白い白い世界







「好きだよ」
はじめてそう言われて何百年がたっただろう。


下級貴族の長男としてうまれ、育った浮竹。家庭環境は貧しくもなかったし、金持ちでもなかった。
大貴族の次男として生まれた京楽がもし、浮竹の生い立ちに代わりになっていたならば、あの暮らしは退屈なものだっただろう。

贅沢をする余裕はあまりない。父親と母親も働いているが、子供が5人もいて、しかも長男が病で薬代にばかみたいにお金がかかる。
病で髪が白くなったとき、もう自分は長くないのだと思った。肺の病は癒えない。鮮血をちらして、倒れては寝込む。

妹や弟の面倒を、それでも浮竹はみていた。だが、体が弱すぎた。

浮竹にとっては、毎日寝たまま窓から見える景色だけが全てだった。四季の移ろいも、色あせていくほどに、病に蝕まれていく。

けれど、彼は助かった。健康とは呼べないものの、吐血するときもあるが、昔ほど寝込むことが少なくなった。

そして、自分に霊力が並外れてあると悟った両親は、浮竹を護廷十三隊に入れると有名な学院に、試験を受けさせてくれた。死神になろうと思ったことは、子供の頃の浮竹にはなかった。
だが、父や母の手を煩わせずに、死神として成功すれば。

少しでも親孝行ができるのなら。

望んで、試験をうけ、首席で入学した。特別クラスになれた。

未来は、色づいて見えた。



「好きだよ、浮竹」

あれから数百年も経つのに、京楽の想いは変わらぬままだ。白い白い浮竹を好きになってしまい、長くなって結うのも面倒になった髪は、京楽が伸ばしてほしいといった言葉を受け入れたまま、もう何百年も長いままだ。腰より少し上で、いつも切りそろえる。

京楽は、浮竹のことが好きだった。その想いに気づいたのは、院生の頃。気づけば、いつも京楽の傍にいた。
京楽の隣にいるのが当たり前になっていた。

「京楽は、もの好きだな・・・・・」

今でも思う。想いのたけをぶつけるのは京楽のほうで、浮竹はそれを受け止めてやんわりと微笑む。

京楽のことが、嫌いなわけじゃない。嫌いなら隣にいたりはしない。

むしろ好きだ。

京楽とそういう関係になって、数百年。

お互いが一番大切。時折暴走しがちな京楽に、振り回されることはあっても、あくまで穏やかに時間は流れていく。

それぞれ隊長となったが、院生の頃と変わったのは髪の長さや強さだけではない。

恋愛というかけひきが、数百年にも及ぶとは思わなかった。いつか終焉が訪れると分かっていても、別れなかった。

ただ、比翼の鳥のように、お互いを支えあった。
他愛もないことを考え、笑い、遊び、鍛錬したあの頃が懐かしい。





今から数百年前。
首席で院生となった浮竹は、病のせいもあり座学の成績が落ち気味になっていた。それでも勉学に励み、常にTOPを争うほどの成績になれたのは、院生になって2年も経った頃だ。

すでに京楽春水とは出会っていた。

入学式の日に、上流貴族が学院に入ると噂をされて、入学してきた京楽を、浮竹は目で追った。

視線が絡みあう。

「その髪・・・・・染めてるの?」

真っ白な、髪。

浮竹にとってはコンプレックスに等しい。

翡翠色の瞳が、少し悲しげに揺れた。

「染めていない。子供の頃、病のせいで色素がぬけてこうなってしまった。この髪の色は嫌いだ」

だから、短めにしていた。

「綺麗なのに。伸ばせばもっと綺麗になるよ?僕は京楽春水。よろしくね」

そっと髪にふれてくる手を、打ち払わなかったのは、京楽春水と名乗った人物がやけにふわふわとして、心が読み切れなかったから。

白い髪のせいで、奇異の目で見られることは少なくなかった。霊力があるから余計に遠巻きにされて、子供の頃は友と呼べる存在があまりいなかった。

「俺は浮竹十四郎だ」

ふわりと微笑んで、伸ばされた手と握手する。京楽の手は、暖かかった。

満開の桜がふわりと風に散って、浮竹の髪に落ちた。

それをつまんで、京楽は優しい目で浮竹を見た。

「友人にならないかい?できれば、親友に」

「ああ、いいが。だが、まだ出会ったばかりだぞ?」

「いいの。僕が君を気に入っちゃったんだから」

「変なやつだな」

浮竹は笑った。



きづけば、本当に京楽春水と、友になった。親友になった。

院生になって2年がたった頃、よき友人となっていた彼、京楽春水は、明るかったがどこか悲しげだった。

「浮竹。本当に調子はいいのかい?」

治ることのない肺の病を抱え、数日前倒れて3日ほど寝たきりになっていた浮竹を、京楽は心配そうにのぞき込んだ。

「ああ、いつものことだ。気にしないでくれ」

差し障りのない会話。

白くなった髪に、そっと触れてくる京楽は優しかった。

「君、もう少し肉を食ったほうがいいよ。少し痩せたんじゃないかい」

「ああ、そうだな。今日は調子もいいし、焼肉でもくいに行くか?」
症状はおさまっている。消化にいいものを最初にたべ、そろそろ普通の食事もしていいはずだ。

「君は、本当に・・・・・・」

京楽は言葉を飲み込んだ。

頭に手が伸ばされる。

少し伸びた白い髪を、その手がすいていく。

そしてわしゃわしゃと、浮竹の頭をぐちゃぐちゃにした。

「何するんだ。前が見えなくなる」

浮竹は不機嫌そうな声をだして、京楽の手を払いのけた。

短かった髪は、今は肩まで伸びている。

京楽が、綺麗な髪だから切るのはもったいないと何度も囁くので、伸ばしていた。

「好きだよ、浮竹」

京楽の声が好きだった。

その優しい手が好きだった。

「ああ、俺もだぞ」

でも、京楽の好きと浮竹の好きの意味は違った。

京楽は恋愛感情で、浮竹は友として、だった。

「じゃあ、夜に迎えにいくから酒でも飲みながら肉を食おうか。うまい店を知っているんだ」

京楽は酒が好きだ。同じくらいに女も好きだ。

そんな彼が、何故浮竹を恋愛感情で好きになったのかは分からない。彼だけが知っている。

酒と女遊びが派手な親友だったが、院生1年の終わり頃から、京楽は随分静かになった。

朝帰りもなくなったし、廓で女を買うこともなくなった。

「じゃあもういくね。好きだよ、浮竹」

何度好きだと京楽が浮竹に伝えても、それは友として処理され、伝わらない。

いっそ、無理やり自分のものにしてやろうかと考えたことは一度や二度ではない。だが、京楽は浮竹を失うのを何よりも恐れている。

今の関係を壊してしまったら、二度と元に戻れぬのではないかと。

親友という位置はよかった。浮竹の隣に常にいれる。浮竹の笑顔を見て、笑いあって話せる。

浮竹を落胆させることはしない。授業をさぼるのも少なくなった。課題を出されても、提出するようになった。大貴族である京楽が、酒に溺れていても注意する者はいない。

大貴族という身分の隔たりが、京楽と他の院生との間に溝を作っていた。そんな中、浮竹は酒に溺れるなと叱ってくれる。

別に、京楽に浮竹以外の友がいないわけではないが、浮竹のような親身になって世話をしてくれる友はいなかった。

浮竹は、京楽の堕落を止めるストッパー的役割だった。

窘め、反省させ、道がずれそうになったら戻してくれる。

浮竹は、体こそ弱いが、剣の腕も鬼道もずば抜けた成績だった。京楽もだ。だが、座学では浮竹のほうがはるかに上だ。

いつもTOP争いをしている。

そんな浮竹の頑張り具合を見るのも、京楽の道楽の一つだった。本気になれば京楽だって10位以内には入れる。だが、分からないふりをして浮竹から勉強を教わるのはやめれない。

浮竹の傍にいる理由にもなる。

浮竹の周囲には常に友人があふれており、京楽にはそれが眩しかった。

自分にはもっていないものを、浮竹はいっぱいもっている。

肺の病のせいで白くなった髪を浮竹は嫌っていたが、京楽は好きだった。だから伸ばせと囁いたのだ。

自分の言葉通り、髪を伸ばす浮竹が愛しくてたまらなかった。

白い髪、白い肌、秀麗な容姿、誰にでも優しいその暖かさ。

その暖かさに触れていくうちに、京楽まで暖かくなっていた。

「風呂にでもはいってくる。じゃあな、京楽」

浮竹は、3日もねこんだせいで、風呂に入れなかったので汚れを落とすために風呂にいった。

院内の寮は、個人部屋もあれば相部屋もある。浮竹も京楽も寮に入っていて、お互い一人部屋だ。

風呂に消えていった浮竹に手をひらひらとふりつつ、京楽は浮竹の部屋を出た。





「うまい」

浮竹の目が輝いている。

連れてきてよかったと、京楽は思った。

最近馴染みになった焼肉の店だ。無論酒もたくさんあって、何を注文しようか迷ってしまう。

「これも食べてごらん」

京楽は、自分の分の肉も浮竹に食べさせていく。

浮竹は高い料亭などを苦手としている。下級貴族であることもあり、贅沢は好きでない。金銭的な面では、肺の病のせいでその薬代にほとんど消えていく。

今日は、京楽のおごりだった。

肉は美味で、酒もうまかった。

連れてきて正解だったと、京楽は思う。

「お前ものめ、京楽」

頬に赤みがさしている。

少し酔いが回った浮竹の杯に、京楽は酒をつぎ足し、浮竹がすすめてくる果実酒を、京楽は一気に飲んだ。

「ここの酒はうまいな」

普段は日本酒を飲んでいるが、果実酒も好きだ、浮竹は。

京楽は酒であればなんでも好きだ。

「頼むから、飲み潰れてくれるなよ」

酔った京楽を介抱するのは浮竹の役目だったが、その反対はかなり珍しい。

肉だけでなく野菜や魚も口にして、果実酒をおかわりして、京楽も少し酔いがまわってきた頃には浮竹は完全に酔っていた。

珍しい。

ここまで、浮竹が羽目を外すのは。

「浮竹?おーい浮竹ー」

揺さぶってみるが、とろんとした目で京楽を見上げると、浮竹はふわりと笑って倒れた。

「浮竹!」

慌てて抱き起すが、すーすーと眠っている。

「あらまぁ」

すっかり酔いつぶれた浮竹を背負って、勘定を済ますと京楽は店を出た。

ここ最近は浮竹も背が伸び、京楽とあまり差がない。

ただ、体重は違う。肺の病のせいで、何も喉を通らないことや寝込んだままの時のある浮竹は、鍛え上げているため筋肉がついていないわけではないが、京楽よりはるかに軽い。

「おいとましますか」

本当はお姫様抱っこというのをしたかったが、人目がおおいので背負った。

浮竹が血を吐いて倒れるのを、救護室に抱きかかえて運ぶのはもはや京楽の役目になっていた。

軽い体重。

動きにあわせて揺れる白い髪。

ふわりと甘い匂いがする。果実酒のにおいだ。浮竹からは他にお日様においがした。浮竹のにおいだ。



「どっこいせ」

寮の、浮竹の部屋まで彼を運んだ京楽は、眠りこんでしまった浮竹を寝台に横にして、その白い髪をすいた。

> 「浮竹・・・・」

今日は月夜だ。

ぼんやりと人工灯と月夜に照らされる浮竹は、幻想的なくらいに綺麗に見えた。

「ちょっとだけ・・・・ね?」

京楽の手が伸びる。

浮竹の唇を手の指でなぞり、そっと口づけした。

口づけすること自体は、初めてではない。倒れた浮竹の意識がないのをいいことに、何度かしたことがある。

「京楽・・・・・・」

はっと、身構える。

軽く口づけするつもりが、少し長くなってしまった。

>意識を取り戻した浮竹が、こちらを見ていた。

ごくり。

京楽の喉がなった。

頬を朱くして、浮竹はじっと京楽を見上げていた。

その熱のこもった視線に、京楽は困惑した。もっと、侮蔑するような視線を気にしていたからだ。


「京楽・・・・こっちに、こい」

<
寝台の上の隣をぽふりとたたいて、浮竹は京楽を促す。

京楽はそれに従った。


ぱさり。

浮竹の髪が、頬を撫でた。

覆いかぶさってくる浮竹に、京楽は逡巡する。

「気づいてないとでも、思っていたのか」

浮竹の瞳が、潤んでいた。
「いやー、まぁそのつい」

「誰にでも、こんなことを?」

「いいや。浮竹だけさ。好きだよ、浮竹」
「俺は・・・・・・」

「無理をしなくていいよ。気持ち悪いなら、突き放してくれていいから」

覚悟を決めた京楽が、覆いかぶさったままの浮竹の、白い頬に手を添えた。

「気持ち悪くなんか、ない。ただ・・・・どうすればいいか、分からないだけだ」

「この体勢でそう言われてもねぇ」
浮竹の体勢が入れ替わる。
京楽に押し倒されて、浮竹は酒で火照った体を京楽にすりつけるように、体を抱きしめてきた京楽に触れる。
酒の飲みすぎのせいにしてしまおうか。

迷う。

京楽の、狂おしいまでの愛に、浮竹は気づいていた。だが、答えたことはない。

「俺は・・・・京楽が、好き、なのか?」

浮竹は、京楽が頬やこめかみにキスを降らせてくるのを、嫌がりはしなかった。

分からない。嫌いではない。好きだ。

だが、同じ男性だ。

浮竹にその手の趣味はない。それは京楽もだろう。

「好きだよ、浮竹。・・・・・・・・・・・十四郎」

耳元で囁かれて、びくりと体が反応する。

「きょうら・・・・・っ」

口づけられた。今までのものとは違う。ぬるりと唇を何度もなめられて、半ば強引に入ってきた舌が逃げる浮竹の舌をからめとり、歯茎をなぞり、浮竹を追い上げていく。

「ふわっ・・・」

頭がスパークする。

深い口づけを終わらせて、去っていく京楽の舌が銀の糸をひいていた。のみこみきれなかった唾液が、浮竹の顎を伝って寝台にシミを作った。

「抵抗しないの?怖くないの?」

「怖い。でも、お前、泣きそうな顔してる」

京楽の切なそうな表情に、浮竹は目を閉じた。翡翠色の瞳が見えなくなる。

「分からないんだ。京楽のことが、そういう意味で好きなのかどうか」

「続き、しちゃうよ?やめるなら、今のうちだよ?」

「俺は」

「タイムオーバー。君をぐちゃぐちゃに犯すから。覚悟して。2年間我慢してたんだ。もう我慢できないよ」

それだけ、京楽を焦らせていたのだろうか。

服の襟元をはだけられて、首筋に跡を残された。まるで自分の所有物の証であるとばかりに、跡を残していく京楽に、浮竹が慌てた。

「あまり、跡をつけないでくれ」

「どうして?君が僕のものだって、みんなに教えてやりたいのに」

「あさっては・・・・・先生と、稽古が」

「山じいとの稽古は、欠席だね」

気づくと、ほとんど裸に剥かれていた。

「お前ばかりずるい・・・・・お前も、脱げ」

「もじゃもじゃしてるよ?いいの?」

「いいか、ら」

薄い胸をなめあげて、右の先端を舌で転がし、左のほうをつまみあげると浮竹が朱くなった。

「京楽・・・・声がっ・・・・あっ」

「こんな時間、みんなもう寝てるよ。それに、聞かせて?十四郎の、声を」

「春水・・・・」

はじめて下の名前で呼ぶと、ぶるりと京楽が体を震わせた。

「僕、もうこんななっちゃってる。十四郎も、苦しそうだね?」

京楽の、凶暴な熱が、浮竹の腰に当たった。

膝を足で割られ、少し熱をもったものに手を伸ばされ、こすられると何も考えられなくなっていく。

「あ、あ、あ」

「一度、一緒にいこう?」

「あ、あ!」

声がどうしてももれてしまう。唇をかみしめる。血がにじんだ。、

「声、我慢しないで。もっと、聞かせて?」

「!」

お互いに熱をこもった肉塊を、京楽は長い指で愛撫して高めていく。そして、浮竹の先端に爪をたてた。

「はうっ!」

久しく自慰行為などしていない浮竹には、もう何がなんだか分からなかった。真っ白になっていく世界。

白く白く、世界が染められていく。まるで浮竹の肌や髪の色のように。

キスを繰り返し、京楽はごそごそと、脱いだ衣服を手で探って、黒い瓶を取り出した。

「ここは、自然には濡れてくれないからね。ちょっと我慢してね」

「京楽、何を!」

やっと射精の快感から現実に戻ってきた浮竹がかんじたのは、そんなことをするためにあるはずのない器官を、冷たい潤滑油を指につけて、おしこまれていく京楽の動きだった。

そうだ。男同士なのだ。女のように、濡れる秘所があるわけがない。体も柔らかくないし、筋肉も薄い、ごつごつした体だろうに、何がそんなに愛しいのか、京楽は何度も抱きしめてきた。

「やっぱり、もう少し肉をつけたほうがいいねぇ。痩せすぎ」

「あっ」

体内で、指をばらばらに動かされて、前立腺を直接刺激されて、また頭が白くなりそうだった。

「ほんとは、もっと時間をかけてゆっくりしたいけど、早く君を手に入れたいから。一つになりたいから。愛してる、十四郎」

ぐちゃぐちゃと、音をたてる蕾を弄ぶ指が抜き去られたかと思うと、比重にならないくらいの暑い熱が、肉をえぐる音をたててめり込んできた。

「ぐあ・・・・あ」

「苦しいよね?少し、我慢してね」

あまりの痛みに、浮竹は涙を流した。

それを吸い上げて、一度最奥まで突き上げて、京楽は浮竹を抱きしめた。

「分かる?今、僕たち一つになってる。君を犯してる」

「春水・・・・」

「ちゃんと、気持ちよくするから」

一度引き抜かれていく熱を、肉が離そうとしない。

「すごいな君の中。吸い付いてくる」

「やぁっ・・・・」

ひきぬかれた熱を潤滑油まみれにした京楽は、再び浮竹を犯した。

入口の浅い部分を突き上げて、リズムをつけて最奥までぐちゃぐちゃに挿入する。

「やっ」

浮竹の体が、自然と逃げようとする。

京楽は、強靭な肉体でそれを許さなかった。

「あ・・・・・・・・・・・・」

深くキスされて、膝を肩に乗せて、京楽は深く突き上げてきた。

それでいて、前立腺もしっかり突き上げる。

何度も同じ行為を繰り返していくと、くったりと力をぬいた浮竹の体を抱きしめた。

「ごめんね。十四郎、ごめんね。でも愛してるんだ」

「ああっ!」

前立腺を熱い肉塊で突き上げられて、浮竹はまた世界が真っ白になるのを味わった。

ぱたぱたと、白い体液がシーツを濡らす。

同時に、じんわりと腹の奥で京楽の熱がはじけるのを味わった。

「愛してる、十四郎。好きだよ」

「俺も・・・・好きだ、春水。愛してる」

「えっ」

初めての浮竹からの告白に、熱を一度失った京楽の凶器に、再び硬さが増してきた。

「あっ・・・・まだ、終わらない、のか?」

「ごめん・・・・・君から愛してるって言ってくれるなんて。嬉しくて」

浮竹を味わいつくしたい。骨の髄までしゃぶりつきたい。

その後、体勢を替えたりして2時間ばかり浮竹を犯しつくして、京楽はやっと満足した。5回は彼の体内で性を放っただろう。

熱を引き抜くと、結合部からとぷんと、京楽が吐き出したものがあふれてきた。

「ごめんね、十四郎」

すでに、浮竹は意識を手放していた。

タオルと湯をもってきて、浮竹の体を綺麗にふいて、中身をかきだして後始末をして、浮竹に服を着せる。

シーツを替えて、性行の痕跡を消して、少し長くなった浮竹の白い髪をなでた。

優しく優しく。

触れるだけの口づけを繰り返す。

自分のものになった浮竹を抱きしめて、そのまま京楽も眠りについた。




「あいてててて」

「大丈夫かい、浮竹」

「大丈夫もくそもあるか。思いっきりやりやがって」

何度犯されたのか覚えていなかった。

意識が戻った浮竹は、横ですーすーと幸せな満足感を伴った眠りについていた京楽を寝台の上から蹴り落として、痛む腰に手をあてていた。

「だからごめんってば」

「ごめんですんだら、死神はいらん」

いや、その死神になるために、院生をしているのだが。

「朝飯はどうする?」

「どうせ今日は休日だ。昼になったら食べる。今は湯あみがしたい」:

「一応、後始末も体もふいたよ?」

「そういう問題じゃない」

湯の中でリラックスしたかった。なにせ、腰が痛くて仕方ない。タオルでふかれたといっても、違和感はぬぐえない。京楽が刻み込んだ跡が肌に残っているため、湯殿にはいけそうになく、個室の浴槽に湯をはってはいった。

「今度、温泉にでもいこうか」

「お前のおごりなら」

「なら決定だねぇ。どこがいいかなぁ」

うきうきわくわくといった京楽の頭をぽかりと殴って、浮竹はため息をついた。

「はぁ。これからお前と何年生き続けてこんな関係を保っていくんだろうな」

「永遠だよ」

「永遠なんてない」






「好きだよ、浮竹」

始めて、そう言われて数百年の時がたっただろう。

常に背中を任せて戦闘に出た。いろんな体験をした。先生こと山じいに怒られ、隊長まで登りつめても関係は変わらない。

どちらが上というのはない。

力は拮抗している。尸魂界で、2つしかない対をなす斬魄刀をもった京楽と浮竹。

「ああ、俺も好きだぞ、京楽」

今では、恥もなくいえる。

すでに他の隊員や隊長、はては山じいにまで知られてしまっている。隠すことのない京楽に、逆らうように誤魔化してきたが、何度も遊びにいったら朝帰りで、しかも隊長羽織を互いに間違えているようなこともある。

公認カップルになっているが、彼らをからかう者はせいぜい夜一くらいのものだろう。

「髪、長くなったねぇ」

京楽が、さらりと流れる白い長い髪を手ですくいあげた。

「誰かさんが、短くするとうるさいからな」

「はてさて。誰だろうねぇ」

髪に口づけして、京楽は笑った。

「酒、のまないかい?」

「こんな朝っぱらからか?」

「たまにはいいじゃない」

「まぁ、な。今のとこ、何もないようだし。仕事も片付いているしな」

浮竹は今日の分の仕事を早朝に終わらせているが、京楽は仕事がたまっていて、七緒に怒られてばかりだが、二人の仲を引き裂くようなことはしない。

「ん〜好きだよ浮竹ぇ」

「暑苦しい!離れろー!」

尸魂界は、今日も平和だった。