「できた!うむ、我ながら完璧だ」 そこには、死神代行の黒崎一護の写真があった。隠し撮りらしく、ちゃんとカメラをみて映った様子がなかった。 その一護の写真は、オレンジの髪がマジックで黒く塗りつぶされ、下睫毛が追加されていた。 「うわー、ひどいねぇ、浮竹。それ、一護君じゃないの?もう、違うものになってるよ」 一護の写真をマジックで加工して、かつて失った副隊長の志波海燕にしていた。 浮竹のいる雨乾堂を訪れきた京楽がみたものは、加工された一護の写真。、 「いやぁ、ほんとに酷いよ浮竹。いくら志波君が好きだといっても限度があるでしょ」 「京楽か。本当は、黒いカツラをかぶって下睫毛をつけて、13番隊の副官の姿をしてほしいんだが、実物に頼むにはけっこう抵抗があってな」 「まぁ流石の一護君も、そこまでしてはくれないだろうねぇ」 「だろうなぁ。おはぎあげても、無理かな?」 かわいく、小首をかしげる浮竹に、うっときたが、京楽は我慢した。何この子かわいい。そう、京楽の顔に書いてあった。 「いや、流石に無理なんじゃないの。食い物でつられるような子じゃないでしょ」 「うーん。この写真、ポスターにするか」 「そこまでするの?うわー、僕ちょっと引いちゃうよ」 「一護君が、副官になってくれたらいいのになぁ」 「いや、流石に無理でしょ」 「だなぁ。死神代行だしな」 死神代行、黒崎一護に、一目ぼれした状態の浮竹に、京楽はため息をついた。 「浮竹も、いい年してるんだから、若い子を巻き込むのはやめなさい」 「むっ。年の話はするな。これでもまだまだ現役だ」 齢数百歳になるが、人の年齢にしてみると30代後半〜40代前半あたりだろうか。 真っ白な髪と白い肌、翡翠色の瞳の浮竹は実年齢より100歳ほど若く見えた。 「代行証は渡したしな。ふふふふふ」 どす黒く笑う浮竹は、いつものほんわかとしてふわふわした浮竹と違った。 昨日など、13番隊の隊長羽織を着ずに、間違えて、京楽の8番隊の羽織を着ていた。誰の目から見ても、できている二人は、別段関係を隠すことをしていない。 さすがに黒崎一護は、8番隊の隊長羽織を着ていた浮竹につっこんでいたが。 京楽と、肉体関係をもつ深い仲であることには、まだ気づいていないようだった。 「一護君に、手をだしちゃだめだよ、浮竹」 「うーん」 純粋に、ただ懐かしいのだ。 副官として、面倒を見てきてた志波海燕のことが。 京楽にとって、志波海燕とはあまり好きな相手ではなかった。浮竹との仲を知り、浮竹が京楽と関係をもって、寝所を共にしたあと、熱を出す浮竹を心配して仲を裂こうとしたことがあるからだ。 何度か志波海燕は、浮竹に京楽と別れるように進言したが、浮竹はそれを聞き流していた。 そんな志波海燕によく似た、黒崎一護を、京楽は最初あまりいい印象を抱かなかった。だが、すぐに誰とでも仲良くなれて、強く、仲間を守るために命をかける一護に好感を抱くようにはなった。 「はぁ。一護君にまた会いたいなぁ」 「まだしばらく尸魂界にいるらしいから、また会えるでしょ」 「でも、会ったら・・・・そうだ、今度はツーショットで写真をとらせてもらえるように頼んでみよう。それから、現世に誘ってデートでも・・・・・・」 「浮竹ぇ」 「ん?」 「君、バカだろ」 「なんだと!」 「僕がいるのを、忘れてないかい」 「ん?」 小首を傾げる浮竹は、破壊的にかわいかった。 「なんだ京楽、焼いているのか。いっちょまえに、やきもちか!」 「いっちょまえとは酷いねぇ。そんなこという口はこうだ」 「んーーーーーー!」 浮竹の唇を強引に奪って、言葉の続きを紡げなくした。 「んんっ」 角度をかえて、何度も浮竹に口づける。 京楽は、浮竹を抱きしめて、今度はきつく首筋にキスをして跡を残した。 いつもなら、浮竹が嫌がるので、跡は残さないのだが。 いわゆる、所有物の証というものだった。 「京楽のあほっ!おたんこなす!」 「はいはい。あんまり言うことを聞かないなら、犯すよ?ぐちゃぐちゃに」 耳元で低く甘い声で囁かれて、鳥肌がたった。 ざわりと、背筋が冷たくなる。 黒崎一護とデートをしようものなら、お仕置きだと酷く犯されることは目に見えていた。 それが怖いので、浮竹は大人しくなった。 「浮竹はいい子だね」 すっぽりと、京楽の腕の中だ。 身じろぎもできなくて、浮竹は、困った。 「じゃりじゃりする!」 浮竹が、ひげごと顎を、浮竹の頬にすりよせた。 「ほらほら」 京楽のひげで、じゃりじゃりさせられるのを浮竹はあまり好きではなかった。 ちょっとしたお仕置きだ。 愛しい子が、他の子に関心をもつから。 我ながら心が狭いなと、京楽は思う。 「もう、分かったから・・・・・」 薄い腹の筋肉を撫でていく京楽の手に、危機感を感じた。貞操の危機だ。 冗談じゃない。 おとつい、散々啼かされたばかりだ。 浮竹に対しては、京楽はどこまで貪欲になる。何度犯しても、足りない。何度手にいれても、満足しない。 「あの、隊長・・・・・すみません、見てはいけないものを見てしまいました!」 「ああっ、清音いるの忘れてたっ!」 雨乾堂の隅に、目立たないように控えていたのは、3席である虎徹清音だ。 自分の隊長が、他の、しかも男である京楽隊長にいいようにされている場面を目撃してしまい、真っ赤になっていた。 今までも、何度か軽いキスやらハグやらのシーンは見てきたが、それ以上は見ていなかった。 清音は、耳まで真っ赤だ。そして、去って行った。 「京楽!アホバカまぬけおたんこなす!」 「あーはいはい。続き、しちゃうけどいいよね?」 「いやだっ」 身を捩る浮竹を抱き上げて、畳に転がすと、全身の輪郭をなぞるように愛撫していく。 淡泊な浮竹と違い、どす黒い欲望をもった京楽は、毎日でも浮竹を抱きたがる。 「京楽、俺が悪かった。だからやめ・・・・っ」 「スイッチはいちゃったから。もう、無理」 「やぁっ・・・・」」 雨乾堂の外にいた清音は、浮竹のあげる甘い声を耳にして、さらに真っ赤になって完全に去って行った。 |