同じ屋根の下で暮らして、はや数か月。 まだうだる暑さが残る夏の終わりのある日、ルキアはいつもの押し入れではなく、一護のベッドの上でスース―と、静かな眠りについていた。 「なんだ、寝てんのか」 虚退治から帰還した一護は、ルキアを起こさないように窓からそっと室内に入った。 「しっかし、こんな暑い中よく寝れるもんだな」 エアコンはついていなかった。 虚退治で、軽い運動をしたような一護は、あちいと呟いて、エアコンのスイッチをいれた。 「ん・・・・一護・・・・・・・」 「ルキア起きてんのか?」 ただの寝言らしい。 どうやら、一護の夢を見ているようだった。 石田雨竜からもらった、ワンピース姿だった。ルキアは、ワンピースが好きなのか、買い物に行って服を買う時も、よくワンピースを選んだ。 「一護が巨大な苺に・・・・うーん兄様、わかめ大使が・・・うーんうーん」 「うなされてんのか」 変な夢を見ているらしい。 うーんうーんとうなされるルキアの細い手首をとって、一護はルキアの手を握った。 「ルキア、おい起きろ」 「うーんうーん」 起きそうにもなかった。 一護は、眠りについたままのルキアを見る。 朽木家の姫君だけあって、可憐な姿をしていると思う。男のようにさばさばした性格で、口調もどこか尊大だが、それがルキアであって、ルキアという少女を構築している全てが、一護は好きだった。 ルキアの、桜色の唇に、気づけば指を這わせていた。 「起きない、おまえがわるいんだからな」 一護は、そっと触れるだけのキスをした。 キスといえるのかもわからないようなキスだった。。 好きだと伝えたのに、ルキアは一護の前ではあまりにも無防備だ。 ルキアの存在は、一護にとっては本当は高根の花であった。 「ん・・・・・・・・・一護?帰ったのか」 目をこすって、眠そうにあくびをするルキアの頭を、ぐしゃぐしゃに撫でた。 「何をする、たわけ!」 ルキアはぷんぷんと怒った。 その姿かかわいくて、一護はルキアに顔面を足蹴りされるまで、笑っていた。 押入れが、そっと開いた。 そこから登場してきたコンが、ルキアの元にくると、一護をぬいぐるみの手で指さした。 「みーてーたーぞー一護!ねぇさん、聞いてくだせぇ、一護のやつ、眠っているねぇさんに!」 「うっせぇ!」 「もぎゅ」 コンを踏みつけて、一護はルキアの小さい手を握りしめる。 「アイスでも、買いに行こうぜ」 「む、コンビニにか?」 「そう。ファミマでいいよな?」 「うーん、個人的にはセブイレブンのシロクマアイスが食べたい・・・・・・」 「じゃあ、セブンいくか」 「ああ」 コンを念入りにふみつけて、一護とルキアはアイスを買いに出かけた。 「あ、当たりだ・・・・」 くじつきの棒アイスを食べたルキアは、嬉しそうに当たりとかかれた棒を一護に見せる。 「シロクマアイスが食べたいんじゃなかったのかよ」 「たわけ!その時の気分次第で、アイスは変わるのだ!それより、戻ってこの当たりをアイスと交換せねば・・・・・・・」 「もう、家がもうすぐだぜ。今度にしろよ」 コンビニは、少し離れた場所にあったので、今から戻るのは時間がかかる。 日差しはギラギラと照っていて、暑かった。 早く、家に帰ってエアコンをつけて扇風機で涼みたい。 「シロクマアイスも買っとけばよかった・・・・・・」 ルキアは、少ししょんぼりしていた。 「今日の夜は少し涼しくなるらしいから、そん時にでももっかいコンビニに連れていってやるよ」 ルキアは、まだコンビニまでの複雑な道のりを覚えていなかった。 「約束だぞ」 「ああ」 指きりげんまんをした。 「ルキア」 「なんだ一護」 ルキアを抱き寄せて、一護はキスをした。 「アイスの味がする・・・・・」 「こんな道中で・・・・たわけがっ」 真っ赤になって、ルキアは一護の足を思い切り踏みつけた。 「いいじゃねぇか。減るもんじゃなし」 「減るわ、たわけ!乙女の唇を、なんだと思っているのだ!」 一護は、ルキアを置いて歩き出した。 ルキアとのキスは、ルキアが食べたバニラの味がした。 甘い甘い、バニラの味だった。 |