一護は、女性死神協会の面子と一緒に、その年も海にやってきた。

男性死神は日番谷、白哉、京楽、浮竹、恋次、檜佐木、吉良。浮竹には清音と仙太郎も念のためにとついてきていた。現世からは一護。

ギラギラと照り付ける太陽が、まぶしい。

各自、水着姿になって海で泳いだり、肌を日で焼いたり、砂細工をつくったり、行動はばらばらだった。

白哉は、去年の時のようにわかめ大使をつくっていた。となりで、ルキアもわかめ大使をつくっていた。

本当に、この義兄妹は、仲がいい。ついでに、美的センスが似ている。
白哉は甘いところを微塵も見せぬようにしているつもりなのだろうが、義妹に夢中なのがばればれであった。

「ルキアまで、わかめ大使つくってんのかよ・・・・・・」

一護は、日番谷が出してくれた氷をかき氷にして、それを食べていた

日番谷は暑いのが苦手で、パラソルの下で周りを氷壁に囲ませて、一人涼んでいた。

「たわけ!このわかめ大使のよさが、貴様には分からぬのか!」

「よいルキア。しょせん、凡人には我らの美的感覚はわからぬのだ」

「わかんねーよそんなの。ま、好きにすればいいんじゃねーの」

白哉までくるとは思わなかったが、ルキアが喜んでいるので、呼んで正解だったのだろう。

今回の企画をたてたのは、一護だった。

「西瓜割の時間ですよー」

卯ノ花が、今年もお化け西瓜を用意していた。念のためみんな斬魄刀をもってきていたので、西瓜のお化けはあっけなく撃退されて、ただの西瓜になった。

みんな、西瓜を食べる。よく冷えていて、甘かった。

「ルキア、ほっぺたに西瓜の種ついてるぞ」

一護がルキアの頬に手をのばし、種をとってやると、白哉の霊圧が変わった。

「兄は・・・・・」

「誤解だ誤解!種とっただけだろ!」

一護は、ルキアの手をとって逃げ出す。

「貴様、何故私まで逃げねばならんのだ!」

「お前がいれば、白哉は攻撃してこねぇ!」

「たわけ、そんな理由で!」



「仲いいねぇ、一護君にルキアちゃん。朽木隊長も、はしゃいじゃって」

ビーチパラソルの下で、京楽はかき氷を食べながら、隣で同じようにかき氷を食べている浮竹をみた。

海パンにパーカーを羽織った格好をしているが、その肌の白さには驚かされる。

暑い日差しの下で数分いるだけで、倒れてしまった。

清音と仙太郎が、自家発電期をもってきて、それで風を送ったりして、なんとか意識を取り戻したのだ。

去年みたいに、砂細工で遊んでいたのなら、清音と仙太郎の手によって、花に埋もれ線香をあげられて、まるで死者を弔うような砂細工を作っていただろう。

「現世の夏はきついなぁ」

去年も倒れた。

浮竹は色素がないせいか、直射日光に弱かった。


「すまない京楽、日番谷隊長のところにいってかき氷のお代わりをもらってきてくれないか」

「はいはい」

京楽も海パンにパーカー姿だったが、浮竹との肌の色の濃さの違いに、まるで人種そのものが違うのかと思うほどだった。

「日番谷隊長、かき氷二人分追加お願いできるかな」

「蒼天に座せ、氷輪丸!」

斬魄刀をそんな使い方してもいいんだろうかと誰もが思ったが、山本総隊長なら怒るだろうが、総隊長はきていない。

出された氷をくだいてもっていく。かき氷には、松本がしてくれた。

その、あまりにも大胆な水着姿に、男性死神のみならず、一護もくらりときたくらいだ。

「かき氷、二人前〜」

「ありがとう、乱菊ちゃん」

「どういたしまして」

悩殺の姿に平気なのは、日番谷に白哉くらいだろうか。浮竹と京楽でさえ、目のやり場に困る始末だった。

「うふふふ、今年の夏はみんなあたしにめろめろね」

檜佐木と吉良は、松本のセクシーさにやられて、鼻血を出して倒れていた。それを、やちるが砂に埋めていく。


「うっきー、大丈夫?」

やちるが、浮竹の元にやってきた。

来て早々倒れた浮竹を心配してきてくれたのだ。

「ああ、草鹿副隊長」

「ここ、涼しいね?扇風機っていうんだっけそれ」

自家発電機があるので、電力のいる扇風機だってまわせる。

「かき氷、食べるかい?」

「うん!」

浮竹は、自分が食べていたかき氷を一口スプーンにとると、それをやちるにあげた。

「甘くて冷たくておいしいー!」

「もっと食べたいなら、日番谷隊長か松本副隊長に言えばいい」

「うん、うっきー、また後でね!」

去っていく小さな姿に手をふっていると、じーっと、見つめてくる視線があった。

「な、なんだ京楽!?」

「あーんって、いいなぁ。僕にもしてくれない?」

「子供かお前は!」

「いいじゃない」

「誰が見ているのかわからんのだぞ」

「僕たち、人前でキスとかよくしてるよね?それに比べたら、全然恥ずかしくないことじゃない?」

「それもそうか・・・・・・」

浮竹は、かき氷をスプーンですくうと、京楽の口元にもってきた。

「ほら・・・・・」

京楽はそれを口にする。

「うん、美味しいね」

手が伸ばされる。頭をなでられ、キスされた。

「メロンの味がする」

「ばかっ、人が見てたらどうする」

幸いなことに、みんなそれぞれの遊びや涼み方に夢中で、二人の仲をみているものはいなかった。

まぁ、見られたとしても二人はその関係を隠していないので、平気なのだが。

「それにしても暑いね。浮竹、君って泳げる?」

「多分、泳げない」

「浮輪用意してあげるから、海にはいろう。日陰で涼んでるのもいいけど、せっかく海に来たんだし、泳がなくちゃ」

京楽が、浮竹の手をとって海の方に向かう。あひる模様の浮輪を手に、二人で海に入る。

「・・・・・・海に入るのははじめだが、気持ちいいな」

「そうでしょ?」

波の間を漂う。

「うっきーもじゃもじゃと楽しそう!」

やちるが、泳いでやってきた。

「もじゃもじゃって・・・・・・俺のことかい、やちるちゃん」

「そうだよーもじゃもじゃ」

「もうちょっとましな名前にならないかい?」

「じゃあもじゃりん」

浮竹は、それを聞いて笑っていた。

「浮竹、笑わないでよ」

海の水をかけると、浮竹も水をかけた。

「楽しそう!あたしも混ざる―」

3人で、水のかけあいっこをした。

「そろそろ、あがろうか」

「そうだね」

砂浜を二人で歩いた。風邪をひいてはいけないということで、髪はすぐにかわかされ、普通の死覇装に着替えていた。

もう、大部日が落ちた。暑さもましになってきた。

「いつかまた、海にこれたらいいね。今度は、二人きりで」

「ああ・・・・貝殻を、拾って帰ろう」

「ああ、お土産か」

海に連れてこれなかった隊士たちに、せめてものお土産だと貝を拾った。

尸魂界には海がない。

海にこれる死神なんて、限られている。

夕日で、浮竹は紅色に染まっていた。髪が、沈みかけの太陽に照らされて、朱にそまる。

「ああ、この色は綺麗だね」

「何がだ?」

「紅色に染まってる君が、綺麗だから。真っ赤な色は嫌いだけど、優しい紅色はいいね」

鮮血の真紅は嫌いだと、京楽は思う。

「お前も、紅色に染まっていてかっこいいと思うぞ」

背後から抱き着かれた。

「京楽?」

「本当に、またいつか海にこよう」

「ああ・・・・・」


夜になる前に、みんな尸魂界に帰っていった。一護は、バスで帰宅した。



「どうしたのですが、草鹿会長」

七緒が問うと、やちるは首をひねった。

「うーん。何か忘れてる気がするんだけどお」




「おーい、誰かいないのかー」

「誰か―」

海辺に・・・・というか、砂浜に首から下を埋められて、叫んでいる死神が二人いた。

檜佐木に吉良だった。

松本の神々の谷間にノックダウンされて、やちるに埋められたのだ。

結局、二人は翌日にやちるが思い出すまで、そのまま放置されていたそうな。