日常







学校の帰り道。

一護は、ルキアとゲーセンに寄った。

夏休みも終わり、秋がこようとしていた。まだうだる暑さを含んだ大気は、当分残暑が続きそうだった。

「一護、これはなんだ?」

「あー?プリクラだ。写真とるようなもんだ」

「ほうほう。一度、とってみたいぞ。貴様とでいい」

「なんだその言い方」

カチンときたが、一護はルキアと一緒にプリクラをとった。

「おお、すごいな。文字も入れれるのか。ただ、値段が少し高いな。まぁ、兄様からたくさん小遣いをいただいているので、どうでもよいが」

「お前、一体いくら白哉からもらってるんだよ」

「ふふふふ、秘密だ」

少なくとも、10万以上はあるなと、一護は思った。

ブランドものの衣服を、時折買ってくることがある。ティーンズファッションのモデルにならないかと、芸能人スカウトされたことのあるルキアは、男のようなさばさばした性格と口調のわりには、高貴な身分だけあって、どこか気品があった。

「しっかし、白哉も変わったもんだなぁ」

「そうだな。兄様は、だいぶ変わられた」

義妹を素直に愛せなかった分を、取り戻すかのように、甘やかしている。

女性死神協会のメンバーと海に行った時など、わかめ大使とかいうわけのわからない砂細工を作っていた。となりででこぼこのチャッピーを作っているルキアと、まさに似た者義兄妹。

「一護、あれはなんだ」

「ああ?クレープ屋だよ」

「ふむ。金をやるから買って来い」

「なんで俺が買うんだよ。食いたいのはルキアだろうが。自分で行け」

「たわけ!愛しい彼女のために、働くのが現世の男子というものだろう」

「別に愛しくなんかないぞ」

「今までの私との関係は、遊びだったのか!」

「いや、俺らただの死神仲間だろうが」

別に、付き合っているというわけではない。交際するなら、まずは白哉の許しがいるだろう。

「泣くぞ!」

「わーったよ。買ってくればいいんだろ!」

ハンカチを目に添えられて、ぶつぶつと文句をいいながらも、一護は自分の分も含めて2つクレープを買った。

「うむ。美味いな。食べないなら、貴様の分もよこせ!」

「意地汚いやつだな!今から食べるんだよ、俺は!」

ルキアにとられる前に、一護はクレープを食べてしまった。

「むう。もう1つ買って来い」

「だから、自分で行けよ・・・・・・」

一万札を渡されて、一護はため息を零した。

あー。なんだこの生き物。かわいいけど、我儘で傲慢不遜だ。

そんなルキアに慣れてしまったのか、一護は素直にクレープを買いにいった。おつりをもらうのに少し時間がかかった。

「たわけ、遅いぞ!」

「ほんの数分も待てないのかよ」

「よこせっ!」

一護の手からクレープを奪いとるルキア。

「さっきと違う味がする。こっちのほうがうまいな」

「どれ」

食べかけのルキアのクレープを、一護は少しだけ食べた。

それに、ルキアは真っ赤になった。

「貴様!このたわけ者!」

まるで、彼氏彼女のようではないか・・・・・・・その言葉を飲み込んで、ルキアは歩き出す。

「現世は、やはりいいな」

「そうか?」

いつまで、現世にいられるの分からない。藍染との戦いが、一段落したら、ルキアはまた尸魂界に帰るのだろう。

「現世に、ずっと一緒にいられたらいいのに・・・・・・」

ルキアの声は、小さすぎて一護には届かなかった。




今は、穏やか日々を享受しよう。

決戦の時は、近づいていた。