シンデレラ/I>







昔々、あるところに薄幸の美少女が住んでおりました。

その名を、シンデレラといいます。

「ちょっとちょっと!配役、絶対間違ってるから!」

シンデレラは、もじゃもじゃのおっさんでした。

いや、京楽でした。

「なんで僕がシンデレラ!?」

「京楽さん、話すすまねーから静かにしてくれねーか」

意地悪な義母の一護が、シンデレラに怒りの矛先をむけます。

「俺だって、こんな配役ねーと思ってるけど、さっさと終わらせなきゃこのパラレルストーリーから抜け出せないみたいだから」

義母の一護は、たくさんの意地悪を、義姉である仙太郎と清音と一緒にシンデレラに与えました。

「なんで俺がシンデレラの義姉なんだ!隊長のほうが、絶対シンデレラに似合ってるのに!」

義姉の仙太郎は、自分の隊長がラブすぎて、シンデレラに冷たくあたります。

「あんたのバカじゃないの!京楽隊長がシンデレラってことは、王子様が隊長なのよ!」

清音は、姉である仙太郎と言い争いをはじめました。

「なんだとこのブス!」

「何よ、このいも男!」

「鼻くそ太郎が!」

「何よ、鼻くそ次郎のくせに!」

「この水虫脳みそ!」

「巨大鼻くそ!」

「ウルトラ鼻くそ!」

「何よインキンタムシ!」

「言ったなぁ!?」

以下云々。




「ほーっほっほっほ、シンデレラ、今宵は舞踏会だけとあなたが着ていくドレスはありませんからね」

清音は、義姉役にはまりかけていた。

「そうだぜシンデレラ。つくろっておいた俺たちのドレスを、出しておけ」

仙太郎も、のりのりでした。

「おい、京楽さん・・・・・じゃなかった、シンデレラ。舞踏会にはつれていかないからな」

義母の一護と、義姉の仙太郎と清音は、豪華なドレスを着て宝石で飾り立てていました。

一方のシンデレラは、つぎはぎだらけのぼろい服を着ていました。

「酷い!僕を浮竹と会わせないつもりなんだね!」

なんだかんだで、王子が浮竹だと思い込んでいるシンデレラは、舞踏会にいきたがっていました。

やがて、一護と仙太郎と清音は、豪華な馬車で舞踏会に出かけて行きました。

一人残されたシンデレラは、悲嘆にあけくれます。

そこへ魔法使いが現れました。

「京楽!じゃなかった、シンデレラ!ドレスと馬車をだしてあげるから、お前も舞踏会にいけ」

「あれぇ、浮竹!?王子役じゃなかったのかい!?」

魔法使いの浮竹は、王子役ではありませんでした。王子役が浮竹でないと知って、シンデレラはやる気を失いました。

「もうどうでもいいよ・・・・」

「いいから、舞踏会に行け!話がすすまんだろう!」

魔法使いの浮竹は、シンデレラのつぎはぎだらけの服を豪華なドレスに変えて、ガラスの靴をはかせ、豪勢な馬車をだしました。

「男なのに、何故にドレス・・・・・」

「それは、シンデレラだからだ」

もじゃもじゃのおっさんは、ドレスを着てももじゃもじゃでした。似合っていないことこの上ないのですが、ストーリー上無視して進めます。

「仕方ない。舞踏会にいってくるよ」

「ああ、ただし魔法は0時に解けるからな。それまでに帰って来いよ」

「はいはい」

シンデレラの乗った馬車は、舞踏会につきました。

たくさんの美女が、着飾って踊っています。

ざわり。

シンデレラは、異様すぎて皆遠巻きに見ていました。

「そこの京楽隊長・・・・・・じゃないそこのヘンタイ隊長・・・・でもない、そこの娘」

「僕かい?」

「私と、踊りませんか」

王子役は、ルキアでした。

王子であるルキアは、シンデレラの手をとって一緒に踊り出します。

「くやしい!あんなもじゃもじゃに王子を奪われるなんて!」

「せめて、ひげくらいそればいいのに・・・・」

屈強ながたいをしたシンデレラは、ぱっつんぱっつんのドレスが似合って・・・・いるわけがありませんでした。

王子と楽しいひと時を過ごすシンデレラ。

やがて、0時を告げる鐘が鳴り響き、シンデレラは急いで舞踏会から逃げ出します。ガラスの靴が走りにくくて、ぬいで階段の上において走り去ってしまいました。

「シンデレラ!」

王子は、ガラスの靴を手に、茫然としました。



やがて、お城の王子様がガラスの靴にぴったりの足をもつ娘を、花嫁に迎えるという、噂がたちました。

実際、城下町にきて王子様はガラスの靴を娘たちにはかせては、これも違うと溜息を零していました。

「この家にいる娘は二人だけか?」

王子様の側近である恋次が、シンデレラの家にやってきて、仙太郎と清音にガラスの靴をはかせます。どちらもぶかぶかで、ガラスの靴には合いませんでした。

「いや、もう一人いるが・・・・」

一護が、シンデレラを呼びました。

「っていうか一護、てめぇ継母とかすげぇ笑える」

「俺だって好きでやってるわけじゃねーよ。王子がルキアとかどういう配役なんだ。にしても恋次、てめぇだけ側近とかなにまともな役やってんだよ!」

「知るか」

恋次は、やってきたシンデレラにガラスの靴をはかせました。

「なんと、ぴったりではないか。娘、そなたがあの時のシンデレラなのだな?」

ルキアは、台本を棒読みしていました。

「ああシンデレラ。愛しい娘よ。私と結婚しようではないか」

「いや、僕には浮竹がいるから」

ぼふんと、現れた魔法使いの浮竹の手をとって、シンデレラは走り出します。

「おいシンデレラ!話がめちゃめちゃになるだろう!ちゃんと王子と結婚しろ!」

一護が、走り去っていくシンデレラに叫びますが、シンデレラは瞬歩で、魔法使いの浮竹を抱きかかえると、去っていきました。


その後、王子は継母である一護に一目ぼれし、二人は結婚しました。それに側近の恋次がくやしそうな顔をしていました。

シンデレラと母である一護を失った仙太郎と清音は、魔法使いの浮竹の元で、弟子になりました。

シンデレラは、隣国で浮竹と結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ。



「シンデレラ」

「なんだい、浮竹」

「本当に、これでよかったのか?」

「どうしてだい」

「いや、シンデレラは王子と結ばれ、王宮で華やかな暮らしをするはずだし・・・・・」

「僕にとっての王子は、浮竹、君だよ」

触れるだけの口づけをされて、浮竹は真っ赤になりました。

「さすがにもう、ドレス脱いでもいいよね?」

あまりに似合っていない女装に、浮竹も苦笑しました。

「シンデレラやめるよ、僕は」

「じゃあ俺も、魔法使いやめるか」

弟子の仙太郎と清音は、浮竹の元で穏やかに過ごしました。

京楽と浮竹は、仲睦ましく、それはそれは幸せにすごしましたとさ。