

「一護、明日はスイカバーが食いたいぞ」
「あー。金やるからお前一人でかってこい」
「なにいい!こんな暑い中、私に買いに行けだと!お前もくるのだ一護」
二人はまた言い争いをはじめる。
結局、ルキアに負けて明日たくさんのアイスクリームを一緒に買出しに出かける一護と、氷が関節についたまま放置されたせいか、カクカクと動く恋次の姿があったという。ルキアは笑顔で二人に「ご苦労」などと声をかけていた。